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カテゴリ:本
『玻璃の天』
北村薫 著 昭和8年、女学生の栄子とお抱え運転手のベッキーさんは栄子の周りで起こるさまざまな事件を解きほぐしていく。 「推理小説」の範疇を越え、純文学の香りが漂ってくる格調高い文章です。 綿密に時代考証がなされており、現在ではなかなか想像できない当時の風俗が分かります。 「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の三編。 「幻の橋」 ロミオとジュリエットの話。栄子の学友が恋したお相手は、先々代からの確執で、このままでは二人に未来は無い。相談を受けた栄子はベッキーさんの助言に従い友人にとある策を授けます。両家の不和も解消されたかに見えた時ある事件が・・・ 「想夫恋」 お年頃の女学生ですから、これも学友の恋のお話。それは置いといて、と言うか、栄子さんに恋の季節は訪れないんだろうか・・・。 ウェブスターの「あしなが おぢさん」は最初は「蚊とんぼスミス」というタイトルだったのね! 校庭で熱心に本を読んでる生徒の姿を発見し何を読んでるのか気になって、後ろから回り込んで覗き込んで・・・お嬢様ってば(笑)・・・それが自分も大好きな「あしなが おぢさん」 これがきっかけとなり、それまでほとんどお付き合いの無かった栄子さんと綾乃さんは親しくなるんですが、これはよく分かります。他人が何を読んでるのか気になるのも、同じ本が好きだと分かると嬉しくなってしまうのも。 「玻璃の天」 只者ではないベッキーさんの過去がわかります。 「幻の橋」から登場している荒熊こと段倉荒雄は熱心に富国強兵を唱えているオピニオンリーダー。こんな輩がたくさんいて、個々の思いは退けられ戦争に突入していったんだろうなと思います。 与謝野晶子の「君しにたまふことなかれ」 晶子の気持ちはよく分かるけど、「死なないで欲しい」と歌われた者の立場でこの歌を読んだ事はなかったので、この歌を発表したのは勇気なのか暴挙なのか分からなくなってしまいました。 推理小説が好きな方にはもちろん、そうでない方にも超オススメの1冊です。 玻璃の天 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月14日 09時42分08秒
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