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今日9月6日は黒澤明の命日(1998年に脳卒中により逝去)です。そこで、最近出版された黒澤明の娘である和子さんの著作の中から、黒澤の晩年の言葉をいくつか紹介させていただきます。
「僕にはもう、あまり時間がない。いつの世も人間は懲りずに馬鹿なことをやっている、そう言ってしまえばそれまでだけど、うまく言えないけどね、チャンスはあるんだよ。これからの時代にこそ、哲学が必要なんだ。もう一度、人間はなぜ生まれて、どこへ行くのか、何のために生きているのか、見詰めなければいけないときが来たんじゃないかね。倫理だよね、人の心だよね。資本主義、利益至上主義でさ、自分だってそれを享受しているわけだけれど、どこかで反旗を翻さなければいけない。豊かに暮らすことがね、イコール幸せに暮らすことにならずに、歪みが出てきていてさ、弱いところにますます追い討ちをかけて、悲劇が生まれる。ある意味では進歩したさ、でも昔の物のほうが精魂込めて作られているじゃないか」 「まず、これぞと思う日本の映画監督に、一人一人会ってみる。いろいろな話を聞いてみるべきだしね。ともかく、今の日本映画界も、排他的だからね。会社とか組とか、自分の今までの映画の作り方とかに執着しすぎだ。もうそんなこと言ってる場合じゃない。一回全部取っ払って、どうすれば日本映画が再生できるか、囚われているものを払いのけて、力を合わせて進むべき方向を話し合いたい」 「自分の育った映画界を改革しなければ、世の中をどうこう言えない気がするんだ。日本映画界の良いところは残して、悪いところは切り落として、初心に戻って、しつかりしたプロトタイプ(原型、模範)を作らなければ。僕の代わりにやってくれる若い人がいればいいんだけれどね。でも日本人はすぐ、経験や権威が足りない、前例がないとかでね、やらせてみるっていう勇気がない。どうしたらいいもんかね」 「日本人はおとなしすぎる。もっと噛みつかなければ駄目だよ。怒らなければ、反抗しなければ、日本は良い方向に向かえないんだよ。先送り先送りで、玉虫色なんて、もう嫌だね」 以上、「反抗する」『回想 黒澤明』(黒澤和子著、中公新書)より 上記に見られる、資本主義を逆手にとる考え方や、産業民主主義の考え方、とにかく人と会って連携をはかろうとする態度は、まるで今日のNAMの運動のようである。 若い時、黒澤は左翼運動をやっていたし、彼の愛読書『戦争と平和』は同題名のプルードンの著作や集合力理論というプルードンの理論の影響を受けているので、黒澤の世界観が間接的、直接的にプルードンに響き合うのは当然かも知れない。 なお、9月14日に京橋のフィルムセンターで黒澤が参加した組合映画『明日を創る人々』が上映されます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年09月08日 20時01分19秒
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