テーマ:政治について(20110)
カテゴリ:ぼくの疑問符
メールマガジンで10月8と9日に配信したコラムです。無料メールマガジンの登録は http://archive.mag2.com/0000063858/index.html でどうぞ!
消費税を上げると不景気になるという単純論がある。 「では景気回復のために消費税率を下げる国がないのはなぜか?」 と、かねてから疑問を呈しているのだが、これに答えられる反消費税論者にいまだにお目にかからない。 消費税1%分は、ざっくり 2.5兆円。 消費税を上げても、カネが消えるわけではない。政府がポンプの役目を果たして、日本国内でカネの回り方が変わるだけである。 いっぽう、原子力発電所を稼働させず、火力発電用に余分に天然ガスや石油を買うために、国外へ流出するカネ。 平成22年と25年を比べると、5兆円の増 (為替レート差も含む)。 http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/6752.pdf 消費税2%分、5兆円の国富が新たに国外流出している。 (5兆円のうち若干は、われわれ総合商社が日本国内へ取り戻して株主に還元している。 もし総合商社が国外で資源開発をせず、日本がまるまる外国企業から天然ガスや石油を買っていたら、さらに悲惨なことになったろう。) 消費税2%分の国富流出の割に、日本経済はびくともせぬように見えるから、反原発も健在だ。 ■わたしの疑問■ 「消費税2%分の国富流出」 が日本経済に与えるマイナス効果は、消費税を何%引き上げたマイナス効果に相当するのだろう。 たとえば消費税を5%から10%に上げたとき、引き上げられた消費税5%分のカネは消滅するわけではなく、政府がポンプ役になって日本国内を新たな形で巡るわけである。 福島原発用地内の地下水対策に膨大な費用をかけるとしても、そのカネだって消滅するわけではなく、東京電力がポンプ役になって日本国内を新たな形で巡るだけだ。 それと 「国富流出」 は根本的に異なる。国富流出こそは日本経済へのボディブローになる。 「消費税2%分の国富流出」 が日本経済に与えるマイナス効果は、消費税を何%引き上げたマイナス効果に相当するのか、わたしの疑問に誰か答えてくれないだろうか。 * * * 「景気回復のために消費税率を下げる国がないのはなぜか?」 と、かねての疑問を昨日の配信で書いたら、さっそく賢明な読者からメールが入った。 経済へのカンフル剤効果を狙って、消費税率を暫定的に引き下げた例がいくつかある。 それを示す3つのサイトをご教示いただいた。 ◆ 英国 VAT減税に消費拡大効果 http://nna.jp/free_eu/news/20090414gbp002A.html 平成20年12月から13ヶ月の期間限定で付加価値税を17.5%から15%に引き下げたという話。下げても、15%だ。 日本並みに5%に引き下げたら景気はもっとよくなる? 上の和文サイトのモトネタと思われる BBC のサイトも発見した: http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/7995850.stm その英国の後日談が JETRO のサイトにあった。以下のページの下のほう、「注2」 をご覧いただきたい: http://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/qa/02/04A-000910 ≪英国では、景気後退に伴い、2008年12月1日から VAT標準税率を 17.5% から 15.0% に 引き下げましたが、2010年1月1日に 17.5%、2011年1月4日には 20%に変更されました。≫ 日本並みに5%に引き下げたら景気はもっとよくなる? ◆ タイ VAT税率7%に据置き http://ameblo.jp/bangken/entry-11348091683.html タイでは平成4年に10%の付加価値税を導入したが、平成11年に暫定的に7%へと引き下げられた。理由は、経済危機への対応のため。 上の報道は、平成24年10月1日から平成26年9月30日までの2年間、付加価値税の税率が引き続き7%に据え置かれるというもの。 理由は、大洪水後の購買力アップと民間投資の促進。 一時的な引き下げのはずが、15年間も7%で据え置きだ。 日本並みに5%に引き下げたら景気はもっとよくなる? ◆ EU 財務相会合: 付加価値税引き下げを容認 http://www.bloomberg.co.jp/article/2009-03-11/aJwBsjhjhMNs.html 平成21年3月の記事である。 ≪欧州連合 (EU) 財務相会合は2009年3月10日、各国政府が付加価値税 (VAT) の税率を引き下げることを容認することで合意した。ただし、適用分野は外食産業や住宅改築などの労働集約型産業に限定される。≫ 景気回復というより、雇用促進のためのピンポイント的カンフル剤効果を狙ったもののようだ。 その EU だが、さきの JETRO のサイトの 「注1」 によれば ≪欧州理事会は2015年12月31日までは加盟国の標準税率が最低15%以上であることを決定しています。≫ 日本並みに5%に引き下げたら景気はもっとよくなる? === ▲ 後記 ▼ 5%だ、8%だ、10%だ……というのが、ほとんどオークション感覚でしか語られないのが、わたしには不満なのです。 もっと、人間の本性を見据えた上で、間接税と直接税の比率はどうあるのが望ましいのかといったオーソドックスな議論がもっとあってよいと思います。 税金の名のもとでの負担以外に、年金や医療のための社会保険料も負担しているわけですが、それらを合計した負担額の国際比較も見てみたいと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Oct 8, 2013 11:51:21 PM
コメント(0) | コメントを書く
[ぼくの疑問符] カテゴリの最新記事
|
|