格差社会
私は弁護士を目指して法学部に入ったのですが、その学問に馴染めず1ヶ月で諦めたのですが、幸い我が大学の法学部には包容力があって、政治社会学という分野のメニューが揃っていたので、それで単位を取って卒業にこぎつけたのです。従って、私は法学士様であるにもかかわらず、法律のことは全く知らず、もっぱら構造主義とか記号論とか現象学なんている訳のわからないことを勉強していました。書店に行ったら『こんな日本でよかったね 構造主義的日本論』(内田樹著・株式会社バジリコ刊・1600円+税)が目に付いたので、さっそく読んだのですが、これが本当に面白い!固い哲学書ではなく、今起こっている事象を構造主義的に見るとどうなるかという視点で書かれているので、わかり易い。例えば「格差社会とは何か?」これを構造主義的に答えると・・・「格差が拡大し、固定化した社会というよりむしろ、金の全能性が過大評価されたせいで人間を序列化する基準として金以外のものさしがなくなった社会のこと。」となります。金持ちとは、金のことで心を煩わされない人のことで、その意味では私などは貧乏のときも、ずっと「金持ち」であった。金のことをつねに最優先に配慮する人間は、私の定義によれば「貧乏人」であるので、格差社会是正のために「もっと金を」というソリューションを提示し、それを支持する人々は、論理的に言えば、これまでもこれからも未来永劫に「貧乏人」であり続ける他ない。う~ん、まさしく構造主義的発想。他にも眼から鱗の現代社会を見通す短文がたくさん掲載されています。第一章は、レヴィ・ストロースやヴィトゲンシュタインやジャック・ラカン、ロラン・バルトといった構造主義などの大御所の話なので、ちょっととっつきにくいと思いますから、第二章の『ニッポン精神分析~平和と安全の国ゆえの精神病理』から読まれることをお勧めします。FPの人など、社会の将来を見据えてお客様のファイナンスプランをする人には、お勧めの一冊です。