こころに映るよしなしごと

この國の公民は国家の庇護により一年を通じて食料品や衣料品、はたまた化粧品等の贅沢品においてまでも、労働報酬により得た通貨と交換できる、得徳百貨販売公司をよく利用する。

民は国家の礎とする統率者の配慮により、なに不自由なく売買できるのみならず、永きに渡り公司を利用してきた優良婦女子は、万分の確率により、マジカルミステリーツアー参加のプラチナチケットを得ることができる。

幸運にして、そのプラチナチケットを獲得した知己の婦女子のいざないにより、今までに経験したことのない、今までの人生について深い自省を促す、興味深い旅に同行することと相成った。

旅の詳細は多幸の婦女子らには知らされておらないが、滋養深き山間の名湯巡り、日常では所持し得る労働報酬通貨では買うことすらままならない贅沢品の説明即売会への御招待、通常の旅館では食し得ない贅沢を極めた珍品絶品の豪華な昼食会、自宅で待つ徳高き生けるご先祖様への格好の土産物店の視察と購買などなど、充実した内容となっておる。

当日は、業務を欠勤し早朝より参集会場へ赴くところ、得徳百貨販売公司の広場に集まりし善老男女幾十人、朝靄の中で、旅立ちを今か今かと待っている。

苦痛に顔を歪めているＴＭ．Ｒevolutionのような面構えの麗しのうら若き添乗女子同志が我々を心を込めて迎え出でて、プラチナチケットの同伴者である吾は、同伴代金、僅か１万円を手渡す。

参加者の98.7％を善老女で占める箱車数十台が、朝靄の得徳百貨販売公司の駐車場を出立する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）