カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
「ジキル&ハイド」は、平1904日生劇場公演(鹿賀丈史さん最後の渾身のジキル)、平2403日生劇場公演(石丸幹二・笹本玲奈のジキル&エマ)を2度ずつ観てきた。英語版・ドイツ語版のCDを何度も聴いた、思い入れの多い作品です。
今回の平2803東京国際フォーラム公演、3月5日に初日を観ました。 石丸幹二さんが魂を素っ裸にして自分のジキル&ハイドを作り上げ、のびのびとした心境が歌のハリにもすなおに表れ、1曲目の「闇の中で」から背筋をぞくっとさせてくれました。石丸ジキルはより端正にそして悩み深くなり、ハイドは茶目っ気のある罪ないたずら小僧になった。 人間がむき出しになった石丸ジキルに呼応して、笹本玲奈さんのエマもひとりの慈しみ深い女性として立ち現れた。前回の笹本エマは「お嬢さま」を演じていて、やや硬かった。今回のエマは、なぜあのわがままなジキルを女性として全面的に受け入れることができるのか、納得のいく役作りでした。 濱田めぐみさんの娼婦ルーシーには、無邪気な少女ぶりを残した愛すべき女性の繊細さを感じました。初日公演でとても緊張していたのか、ミュージカルの女王にして最初の歌で歌詞をとばしてしまったけど。 石丸さんも濱田さんも4年前には、あまりにも偉大だった鹿賀ジキルと豪快なマルシアルーシーの舞台を「継承」することを意識せざるを得なかったでしょう。今回は完全に吹っ切れた。新鮮で完成度の高い初日でした。 助演の役者さんもそれぞれにみごと。 ジキルの盟友のアターソン弁護士役の石川禅さんは、快活で誠実な人間味あふれる友人を一歩踏み込んで演じた。 畠中洋さんのサイモン・ストライドは、やりすぎかと思うほど憎たらしくなった。 そしてエマの父であるダンヴァース・カルー卿は今井清隆さんが理想の父親像をごく自然に演じきった。 エマの父役は前回、中嶋しゅうさんを当てるというかなり冒険の配役で、それはそれで味があったけれど、やはり今井清隆さんがぴったりはまった。 初日公演なので、カーテンコールには演出の山田和也さんも登場し、役者さんたちをねぎらって 「初日として上々の出来。ダメ出ししなきゃいけないところもまだあったけど(劇場内に笑い)、でも、とてもいい出来だったよ」 そしてビックリしたのが、そのあとに登場した作曲のフランク・ワイルドホーンさん。とてもにこやかに 「世界各国でさまざまなヴァージョンの Jekyll & Hyde を観てきたが、その中でも今回の公演は出色の出来。皆さんはいまa happy composerを目にしている。これからこの公演がさらなる adventures を繰り広げることを祈ります」 ミュージカルの包容力とスリルに満たされた夕べとなりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 8, 2016 07:53:44 AM
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