カテゴリ:美術館・画廊メモ
東京・上野にフェルメールの絵が3点来ている。すさまじい集客力で展覧会は大混雑らしい。ぞっ…。
2つの展覧会、わたしは7月の金曜日の夜に至福のときを楽しんできた。 大人気の展覧会を見るには、コツがある。そっとお教えします。 ■ 泉幸男がすすめる、プロの鑑賞法 ■ 展覧会を見つづけて、わたしなりにたどり着いた結論。 (1) 午前中がいいわけではない。 おすすめは、開館時間が延長される金曜夜の6時半から8時あたり。 (2) 至福のときを楽しみたければ、閉館前の30分間に人がまばらな展示前半を見ること。 (3) ぎゃくに、朝、開館前に列に並んで入ったなら、展覧会の前半はすっ飛ばして、人がまばらな展示後半を見るとよい。 2つの展覧会は9月17日まで。 金曜夜が穴場。残るは、9月7日、9月14日の夜ですね。 午後6時半までに入場し、心を鬼にして前半をすっ飛ばし、まず後半から見る。 午後7時15分あたりから会場内を逆走して前半を見るのが、ベストです。 「真珠の耳飾りの少女」 を展示する東京都美術館のマウリッツハイス美術館展は、9月11~17日には連日、夜8時まで開館することを英断してくれました。 夜の開館は、知らないひとが多いので、穴場であります。 ■ おおかたの想像に反して ■ 素人さんは、こう考える。 (イ) みんなが来てない朝のうちに入ってゆっくり見よう。 だって、たくさんお客さんが来るのは、午後でしょ。 (ロ) 展覧会の会期の後半は比較的空いているはず。 だって、ファンなら会期前半にワッと行くはずでしょ。 はずれです。正解は、こうです。 (い) 朝のうちは、混んでいる。 えっ!? と思われたかたは、ある美術愛好家が書かれた記録をお読みください: 「マウリッツハイス美術館展 混雑状況」 (これは7月15日の時点の記述。いまはこんな甘っちょろい状態ではないです。) 大人気の展覧会では朝早くから長蛇の列。開館と同時に会場係がかなり早いペースで入場させるので、意外にも朝一番から会場は混雑。 しかも入場後の30分はみんな元気なものだから、どーでもいい作品でも熱心に見ちゃうんですね。団子状態の群衆にくっついていると、朝早く来た意味がまったくありません。 朝早く展覧会場に入れたなら、その特権を生かして、まずは人のまばらな展示後半を見ましょうよ。 だって、展示前半はのっけから、普通なみに混雑してるんだから。 (ろ) 会期最後の数週間は、混む。 大人気の展覧会の最後の数週間は、「あ、忘れてた! 見なきゃ!」 という人が押し寄せて、どんどん混雑度を増します。 会場係さん、おつかれさまです! ■ オランダの繁栄を反映する作品群 ■ 各展覧会の見どころやコツを簡単にご紹介します。 「マウリッツハイス美術館展」 http://www.asahi.com/mauritshuis2012/ @東京都美術館 3フロアで展示。地下1階から入り、1階、2階へとエスカレーターで上がります。 会場内にエレベーターがあり、2階から1階や地下1階へ簡単に戻れます。 フェルメールはさておき、レンブラントのいい作品が来ています。 地下1階にはレンブラントの 「スザンナ」、「シメオンの賛歌」、そして1階にはレンブラント晩年の自画像。 風景画、歴史画、肖像画、静物画、風俗画と、ジャンルをわけて展示してあるのも好感。 たとえば風景画を見るときと肖像画を見るときは、脳内の違う場所が反応している。こういう具合にジャンルを分けて展示してくれると、脳のスイッチを切り替えながらこころよく鑑賞できます。(あぁ、混雑してなきゃね!) フェルメールの 「真珠の耳飾りの少女」 は、展示会場の中間地点である1階に、特別スペースが設けられています。 ・ 2メートルほど離れたところから、ひとり5秒間ほどご尊顔を拝する長蛇の列のコース。 ・ やや離れた高みから眺める人垣コース。 ここでゆっくり見たければ、朝早く入場口に並び、地下1階から入場するや1階まで駆け上がるしかないでしょうなぁ。 サイズの小さな絵でして、人ごみのなかでこの絵からオーラを感じ取るのは、至難の業と申せましょう。 フェルメール作品が、じつはもうひとつ、地下1階に展示してあります。 「ディアナとニンフたち」。 通りいっぺんの歴史画のように見えますが、色彩感覚にセザンヌを感じましたな、わたしは。 ■ ヨーロッパ美術の400年 ■ 「ベルリン国立美術館展」 http://www.berlin2012.jp/ @国立西洋美術館 2フロアで展示。地下1階から入り、15~17世紀の名品の数々を見ます。 後半のイタリア・ルネサンスの素描展が地下2階。 そこからまた地下1階に上がって、18世紀の作品をさらりと。 18世紀作品のコーナーに白いカーテンがあり、そこを遠慮がちにさっとくぐると、15~17世紀の世界に簡単にワープできます。 つまり、地下2階を経由しなくても、展示前半に戻れちゃうというわけです。(あまり多用しないでください。会場係のひとがキレちゃうかも。) この展覧会のレベルの高さには圧倒されました。 とくに、前半の15~16世紀の作品が新鮮でした。この時代の作品は、価値が高くても集客力が弱くて、なかなか日本に来ないのです。必見! ぼくの一押しは、フェルメールよりも、ルーカス・クラーナハ (父) の 「ルクレティア」 です。 1533年作品。聖女の裸身をいきいきと、神々しく描いた、たましいを奪う名品です。 フェルメールの 「真珠の首飾りの少女」 は、地下1階展示のあとのほうに、レンブラント作品などと同じ扱いで掛けてあり、終始殺伐とした人だかりがしていて、落ち着いて鑑賞することはほぼ不可能と申せましょう。 ■ ひとりひとりに出会いがあれば ■ フェルメールにこだわらず、ご自分のお気に入りの作品を見つけていただけることを、祈っております。 会場では、500円で音声ガイドを利用なさることをお勧めします。 東京都美術館の音声ガイドは武井 笑さんが声を担当していて、彼女の声を聴いているだけで、心がなごみます。 国立西洋美術館の音声ガイドは、小雪さん。名女優とのひとときも、いいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[美術館・画廊メモ] カテゴリの最新記事
|
|