カテゴリ:美術館・画廊メモ
松川朋奈さんは、とてもきれいなひとです。彼女がハイパーリアリズムで描く、女子の身の回り。ほころびくずおれる気配をたたえています。
まずは、いま開催中の松川朋奈「真夜中と檸檬と、秘密を少し」展から。 「男の視線なんかより、圧倒的に女の視線の方が痛いのよね。」 画廊奥にこの青い靴の絵が掛かっています。じつは大サイズの絵です。靴に見おろされているような錯覚を与えるほどに。 視点は、靴にかなり近いところにあります。この靴を履いていた女性の汗を感じてしまうほど。フェティッシュな気持ちに囚われそうになる。 松川朋奈さんの絵の題名は長めですが、同世代の女性たちへのインタビューから取ったフレーズです。 この絵の題名など、短いほうです。平成25年のシェル美術賞展で彼女が過去受賞者コーナーで展示した絵のなかには、A4判の紙1枚が埋まりそうな長ぁ~い題名の絵もありました。あれは、ギネスブック入りものの長いタイトルでは? 「秘密を少し持ったほうが、物事はうまくいく。」 かかとが すっかり傷ついてしまった赤い靴。続けて履いているときは意識しなくても、しばらくしまっていた箱から出すと、傷の深さにあらためて気づくのです。 この赤い靴の絵も、130.3 cm×192 cmの大作です。 「友達と自分と、どっちがより幸せなのか、考えずにはいられないの。」 何日も前につけたド赤いマニキュアが剥げ落ちるままの指先。うつくしい女性の後ろ姿は、拒否と媚びがない交(ま)ぜになったような。 とかく、滴(したた)り落ちる血や はみ出した内臓を描いてインパクトを与えようとする絵を描くひとが世の中には多いですが、ぼくに言わせれば ぐっとくるのは、こういう抑制のきいた「傷」を表現されたときなのでは? 剥げ落ちたマニキュアは、時間の経過をも象徴しています。そういう重層的なロジックがこめられた「傷」が、ぐっとくるわけです。 「本音なんてね、言えるわけないじゃない。」 ぼくとしては、ぜひこのシリーズの絵を描いてほしいです。うつくしいです。 左あばらに書いた Naka... の文字が、女性の皮膚の起伏に載りきれなくて、浮いてしまったのが惜しまれます。グラフィティは、後ろの壁に書くテもありましたね。…… さて、じつはぼくは今年1月にReijinsha Gallery経由で松川朋奈さんに自画像をお願いしました。 ぼくの部屋にかけてある絵をこの機会にご紹介します。(今回の個展で展示されているわけではありません。) ラフスケッチ この角度で描いてこられるとは、ほんとにびっくりでした。 妖艶美に魅せられて、コピーを壁に貼っています。 本 画 ラフスケッチを見たとき、ピアスの花は臙脂がかった赤色だと思っていましたが、本画のピアスの漆黒の落ち着きに ぞくっとしてしまったのでした。 * 12月27日までの個展は、あいにく日月祝が休廊なので、残るは24~27日の4日間のみ。 Yuka Tsuruno Gallery のある江東区東雲二丁目9-13 の TOLOT というアートスペース(2階)では、松川朋奈個展のほか、Jose Parla さんの大作(1.8m×15.9mです!) “Haru Ichiban/First Wind of Spring/Through the Tokyo Alleyways – Her Voice Sings...”や、Candida Hoeferさんの写真作品、さらに横田大輔写真展も開催されています。遠路行く価値あり。 りんかい線の東雲駅から徒歩4分のところ。りんかい線は不便ですが、有楽町線やJR線で新木場駅まで行き、そこで りんかい線に乗り換えて都心方向へ1駅戻ればいいのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Dec 21, 2014 02:09:18 PM
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