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カテゴリ:當間紀子(子ども幸せ研究所)
こんにちは、高校生の母です。
初めてのアルバイトは高校生のとき。 それも父から依頼されての一日家庭教師でした。 「小学生に面積を教えてもらえないだろうか」 小学4年生で習う、面積の出し方を教えてくれ という依頼です。 父はアレルギー専門医で、 関西でも特に大気汚染がひどいA市の公立病院に 公害によって悪化した喘息患者専用病棟を立ち上げた後、 その近くで診療所を開業していました。 父の元を訪れる患者さんの多くが さまざまな病院から紹介された喘息の患者さんで、 面積を教えて欲しいという小学生Yくんも、 その一人でした。 小児喘息で、 季節の変わり目や空気が乾燥する時期などは どうしても学校を休みがちになり、 授業について行けなくなる。 すると、それを気に病んでしまって症状が悪化し、 さらに学校を休むことになってしまう。 そういう悪循環を断ち切って、 症状を改善させるとともに、 学校へも行けるようにしてあげたい。 それが父の依頼の意図でした。 当時はそういうお子さんが ひとクラスに一人か二人は必ずいました。 現在では、治療薬の開発などによって、 学校を長期に休む病気ではなくなってきています。 うららかな春の休日、 父の診療所の2階で出会ったYくんは、 恥ずかしがりやだけれど、とても頭のよい少年でした。 それまで誰かに勉強を教えたことなんて一度もない 初心者家庭教師の拙い説明にも直ぐに理解を示し、 終わりの頃には、 応用問題も解けるようになっていました。 「これで、算数の心配がなくなりました」 嬉しそうに笑って、Yくんは帰って行きました。 学校に行けるようになるといいね。 無事に役目が終わってほっとしていると、 父がこんなことを打ち明けたのでした。 喘息を悪化させているのは、 授業についていけないせいだけではない。 Yくんはお父さんのことが大好きで、 休みの日にお父さんと過ごすことを 心から楽しみにしているのに、 どういう訳だか、一緒に過ごす約束をした日に限って、 「急な仕事」が入って、お父さんは出かけて行ってしまう。 すると、発作がさらにひどくなってしまうんだ。 日曜日もなかなか休みが取れないYくんのお父さんは、 普段から夜遅くまで仕事をしており、 Yくんがお父さんと過ごせるのはほんのわずかです。 「Yくんのお父さんが、Yくんのために、 もっと休めるようになってくれるといいんだがなあ」 そう言った父の表情は、 患者さんの治療に最善を尽くそうとする 医師の顔だけではなく、 私生活ではわが子を溺愛気味と 親戚から呆れられている父親の顔とが ごちゃまぜになったような 憤りと悲しみの入り交じったものでした。 精神的なことが喘息の症状などを悪化させることは、 かなり以前から知られていましたが、 後に出版社の編集部員として、 小児心身症の取材で、ある小児科医を訪ねたとき、 最初に言われたのは、この言葉です。 「子どもはおとなのミニチュアではありません。 語彙が少なく、表現もまだ拙いので、 こころの痛みをからだの症状で 訴えることもありますが、 こころの問題がからだの症状に 現れやすいんです」 子どもが おとなの気持ちが自分に向いていなかったり、 自分のことを受け入れてくれない悲しみや憤りを 病気という表現だけでなく、 さまざまな言動で表すことを おとなになった私は知っています。 そして、それは算数を教えても解決出来なかった Yくん親子の問題同様に、 簡単に解決出来る問題ではないことも知っています。 今のままでは、かつて子どもだった私から、 「なんだ、当時と何も変わっていないじゃないの! なんとかしなさいよ」 と叱られてしまいそうだなあ。 だから4つ葉プロジェクトに賛同して、 このようにブログを書いていたりするのかな。 先日松田さんから頂いた 4つ葉のクローバーのレリーフを手にしていたら、 遠い父との思い出とともに、 こんなことを考えていました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 26, 2008 03:20:33 PM
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