テーマ:英語のお勉強日記(7993)
カテゴリ:英語 la angla lingvo
「アルコールをやめる」「断酒する」という意味だが、give up alcohol と give alcohol up は、どちらも可能だ。
日向清人(ひなた・きよと)さんが『英語はもっと句動詞で話そう』(語研、平成25年刊)のなかでこんなことを書いている。 他動詞型(動詞+副詞)の句動詞は、たとえばtake inという句動詞を例にとれば ≪目的語が初出の場合は <take in + 目的語>、目的語が既出の場合は <take + 目的語 + in> も可。目的語が代名詞の場合は必ず <take + 代名詞 + in> の形で使う。≫ とある。 目的語が代名詞のときはまさにその通りなのだが、目的語がふつうの名詞である場合に「動詞+目的語+副詞」の形が ≪目的語が既出の場合≫ に限定されるというのは言い過ぎだ。ここまで断定するのはいかがなものか。 「そういう傾向がありますよ」と言う分には良いだろう。 しかし日向さんの場合ちょっと言い切りすぎちゃった。有能を自負する語学の先生が陥りやすいケース。 辞書の例文にも「動詞+目的語+副詞」の形は多数ある。ぽつんと1文だけ存在する辞書例文なのだから、目的語は文脈に支えられているわけでもなく「初出」である。それでも「動詞+目的語+副詞」の形をとることがままあるわけだ。 かりに「初出」か「既出」かが日向清人さんが説くほどに重要ポイントなら、文脈に支えられない辞書例文では「動詞+目的語+副詞」の形は極めて少ないはずだが。 * 実際の用例はどうだろう。Google で “give alcohol up” を検索すると以下のサイトが出てきた: Who has had to completely give up alcohol for weight loss? いくつか用例を拾ってみよう。 まずgive up alcohol. これはウェブページのタイトルにも使われているくらいだ。 ≪I gave up alcohol when I decided to lose weight. I have lost the weight, but still don't drink.≫ ハンドルネーム opalsqueak007 「減量を決意して、お酒をやめました。いまは減量できましたが、お酒は飲んでません」 give alcohol up の用例もある。 ≪I gave alcohol up for Lent. The only change I've noticed so far is that now I get pretty fierce cravings for coffee in the evening. But I drink at home, with dinner, so (a) there's no junk food around to overeat, and (b) I'm full.≫ ハンドルネーム Larissa_NY 「四旬節を機にお酒をやめました。これまで気がついた唯一の変化は、夜になるとコーヒーを飲みたくてたまらなくなることですね。でも飲むのは家で、夕食のときだから、ジャンクフードに手を出して食べすぎることはないし、満腹感はあります」 Larissa_NY さんの文章は、書き込みの全文。文章の冒頭で I gave alcohol up for Lent. とあるわけで、alcohol は「既出」の単語とは言えないだろう。定冠詞の the もついていないし。 まァ、そもそも Who has had to completely give up alcohol for weight loss? という問いに答える書き込み頁なので、質問文に alcohol があるのだから alcohol は「既出」の単語だ! ということかもしれないが、いずれにせよ日向清人さんのいう「既出」とはそのていどの意味だ。 わたしに言わせれば、日向清人さんが著書のなかで再三書いている「目的語が既出かどうか」というポイントは気にする必要がないと思う。 せっかくだから、目的語が代名詞の場合の用例もひいておこう。 ≪Definitely haven't given it up, but my overall consumption has decreased. Like many, the bigger problem for me isn't having beer or wine, but the additional poor choices that often accompany those drinks.≫ ハンドルネーム flinx1241 「止めちゃったわけじゃないけど、全体として飲む量は減ったよ。他のひともそうだろうけど、問題はビールやワインを飲むことじゃなくて、むしろおつまみに食べるもののチョイスがまずいんだ」 冒頭の文から主語の I が抜けている。いわゆる日記文の一人称主語省略である。 最後に述べておくと、日向清人著『英語はもっと句動詞で話そう』は、ここで論じた点を除けば まさにわが意を得たりの良書。「動詞+副詞」型の句動詞のアクセントが副詞部分に来ることをいちいち示してあるのもよい。 おすすめの本です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 20, 2015 07:26:11 AM
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