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カテゴリ:ひぐらし
彼女は森を出て、小さな村でうたいはじめた。やがてその歌声は山を越えて遠くの町に届いた。人々が彼女の歌を聴きに森が途切れた広場に集まってきた。誰かが彼女を町に連れて行った。彼女はまた別の町に行って歌をうたった。みんなが彼女の歌をきいてその歌を口ずさんだが、誰も彼女のことを知らなかった。 時は流れて、彼女は森のことを思い出した。森の中には蒲の茂る湿地があった。そこには木漏れ日が、まるで天の意思のように、いつも射し込んでいた。森の中でしずかに鳥と歌をうたう幸せを思った。 そして、彼女は森へ帰っていった。 時折、箱にしまっておいた彼女の歌を取り出して思い出すことだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.05.29 08:26:47
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