カテゴリ:美術館・画廊メモ
今週土曜までの4日間となってしまいましたが、託摩敦子展は一見の価値ありです。
広めの画廊で作品をじっくり見終わって、「いい銅版画だけど、刷りが薄いのがあるのが残念だな…」などと思いつつ過去ファイルをめくったら、なんと、「水性ペン」とある。さまざまな太さの水性黒ペンをつかって、手描きでエッチングの風合いを実現した一点ものだった。 紙に水性黒ペンだと、銅版画の盛りのあるインクに比べれば弱くなるので、「刷りが薄い」と思ったわけですが、最近作はこれを克服するためにジェッソを塗った面に水性ペンで描画。これをやると、銅版画なみの強い線が描けますが、ペン先に負担がかかるので描画はいっそう大変だったそうです。 作品です。 託摩敦子「猿の給仕係」 清純と乱雑が沈黙のうちに隣り合せている。なんというアイロニーでしょう。文明批評にもなっていますね。 3匹の蝶が気になりました。えてして蝶々などを必要以上に描いてしまう作家がいるものです。 「あ、この蝶々は、こちら側にいるんです。見る側の視点なんです。それが動いているんです」と作家の託摩さんが説明してくれました。なるほど、それなら納得がいきます。確かにサイズからみて、蝶々は確実に「こちら側」にいます。 託摩敦子「おうまさんごっこ」 おうまさんが、じつにリアル。耐えてる感じ! 託摩敦子「食欲奴隷の晩餐会」 162cm×65cmの大作。ジェッソ塗りの上に水性ペン描きなので、たいへんな労力がかかっています。 右側の船盛りです。人魚姫ちゃんが、これから食欲の的と化するわけです。 こちらは左側の船盛り。人魚姫が骨になっちゃってるの、わかりますか。拡大してみましょう。 銅版画の描画の伝統をしっかり吸収し自分のものにしたうえで、どきっとさせる絵をつくっています。 ファイルを拝見すると過去から作風は同じですが出来は着実に進歩していて、とくに ここ2年ほどの作品はじっくりと見入らせるしっかりしたコンセプトがあります。作家もうつくしいかたです。 詩文集を作りたいと言っておられました。応援したいです。 特製デザインのトランプを制作するときは共同出資してもいいなと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Nov 26, 2014 08:23:21 AM
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