カテゴリ:美術館・画廊メモ
後篇【作品紹介2】は こちら
枯淡な墨絵と、ぼってり厚塗りのアクリル画。 ほんらい対極にあるはずの、これら2つの技を和紙上で衝突させ異次元空間へと昇華させるスゴ技を見せてくれるのが、星山耕太郎展 “ALTER EGO” です。 Alter ego はラテン語で「もうひとつの自分」。つまり自分の第2の人格、ないしは まるで自分そのもののような親友。そうです、人物が乱舞する個展なのであります。 The Artcomplex Center of Tokyo(最寄駅: 信濃町、四谷三丁目) で8月22日(火)~9月3日(日)の開催です(8月28日は休み)。 ちなみに8月22日から27日までは同じ会場の別室で「第26回美樂舎マイ・コレクション展」もやっていますよ。 何はともあれ、この絵を見てください。アートに関心のあるかたなら 「…… え?! あの絵をこう料理しちゃったの!!」 と、しばし見入ってしまうはず。 星山耕太郎 「ベラスケスの「ラス・メニーナス」」 Velásquez’s “Las Meninas” (墨、アクリル、和紙) この有名な群像をここまで換骨奪胎しながら、それでもまぎれもなき「ラス・メニーナス」なのだから、これはもう様々な泰西名画の人物に化けてきた森村泰昌さんもハダシ。アート・バーゼルに持っていきたいね。 いっぽう、こちらは江戸時代。 星山耕太郎 「忠臣蔵」 Revenge of 47 Ako Samurais in 1703 (墨、アクリル、和紙) 今回の個展最大の大作。本懐をとげた赤穂浪士47士が泉岳寺にある主君の墓前に吉良上野介(きらこうずけのすけ)の首級をそなえ焼香している光景です。 本作を描くために星山さんは泉岳寺に通い、浪士たちの思いに合一(ごういつ)したところで一気に描き上げました。 右下の、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)と吉良上野介の首級をアップにしてみましょう。 やや時代が下(くだ)って、幕末の絵師の世界。 星山耕太郎 「門弟の習作をみる月岡芳年翁」 Yoshitoshi Tsukioka Retouching His Disciples’ Studies (墨、アクリル、和紙) かねて星山さんは幕末から明治期に活躍した浮世絵師の月岡芳年に傾倒してきました。芳年の描いた人物を模写して人物描画の特訓をしたほど。 その思い入れが結実した作品。芳年が門弟の絵に朱を入れているところ。 かなうことなら、芳年さま、わたしの絵にも朱を入れてください…… と、そんな星山さんの思いがこめられているように思えます。 画中で芳年が朱を入れている門弟の習作が上下逆になっていますが、これをひっくり返してクローズアップしてみましょう。 そしてこちらは思い切り、動きをつけた一作。 星山耕太郎 「キートンのバナナ滑り」 Buster Keaton Slipping on Banana Skin (墨、アクリル、和紙) 何ともお茶目。くるりと宙を舞う俳優さん。右上のバナナの勢い。背景の墨絵がまた、いかにもサイレント映画なのですね。カタカタという映写機の音まで聞こえてきそうですが、そこから前面に跳び出している人物にリアリティあり。 星山耕太郎 「ジャコメッティの眼差し」 Giacometti’s Glance (墨、アクリル、和紙) おりしも9月4日まで国立新美術館で回顧展開催中の Alberto Giacometti. ジャコメッティそのひとの人物画とジャコメッティ作品の幻影が、星山調で楽しめる。 星山耕太郎 “True Colors” (墨、アクリル、和紙) 個展作品のなかで「忠臣蔵」に次いで大サイズの問題作。 自画像のように思えます。色分解と色合成というアーティストの作業がはらむ、ひりひりとした危うさを表現したのではないか。これは、ぼくの解釈です。 「忠臣蔵」と “True Colors” のサイズ感をこちらでご覧ください: 今回のACTでの星山耕太郎展は、昨年6月の ACT ART COM 2016(ACT アート&デザインフェアー2016) への出展がキッカケとなりました。 こうして、いい形で次につながったことが、とてもうれしいです。 昨年のアートフェア出展のようすは、こちらでご覧になれます: 【作品紹介1】 日本画家・星山耕太郎 「水墨+アクリル」 の一気呵成が生む動幻画(6/16~19) @ ACT アート&デザインフェアー2016 【作品紹介2】 星山耕太郎さん「水墨+アクリル」一発ワザが生む動幻画(6/16~19) @ ACT アート&デザインフェアー2016 まだまだ紹介したい作品があるので、このブログは【作品紹介2】に続きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Aug 25, 2017 12:04:55 PM
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