カテゴリ:美術館・画廊メモ
1年に千以上の画廊個展に足を踏み入れているはずだが、きのう回ったふたつの個展は 「来訪者のために」 という視点が欠けていて、がっかりさせられた。
単に 「作品が下手」 というのであれば、それは仕方がない。それ以前の次元の問題なのである。 たしかに無料の催しではあるが、来訪者はそれなりの時間と労力をかけて足を運ぶのだから、「どうか、見てください」 という真摯な基本姿勢がほしい。 ◆ 小松浩子展 「平行定規」 @ Gallery Q (銀座一丁目) 写真展。画廊を開けて、絶望感に襲われた。 奥行のある細長い部屋であるが、足の踏み場がない。画廊入口で絶句して立ち尽くした。 展示物が多すぎて中に入れず、作品とゆっくり対面できる環境ではなかった。 壁を覆い尽くす写真群。そして長々とした帯状に現像した巨大写真プリントが部屋の空間にとぐろを巻いている。 とぐろを巻く写真プリントと壁の間には40センチほどのスペースしかない。 来訪者に、そこを歩けというのだろうか。 巨大プリントを踏みつけそうなので、とても踏み込めなかった。 踏み込んだとしても、壁の写真を見るための距離がまったく取れないから、とても 「鑑賞」できる環境ではない。 大量の写真プリントには相当のカネがかかっている。本人もさぞや頑張ったのだろうけど、来訪者に 「見てもらう」 という視点が欠けた自己満足イベントだ。 ◆ 上里 洋(ひろし)個展 ―頑張らない奴は死刑― @ Gallery-58 (銀座四丁目) 4階にある画廊。エレベーターがないので、ひいひい階段を上がる。 扉を開けて、絶句した。 30号くらいの絵が2点だけ。4面ある壁のうち、2面は完全に空白だ。 このサイズなら12点はかけられる部屋なのに。 部屋の中央に、死刑台を想定したとおぼしき木組みのインスタレーションがあるが、さしておもしろみもない。 来訪者に4階まで歩かせて この貧弱な内容では、ひとをバカにしていないか。 作品が間に合わなかったのだろうか。 それならいっそ、個展を中止にして、1階入り口にその旨のおことわりを貼りだしてほしい。 無料イベントだから何をしてもいい、というものではない。 個展の副題が、じつに皮肉だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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