カテゴリ:美術館・画廊メモ
ぼくがアート作品を見るときの指標。ふりかえってみると、単純にこの3つに集約される:
・美しさ ・面白さ ・念の入りっぷり 「うつくしい!」 「おもしろい!」 「よくぞ、ここまで!」 の3つだなぁ。 なんでも 「やだ、なにこれ、かわい~ぃ!」 と、あまりかわらないね。 カトリーヌ・パンコール 著 『カメのスローワルツ (上) 』 (早川書房、平成23年刊) 『ワニの黄色い目』 に引き続き、カトリーヌ・パンコールさんの三部作を読んでいる。 この第2作の上巻に、典型的に嫌味なアート関係のコンサルタントが登場し、あっさり解雇される。 ははは、これって実在の人物がいるな。 ≪能書きばかりで、おかしな理屈をこねる人間とも付き合いたくない。 美術品を購入する際のコンサルタントにしていたエリザベスという女もそれでクビにした。 というのも、ある日、エリザベスとふたりである画廊に行った折のことだ。 そこのオーナーが将来有望な若い画家の作品を披露していたとき、一本の釘に気がついた。 その釘は白い壁に打たれて、絵が掛かるのを待っていた。その釘が滑稽に見えて、思わずエリザベスに話した。 すると、エリザベスはこちらをとがめるように見て、こう言ったのだ。 「フィリップ、そうじゃありません。あの釘はそれ自体が美術作品の始まりなんですよ。あの釘はこれからあそこに掛かる作品の美しさの一部なんです。あの釘は……」 「あの釘は単なるつまらない釘で、絵の重量を支えるだけのものだ」 だが、その言葉に、エリザベスは理屈をこねてきた。 「まあ、違うわ、フィリップ! あの釘はそこに存在して、わたしたちに訴えかけているのです。これからそこに掛かる作品の美しさを……」 まったくなんという理屈だ! こんなコンサルタントと議論して、時間を無駄にすることはない。そう思ったので、即座にこう言った。 「すまないが、エリザベス、今をもって君には辞めてもらう。私が愛して、鑑賞したいのは、ダミアン・ハーストの作品やデイヴィッド・ハモンズの作品、レイモンド・ペティボンの作品、それから、マイク・ケリーの ≪ダンサー≫ やサラ・ルーカスの ≪セルフ・ポートレート≫ であって、釘じゃないんだ!」≫ (344~345頁) フィリップのこの決断の速さと、しっかりした座標軸。すごく、共感、共鳴する。 エリザベスのような、自分の眼力がないことを屁理屈でごまかし、屁理屈で自分を美化するアート関係者って、いるんだよな。ぼくは嫌いだ。 きっと小説の著者もじっさいにこういう人種にいらだったことがあって、ストーリーのなかで断罪しちゃったんだね。 ダミアン・ハーストの作品はいくつもの場所で見て、ぱっとイメージできるが、デイヴィッド・ハモンズとかレイモンド・ペティボンとか、どんな作品かいたのかな? と思って画像検索したら、東京都現代美術館などで見た覚えのある作家だった。 マイク・ケリーの ≪ダンサー≫ やサラ・ルーカスの ≪セルフ・ポートレート≫ は、残念ながらうまく画像検索できなかった。 画像が見られるサイトがあったら、どなたか教えてくださいませ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Apr 21, 2013 01:59:19 PM
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