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関本洋司

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2004年11月13日
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カテゴリ:日記
 11月13日、横浜学生映画祭で中国映画の短篇を3本見た。「再見童年」「火鍋」「草原」の三本だ。それぞれ国家(毛沢東など、権威の下での友情)/資本(都市、市場経済)/国民(少数民族の宗教的倫理感、互酬制)といった異なったレベルで物語を語っていて興味深かった。
 ただ、一般的に言って中国映画は都市を描けていないということが問題点だろう。(農村を描くと傑作ばかりなのに)第五世代の映画作家はみな都市を描こうとすると失敗していると思うし、その点では香港のウォン・カーウェイなどには及ばない。それは映画作家が同時多発的な世界認識を獲得していないということだし、「映画=時間」(ドゥルーズ)という課題を明確に出来ていないということでもある(*)。

 映画祭ではシンポジウムもあり日中間の交流もあった。ただ、個人的には日中というより北京と横浜といった中央機関を介さない都市と都市同志の直接的なつながりに希望があると思う(*)。
 シンポジウムではデジタル基準の共有に関しても話題になった。ポストプロダクションの効率化、ライブラリーの充実、ネットを使った配信及び上映などにそれらは有効だということは疑い得ない。
 当日佐藤忠男氏(*)が指摘した歴史認識の問題などは現在の日本側の課題だが、デジタルを利用して日中が共通の映画ライブラリーを持てばお互いの認識の共通の基盤としてかなり役立つだろう(交換による充実化の事例がかなりあるが、フィルムだとそれでもかなり大掛かりだ*)。ネット配信に関しても、技術的な課題というより、新たなアソシーエーションをどうやって築くのかという考え方の問題だと思う。
 国家社会主義だけが社会主義(*)ではないということが中国側に対しても求められるのだ。

 ゲストで招かれた方々が働く北京の撮影所全体は民主的に運営されているようだったが、今後は新たな市場経済(=都市)の中でどうやって映画産業(ハリウッドに対抗するアソシエーションとしてのそれ)を展開して行くかという課題をアジア全体で共有していると思う。

注:
*マフバルバフを例にあげるまでもなく、アジア映画はポストモダンの時期に突入している。
*当日、日中の学生が日中関係の冷え込みに対して意識的だったことがせめてもの救いだ。
*佐藤忠男氏はデジタル技術が高価になることを心配していたが、これは中間技術といった側面から考察すると、正当な疑問だと思う。
*黒澤の『デルス・ウザーラ』などは(対ソ連及び対ロシアという)政治的な理由で中国では公式上映されていない。
*シンポジウムでは日本側の平等主義的な映画制作のナイーブさを指摘する中国側の発言があったが、どちらも一長一短であろう。日本の学生が当日出品した作品で試みたように一つの作品内で平等を指向するよりも、チャン・イーモウらがよくやるように他の作品をつくる時に手伝い合う方が合理的で正しいは言えるかもしれない。この点では中国側に対して、「腐っても社会主義」ということが言える。








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最終更新日  2004年11月15日 16時54分55秒
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