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カテゴリ:中村美香子(さんさんぷろじぇくと)
環境と子育ての話は、短期的なスパンでみると、うまくいってなくても、その弊害が直接自分に降りかかってくることが少ない。だから、目の前の利益を上げることに、目の前の仕事の成果を上げることに、意識やおカネが集中してしまう。
少ないっていうのは、たとえば自分が温暖化で住むところがなくなってしまうとか、すぐに労働力の減少に直面するとか、そういう状況にないことが多いっていうこと。 だから、社会の仕組みとして、環境破壊や子育て破壊(?)をコスト化して、組織や事業を経営したり実施したりするときには、そのコストを最小化する、すなわち環境破壊や子育てできないような働き方をさせることを極力抑えようとするようなインセンティブがはたらくようにする、という考え方が出てくるわけだ。わかりやすい例が、炭素税。 大学生だったころ、というと1990年台はじめだけど、その頃、環境問題がとりあげられるようになってきて、この、「内部コスト化しよう」という考え方がすごく新しく感じたものだった。 冒頭書いたように、子育ても、まさしくこの環境問題と同じ性質を持っていると思う。長期的スパンでみれば、社会の存続に関わる大きな問題も、イチ個人、イチ企業などの日々の営みの中では、2の次3の次になってしまう。また、自分のところだけよくしようとしても、自分だけ食っていけないことになって損をして、しかも全体的な危機的状況は何も変わらないというようなことになるわけで、誰もそんなことはやらない。 だから、ワークライフバランスを考えないで経営したら、社会全体、みんな同じコストがかかるんだよという仕組みにする。こういうときは行政の出番だ。 平成19年12月にまとめられた、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略では、「次世代育成支援の社会的コストは『未来への投資』である」と位置づけている。(ここで言ってるコストは、ワークライフバランスだけにかかるコストではないけど。) この文言じたいは、ほんとに隔世の感があるよね。 私が就職したころというと今から12年前だが、当時は、たとえば、医学生の友人が言うことにゃー、就職?する医科を決めるために、大学病院内の各科を回っていたときに、「外科に来るなら、子宮はとってきてください」と言われた、なんてことがまかり通っていた時代だ。その頃、すでに北欧諸国では、労働と「家庭的責任」の両立のための、事業主に対する各種義務付けや禁止規定を定めた法律が制定されていた。 あとに残る結果を考えたら、払わなければならないコストを、負担を、リスクを、オンナの人生に押し付けて、「女の幸せはやっぱりなんといっても家庭、子育て」という、すごく意図的な操作をやって、確実に、(ほんとなら大変でやんなかったかもしれない)子育てをやらせてきた結果、そればっかりじゃないでしょとか、お母さんみたいな人生は送りたくないとか、子どもは自分で選んで産むもんだとか、いろいろな女性の気持ちから、今日の少子化は起こっている。ほかの説明もあるだろうけれど、まずはこれでしょう。でも、次世代育成は、女性が「ほかのこともしたかったのに・・・」と言いながらやるもんじゃない、それは社会の大テーマだ。それを社会で考えて、コストを払わないでどうする。環境を整備しないでどうする。 炭素税みたいにほんとにカネがかかるコストにするだけじゃなくて、義務付けてやらなかったらペナルティーを課すとか、ペナルティーまで課さなくても、とにかく義務付けるとか、反対に報奨金や補助金を渡したり、表彰してイメージアップというごほうびをあげたり、と、効果のほどは別にして、手段としてはいくつかある。 次世代育成計画を事業主に提出させるようにしたり、ワークライフバランスのよい取り組みを行った企業に対して助成したりというのはこういう手段の例だ。 ちなみに、このへんのことに関しては、東京都の政策はこんなふうだ。これは18年12月に発表された計画「10年後の東京」(18年12月策定)の実現のための、3カ年計画「『10年後の東京』への実行プログラム」(19年12月策定)。ここにあります。以下は、。この中の、「全体版」の、目標5の施策24です。 働き方の見直しの推進 ○ 中小企業における両立支援の取組を促進 ・ 両立支援に積極的に取り組む企業を「とうきょう次世代育成サポート企業」として登録し、その取組を広くPR し、普及を図る。 ・ 育児休業の取得を促進するため、代替要員の確保に要する経費の一部を支援する。【新規】 ・ 両立支援制度の整備に向けて、社内でのルールづくりなどの取組に要する経費の一部を支援する。【新規】 ○ 企業におけるワーク・ライフ・バランスの推進【新規】 ・ 先進企業における取組事例や育児休業取得時の職場マネジメントなど、仕事と生活の調和に向けた具体的方策に関する実践プログラムを作成し、業界団体等を通じて広く普及を図る。 私は、実は、去年の6月に開催されたタウンミーティングで、「群読」をやった「リブラ」のメンバーで、「むとんちゃく上司」をやってたヤツなんだけど、この役は、真剣に次世代育成について考えちゃーいないけど、管理職だから、世の中そういうことになってることぐらいは押さえていて、悪い人じゃないけど全然わかってない・・・みたいな設定だった。実際、この頃は、「子宮とってこい」は言っちゃいけないってことは、多くの職場に浸透したんだろうなと思う(思うだけです。私の職場はそうじゃない!という方はぜひ、コメントにください。)。世の中そういうことになってきてる、っていうのは確実に感じるし、それはひとつ、社会が変わっていく上で、なくてはならないステップだと思う。 ただ、これだけで、ものっすごい変わるかなあと思うと、心もとない。 保育園のハハ仲間で集まっても、「妊娠中に体がしんどくて、仕事と両立するしんどさを思い出すと、第2子はとても産めない・・・」「人が減らされた上にメンタルで休む人が出てきて、もうどうやってやるのってぐらい仕事が大変で。オットは毎日遅くて子育て云々以前にボロボロだし。2人目なんて絶対ありえない」「こないだ降格してもらったよー。もうこれ以上やってられないしもうちょっと子どもとゆっくり過ごしたいし・・・」というような話がバンバン出てくる。そして、「上司」は、年配男性で、奥様が専業主婦で、そんな感じがまったくリアルでないとしたら。 1.政策はもっとないのか?と考えてみたい気持ちと。 2.労働者として、何かしないと!と思う気持ちと。(だって、目の前の状況を変えるのには、よく知ってる人が具体的に考える必要が絶対あるはずだもんなあ。) 大きなムーブメントにするためには、誰かに任せていたんじゃだめだ。 それに、ムーブメントになってきたときに、くやしいっていうのもある。自分もそう思っていたのに、何もしなかった。でも、今は常識になってるっていうのは、なんだかくやしい。自分の生き方として、イケてない。 ただ、2.は、雇用関係を意識しないといけない労働者としては、一歩を踏み出しにくい。労働組合という制度があってもなお、むつかしいよね。 でも、この4つ葉の目指すことについて、たとえば今日のテーマ「ワークライフバランスの実現」という命題について、みんなが何かやろうとした場合、私のように、子育て支援を生業としていないし、杉山さんみたいに審議会の委員でもないような人がやれるような具体的な方法を考える必要がある。 それは何だろう? 今年度は、それをやんないと。 やってる方からもお話ききたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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