なつかしいなにか
形があればわかりやすいけど、つまらない。形がないものは、人にうまくつたえられないけど、伝える必要もない。数か月前に会った、なつかしいなにかに、雨の街でまた会った。形があると、すぐに気が付かないが、ゆっくり時間をかけて、ジントニックを4杯呑んで、沢山話をしたら、そのなつかしいなにかをみつけた。形があれば確かなような気がしていたけれど、形のない、形に惑わされない、なつかしいなにかは、決して変わらない。マルセル・プルーストなら「失われたものを求めて」として、スピッツなら「夕焼け」として、知り合いの某作家なら「あらかじめ失われたものを求めて」として、それを表すのだろう。長い文章も素敵な歌詞も書けないものは、ただ、なつかしいなにかとだけつぶやいて、バス停へと去る姿を見送るのみなのだ。