カテゴリ:美術館・画廊メモ
このひとは、カラヴァッジョが好きにちがいない。個展初日の画廊にご本人がいらして、聞けば、そのとおりだった。
仙石裕美個展「いくつもの空をつなぐ人たちの話」 @ Niche Gallery(銀座三丁目3-12) 扉を開けて目に跳びこむこの作品に圧倒された。 仙石裕美 「空と海が溶け合うところ」 “Where the sky meets the ocean” 人類は、人間のからだをこの姿勢で、この角度から描いたことが、これまでなかったのではなかろうか。 思い切りのよさが、四肢の末端のかたちにくっきりあらわれて、この女性の左手のかたちなど、ほれぼれする美しさだ。手をこの角度から描くことも稀だろう。 手と足が赤みを帯びているのも、人間の「気」が満ちていることを連想させて、健康美なのですね。 空間全体は白い雲の存在によって大空になっているはずなのに、絵のそこここで白い波浪に変わる。雲から波へ、波から雲への遷移が巧みで、見る側をみごとに だましてくれる。 ぼくにとって「きれいに だましてくれる絵ですね」は最高の褒め言葉。 跳び込む女性がまとう白い雲の色のスキャンティに行きつくまで、作家は試行錯誤を重ねたのだそうだ。 最初は赤い水着だった由。紆余曲折を経て白いスキャンティ姿に行きつくわけですが、では現実に海で白いスキャンティ姿で跳び込むかというと、それはないわけです。 跳び込む彼女の姿がいきなり「ありえない姿」だからこそ、そしてそれでいて描かれた雲や白浪、女性の四肢がリアルに「写実」されているからこそ、「ありえなさの写実」は見る者の脳を一気にワープさせる。 仙石裕美 「空と海が溶け合うところ」 [右側中央部分] 仙石裕美 「空と海が溶け合うところ」 [左下部分] 泳ぐ男の水面下のからだの見え具合の描きっぷりも、おみごと。 ものをよく見ながら、それを写真的に写実するのではなく、油画の筆致に落とし込むにはどうするか、作家が研鑽を重ねているのがよくわかります。 「空と海が溶け合うところ」は美術館入りしてほしいですが、お金持ちになったら買いたい作品リストの上位に載せました。 仙石裕美 「胸に世界の果てをもつ者は、世界の果てまでいかねばならぬ」 “You should go to see the world's end, if you have it in your heart” 鎌近(かま・きん)所蔵の 松本竣介 「立てる像」 を即座に想起しました。 すっくとした思い切りのよさ。すがすがしさ。 松本竣介「立てる像」も仙石裕美「胸に世界の…」も、人物のスケール感が見る者を「だまして」くれる。 どちらも人物が巨人のように見えるけれども、では「巨人」として描いているかというとそうではない。 「巨人じゃないのに、なんで巨人に見えるんだろう」という自問が尾をひく。 仙石裕美 “Good shoes take you to a good place” 白い靴のなかに大空。立体作品です。すてきな遊び心。靴は廃品利用ではなく、紙粘土で制作したもの。 仙石裕美個展は平成28年4月2日まで Niche Gallery で開催。10時~6時半。日曜休廊。 * 仙石裕美さんは平成26年12月にも同じ Niche Gallery で個展を行っていて、そのときの作品+シェル美術賞展の作品を画像紹介したブログがあるので、併せてご覧ください: 仙石裕美個展 @ Niche Gallery(銀座三丁目)~12/27 フォルムとしての純粋肉体 http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/201412270000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 25, 2016 07:43:41 AM
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