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2010年10月11日
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カテゴリ:BOOK REVIEW


数年前、香川県に行った際、菊池寛記念館に立ち寄った。うどんを食べて、夏のため暑かったのを思い出す。購入したのが菊池寛の「藤十郎の恋、恩讐の彼方に」であった。どちらも印象深い。

「藤十郎の恋」は、芸として恋を学ぶため嘘の告白を行い、女性を自害に追い込む話。人間の弱さを描いた作品だが、どろどろした話で後味が悪く、人間はなぜ、人をそこまで裏切ることができるのか、陥れ、追い込むことができるのか虚しくなる。

人間は、自分のことばかり考えて弱い生き物だと思うと、次には、恨みなど吹き飛ぶ話。「恩讐の彼方に」は、人を殺した主人公が、出家し、罪を償うために21年かけて、耶馬渓にノミでトンネルを掘った伝説の話。息子が父のかたき討ちに来るが、トンネルの完成という行を終えた主人公に感動し、敵討などできなくなる話。

「歓喜に泣く凋(しな)びた老僧を見ていると、彼を敵として殺すことなどは、思い及ばぬことであった。敵を討つなどという心よりも、このかよわい人間の双の腕(かいな)によって成し遂げられた偉業に対する驚異と感激の心とで、胸がいっぱいであった。彼はいざり寄りながら、再び老僧の手をとった。二人はそこにすべてを忘れて、感激の涙にむせび合うたのであった」。皆、全てを忘れて感激の涙にむせび合えば、争いはなくなる。そんな世の中になればよいと思う。





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最終更新日  2010年10月11日 11時15分20秒
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