|
カテゴリ:カテゴリ未分類
僕は、この春から親元を離れて、中央線沿線のボロいアパートで独り暮らしを始めることにしたのだ。郊外の私鉄沿線の街は、何だか田園の憂鬱(佐藤春夫)というか、新興住宅街の無常(今作った)というか、人が生活している実感が希薄な気がして、昔からの古い街に住もうと思ったのだ。というより、何だか変わり映えのしない日常が少し違って見えたら面白いと思っただけなのだ。
引っ越し荷物は、机と布団と段ボール5個分の本と、段ボール1個分の服と、ラジカセとギターだけだったので、多摩ナンバーの軽トラの荷台に自分で積んで自分で降ろして、半日で引越は終わった。小学校の時のHRの罰則適用を受けて学校の廊下の拭き掃除をやらされた経験が生きて、部屋の拭き掃除は完璧だった。「人生に無駄なものなし」といったところだ。 玄関とトイレと台所と6畳間と窓がひとつしかない部屋で、家賃は2万5千円だった。軽トラをレンタカー屋に返して、アパートの近くの角の煙草屋で缶入りのコカコーラとハイライトを買って、雑然と段ボールが置かれた部屋に座って、コーラで乾いた喉を癒し、ハイライトを吸った。 正直言って、何の目的もなく独り暮らしをはじめてしまったが、まあ、今までだって、いきあたりばったりだったので、これからもそんな風だろう。コーラを飲み干すと腹が減っていることに気づいたので、駅前にあるカウンターだけのハンバーグ屋に行くことにした。 玄関で靴を履いて、まだカーテンもかかっていない部屋をぐるりと見回し、ドアを開けて閉めて、スタジャンのポケットから部屋の鍵を取り出してみて、自分が独り暮らしをしていることがようやく「じわ~」と感じはじめた。(つづく)(第1回おわり) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.11 23:32:12
コメント(0) | コメントを書く |