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私は飴色の瞳を持ったペルシャ系の猫だ。生まれた時の記憶は、薄暗い湿った路地の毛羽立った毛布の中で、腹を空かせて鳴いていたことぐらいだ。
人は兎角、その出自を気にしたがるが、理解し難い。語るも何も、その容姿、その有様、その振舞いをみれば、自ずとわかるものだ。ふたつとない自分の生い立ちを気に病むことなどナンセンス至極である。 私の耳は三角で尖っている。物音がすれば、反射的にその方向に耳が向く。しかし、真後ろは向かない。前に進んでいくために、その目と耳と両の手足としなやかな尻尾があるのだ。後ろに進むためのものではない。 縁あって、ちょいと野深き庵に厄介になっているが、灼熱地獄の東京都中央区から暫時避暑に赴いたようなものだ。後からやってきた不可思議な御仁は、猫舌には度し難い熱くて塩っぽいヌードルを食すは、6弦の琵琶のやうなものを爪弾くは、ひねもすごろごろして分厚い本を読んでいるはで、不可思議なものだ。 生まれいずる猫の森に帰ることもなく、今の人の世のおもしろきことなきをおもしろくかな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.08.18 00:42:31
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