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2004年10月14日
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テーマ:戦争反対(1190)
カテゴリ:資料
環日本海諸国図

 先の日記(13日)で紹介した地図は、富山県が「環日本海文化」に着目するシンポジウムを開催し続ける中で、約10年前に作成したものです。以下、この地図に関する網野善彦さんによる解説を御紹介します。ここでは「日本海は大きな『内海』だった」ということと、海は本来交流を促すものだと言うこと、島であることは積極的に外に開かれたものであるということが強調されています。

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 ~富山県の企画、日本地図センターの編集で作成されたのが、ここに掲げた「環日本海諸国図/富山中心正拒方位図(三百五十万分一)」である(富山県土木部企画用地課取扱)。日本列島をアジア大陸から見るような形で、大陸の上に横たえ、富山を中心に二百五十キロ、五百キロから千五首キロまでの同心円を描いた地図で、実態は通常の地図と同じであるが、この地図からうける印象はまことに新鮮で、ふつうの世界地図の中の日本列島とはまったく異なったイメージをうけとることができる。
 なにより、サハリンと大陸との間が結氷(けっぴょう)すれば歩いて渡れるほど狭いことや、対馬と朝鮮半島の間の狭さ--晴れた日には対馬の北部から朝鮮半島がはっきり見えるほどの狭さを視覚的に確認することができる。そして日本列島、南西諸島の懸け橋としての役割が非常にはっきりと浮かび上がり、「日本海」、東シナ海は列島と大陸に囲まれた内海、とくに「日本海」はかつて陸続きだった列島と大陸に抱かれた湖のころの面影を地図の上に鮮やかにとどめている。
 そしてこの地図を見ると、北海道、本州、四国、九州等の島々を領土とする「日本国」が、海を国境として他の地域から隔てられた「孤立した島国」であるという日本人に広く浸透した日本像が、まったくの思いこみでしかない虚像であることが、だれの目にもあきらかになる。
 そしてこの虚像をあたかも真実であるかのごとく日本人に刷り込んだのは、とくに明治以降の近代国家であり、さきの島々を領土として国民国家をつくり出すという課題を自らの課題とした政府主流の選んだ一つの選択肢であった。政府は海が人と人とを結びつける道であることに目をつぶり、海が人と人とを隔てる国境であることを国民に徹底して教えこみ、海軍力の強化を至上命令として推進したのである。その結果が無謀なアジア・太平洋戦争の悲惨な大破綻であったことはさきにのべた通りであるが、それが海という自然のあり方を無視した国家の意志の破綻だった事実を、われわれははっきりと確認しておく必要がある。
 実際、海が本来、国境になじまないことは、この地図を見れば明白である。島と島の間のどの海峡も、人と人とを隔てる一面とともに、人と人とを結びつける役割を持っており、島々はすべて海を通じて結びついていると見ることも、十分にできるのである。そして、さきにあげた五つの内海をはじめ、南太平洋の海は、それぞれに独自な世界を形成しているのであり、その個性をあきらかにすることは、今後のアジア・太平洋地域を正確に理解するうえで大切な課題といえよう。ヨーロッパ・アフリカに即して、ブローデルが「地中海」をみごとに描いたような仕事が、これらの内海についても推し進められなくてはならない。~

    網野善彦『「日本」とは何か?』(講談社、シリーズ日本の歴史第00巻)p36-37

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 このあと網野氏は「日本海」の呼称問題(韓国人の学者から「青海」という提案があった)にも触れていますがこれは割愛します。
 また沖縄の「特殊性」(=アジアの中心に位置すること)を説明するには、新たにトリミングサイズの違う独自の地図が必要になるでしょうが、これを確認するためには地図の南北を逆さにする必要はないと思います。
 また、そこでも上記の網野氏が示した「島々はすべて海を通じて結びついている」といった考え方はそのまま当てはまるでしょう。追記すれば、それは日本列島をアジア諸国の中に位置付ける再認識の作業においても有効な考え方だと思います。





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最終更新日  2004年10月14日 00時02分16秒
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