テーマ:政治について(20112)
カテゴリ:ぼくの疑問符
Yahoo Japan のサイトを見ていたら、テレビ朝日のニュースとして、米国国務省があらためて靖國参拝を批判したと称する報道があった。
以下のものである。 今ならまだ映像も見ることができるので、まずはそれをご覧いただき、得た印象を記憶にとどめていただきたい。その上で、泉の論評をお読みください。 「“失望”は明確」 米国務省が改めて靖国参拝を批判 http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20131231-00000022-ann-int [テレビ朝日系(ANN) 2013年12月31日 (火) 15時22分配信] テレビ朝日の映像から文字起こししたものを掲げておく: ≪安倍総理大臣の靖国神社参拝について、アメリカ国務省は会見で、緊張を悪化させる行為だと改めて批判しました。 米国務省・ハーフ副報道官: 「日本の指導者が近隣国との緊張を悪化させる行動を取ったことに失望した。 選んだ言葉から、私たちのメッセージは明確だ」 このように、ハーフ副報道官は改めて参拝を批判しました。 ただ、日米関係は今後も変わらないと強調し、日本とこの問題について協議を続けていくとしています。≫ ■ 証拠はすべてネット上にある ■ 果たして米国は、中・韓に踊らされて靖國参拝をイッシュー (外交上の課題) にする気なのか。おかしいなとは思いつつ、心のなかでごくりと唾をのみ込んでしまった。 当然ながらテレビ朝日など信用できないから、米国国務省のサイトでハーフ副報道官の発言を文字起こししたものを読んでみた。 やはり、テレビ朝日の悪質なデッチ上げだった。 12月30日に Deputy Spokesperson である Marie Harf さんの行った Daily Press Briefing の文字起こしが、こちらで読める: http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/12/219160.htm#JAPAN ハーフ副報道官が靖國参拝について語ったのは、記者からの質問に答えたものだ。 「駐日米国大使館によるプレスリリースは見た。中国は批判している。国務省としてのコメントは?」 という質問に対するもの。 質問に対してハーフ副報道官は、米国大使館によるプレスリリースの文言をほぼ正確に繰り返した。 テレ朝は 「アメリカ国務省は会見で、緊張を悪化させる行為だと改めて批判しました」 というが、実態はちがう。 記者がコメントを求めるから、副報道官は発表済のプレスリリース内容を読み上げるごとくに語ったに過ぎない。 ■ disappointed, regret, concern の違いは? ■ その後に記者は重ねて料簡違いの突っ込みを入れてきている: QUESTION: Some media reports that U.S. officials from State Department discussed with officials from White House and finally chose the word “disappointed” rather than “regret” or “concern” to express a stronger or tougher tone. I mean, what kind of message does U.S. trying to send to the Japanese Government? ≪質問: いくつかの報道によれば、国務省の高官らは大統領府の高官らと議論した末に、regret や concern ではなく、より強いトーンの disappointed という語を選んだのだと聞く。 それによって米国は、日本政府に対していかなるメッセージを送ろうとしたのか。≫ これを読んで、 「ははぁ、disappointed は regret や concern より強い表現なのか!」 と あなたが考えるとしたら、申し訳ないがあなたは無教養を恥じたほうがよい。 端的な論証をしよう。 たとえば朝鮮国が諸外国の反対にもかかわらずミサイル実験をした場合に、米国や日本がどんなメッセージを発するか。 ■ disappointed とは 「他人事だが心外」 ■ 無法な行為に対する外交的コメントは、抗議の意味をこめた regret (遺憾) であり、今後これに関与していく意思を表明する concern (懸念) という語である。 ここで disappointed という語を使ったら、大ボケだ。 なぜなら、disappointed とは 「あくまで他人事ではあるが心外なり」 という表明にすぎないから。 問題に関与していくという意思を示さない語だから。 仮に米国政府内で regret, concern, disappointed の いずれにするかという議論があったとして、米国が disappointed という語を選んだのは 「靖國参拝にまつわる近隣国との緊張は、米国にとっては他人事ではあるが心外なり」 というメッセージだ。 直接的な抗議の意図を含まない表現とするために disappointed という語を使ったのである。 ■ 国務省から記者への突き返し ■ 食い下がる記者に対してハーフ副報道官は答える: MS. HARF: Well, I think our message is very clear from the words we chose. I don’t know those reports about interagency communications. Obviously, we talk to our colleagues at the White House all the time. I think we've made very clear that we were disappointed, that we think this will exacerbate tensions. I think those words are very clear in their meaning, and I wouldn’t probably wordsmith them any further to try and get deeper meaning out of them. ≪ハーフ副報道官: わたしたちのメッセージは、選んだ語句でもって極めて明確です。 国務省と大統領府の間の調整についての報道のことは知りません。 言うまでもなく国務省の人間は大統領府の同輩の人たちといつも話をしていますよ。 わたしたちが disappointed だったということは明確にしたと思いますし、緊張関係を悪化すると考えています。 それらの言葉は、言葉の意味として明確なものだと考えます。 ことばの職人よろしく、それらの言葉からさらに深い意味をくみ取ろうとすることもないでしょ。≫ テレ朝のニュース報道にある 「選んだ言葉から、私たちのメッセージは明確だ」 というのは、米国国務省が日本政府に宛てて disappointment の意思表示をダメ押ししたものではない。 プレスリリースの内容以上に踏み込んだ表現を国務省から引き出そうとする記者の突っ込みに対して 「プレスリリースで語ったことで以て満足せよ」 という、国務省から記者への突き返しなのである。 ■ 米国の 「遺憾と懸念」 をでっち上げようとする記者 ■ この記者はさらに食い下がっている。 QUESTION: So you have no differences between “disappointed,” “regret,” or “concern.” ≪質問: ということは、disappointed と regret と concern の間に、差はないということですね。≫ 読者の皆さん、この引っかけ質問の意味が分かりますか。 もし仮に国務省が “No difference”(差はない)と言ったら、その途端にこの記者は、 「米国国務省は靖國参拝に対する遺憾と懸念を表明した」 と世界中に向けて書き散らすわけである。 つまり、 「米国が平時に行うであろう最大限の抗議を日本に対して行った」 のだと。 ハーフ副報道官も、その辺の記者の意図はよく分かっている。巧みにかわした。 MS. HARF: I'm happy for you to get a dictionary and look up what the difference is. I think it’s pretty clear what I mean when I say “disappointed.” ≪ハーフ副報道官: 辞書をお貸しして、それらの言葉の意味の違いを引いていただきましょうかね。 わたしが disappointed という言葉を使うとき、何を指しているのかは極めて明確だと思います。≫ ■ 記者会見も戦(いく)さやな ■ この辺でこの反日記者君 (おそらく日本人かな) も勢いを 削がれてくる。 ええ加減にせぇや! とばかりに、おそらく別の記者だろう、漢領 東トルキスタン (いわゆる 「新疆ウイグル自治区」) の度重なる暴動についての質問が出され、靖國関連の質疑は終わっている。 文字起こしを読んでいると、記者会見もバトル (いくさ) だなと痛感した。少なくとも、米国国務省の記者会見は。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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