<「道徳」の教科化・・・??>1月10日付けの日記で、日本青年会議所が文科相に「道徳」の「教科化」を求める「提言」を渡した、という産経新聞の記事をご紹介しました。
この日本青年会議所がイメージしている「道徳」の「授業」を調べてみました。
↓<日本JC 倫理道徳力教育実践委員会ホームページ>
http://www07.jaycee.or.jp/2007/strength/morality/
このHPのTOPに書かれている文章を以下に引用します。
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~ 取り戻そう 日本の力 ~
日本人は自然や人々と親和性を保ち、礼節が行き渡り、四季の変化を味わう豊かな感性を持つ国民でした。しかしながら現代の日本人は先人が築いてきた伝統的な価値観を忘れ去ってしまっているように感じます。私たち青年会議所はその価値観を「日本の力」ととらえ、「美しき日本」創造のために国の将来を託す子どもたちに道徳的価値観を伝え自立した個人としての健全な自主性を育むことが必要であると考えます。身の周りのすべてのものに感謝し、慈しむ心を大切にしてきた日本の伝統的な価値観を道徳教育の素材として活用し公共心を育み、子どもたちに他国に類を見ない豊かな精神文化を築いてきた日本の素晴らしさを伝えることにより地域や国を愛する心の涵養を目的として運動を展開いたします。
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で、そのための取り組みが、アニメーションDVD「学の夏休み」を使った道徳教育プログラムというわけです。
↓アニメDVD「学の夏休み」本編 再生時間24分27秒(同団体HP掲載)
http://www07.jaycee.or.jp/2007/strength/morality/modules/tinyd0/index.php?id=14
このDVDを使った「授業」実践に向けての研究開発、「模擬授業」や学校での取り組み、「成功事例」などの動画なども掲載されています。
アニメ、視聴しました。
感想は・・・・・
まず、意図したメッセージを伝えるための絵解きとしてアニメを作っているので、物語のクオリティが低いです!背景の絵は綺麗だし、エンドロールの使い方まで含めてそれなりに考えられてつくっているけど、「授業」のためのアニメですからね。アニメである必然はないです。子どもの興味を引くことが目的になっているのでしょうから。アニオタとしてはかなり悲しい・・・まぁ、「わかりやすく伝える」目的の教育用映画にはありがちですけど・・
東京育ちのわがままな学くんが、夏休みにお父さんの実家らしい、田舎に無理矢理連れてこられ、田舎でもわがままで自分勝手な行動をするのですが、その結果として妖怪に襲われ、それでもなんとか許してもらい、改心した良い子になった・・というお話です。
学くんは、ゲームばかりしているワガママで自然を大事にしない都会の子で、田舎のいとこは活発で、物を大切にし生き物の命を大事にし、おもいやりもある子。絵に描いたような・・ステロタイプの都会と田舎、現代の殺伐とした生き方とちょっと昔の暖かい人間関係の対比で物語りが作られています。ステロタイプって、結局は実際には「ありがちなイメージ」でしかなく、現実の世界や人々を見るのには邪魔になるものです。子どもはそんなに単純じゃないよ!とちょっと腹が立ちます。
で、このDVDを使った教育プログラム用にワークシートというものが作られていて、アニメのねらいに関する質問が、中学年、高学年別に用意されています。アニメの視聴が終わったあと、このワークシートを使って意見交換したりするというわけ。
うーん・・・こういう「授業」を考えているから、「検定教科書」と「国語と同じような成績評価」という発想がでてくるんでしょうね。
「模擬授業」の動画では、子どもたちがワークシートを記入する際に、、「あっているとか間違えているとかそういうことじゃないので、思ったことをそのまま書いてください」と声かけがありましたけど、意図されている「望ましい子ども像」は透けてみえるからね。子どもたちは「正解」を見つけて書くでしょう。
私にとっては、そういうプロセスこそが「道徳の荒廃を招く」と感じられるので、この授業形態には反対です。
あとね、学くんの「改心」が因果応報で妖怪に襲われて、善行を行ったので許してもらえた、というお話の流れもいやです。娯楽作品ならいいんですよね。「地獄先生ぬ~べ~」にそういう話がありましたよ。作品として完結している本気で作ったエンタメならいいんです。でも、「教育プログラム」としてはどうなのよ・・と思います。
24分じゃ描ききれないという限界はわかりますけど、妖怪=八百万の神、という位置付けになっていて、鳥居なんかもでてくるのですが、「食べるために殺すのは生き物として仕方ないことだが、遊びのために殺されたのでは成仏できない」という(正確じゃないです)セリフが出てきたりします。民間信仰ってそういう側面がありますけど、「道徳」であっても、「教育」の名目でこの大雑把さをそのままはいやです。
日本青年会議所といえば、2007年5月に、国会で問題になった、DVD「誇り」を作った団体です。同団体は、文部科学省の「新教育システム開発プログラム」の委託先となり、同団体が制作したアニメーションDVD、「学の夏休み」と「誇り」を用いた教育プログラムを開発していました。この二つのアニメーションDVDのうち、「誇り」の内容について、5月17日の衆院教育再生特別委員会で、日本共産党の石井郁子議員が取り上げたのでした。このDVD「誇り」の内容や「新教育システム開発プログラム」の採択にあたっての審査については、「しんぶん赤旗」の2007年5月18日の記事が報道しています。
↓
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-05-18/2007051803_01_0.html
実際のDVDを観たいなと思ってましたが、そのままにしていました。
で、今回、ニコ動とYoutubeにアップされているのを見つけました。
約30分の作品なので、3つのパートに分けてアップされていました。
↓Youtubeの動画へのリンク
<誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 1/3>
http://jp.youtube.com/watch?v=tOEBU7pFhH4&feature=related
<誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 2/3>
http://jp.youtube.com/watch?v=LOXpznARBNI&feature=related
<誇り~伝えよう日本のあゆみ~ 3/3>
http://jp.youtube.com/watch?v=eODAGhwnbV4
ちょっと観ていたら、となりでパソコンをいじっていたアライグマオヤジさんが、
DVDの劇中人物のセリフに、「もっとちゃんと勉強しろ!」と怒りはじめました。
いい加減なアニメには血圧があがると苦情をいわれたので、後日ゆっくり観ることにします。