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久しぶりに登場しました。研究会記録担当の山田麗子です。
遅くなりましたが、5月18日の研究会の報告レポートをお届けします。 働いていてもいなくても、稼いでいてもいなくても、すべての人に一定額を給付するというベーシックインカムの考えはSFのようですが、学んでみると私たちを縛っているいろいろな制約に気づかされたり、疑問を投げかけることになりました。昨日から給付がスタートした子ども手当も、額が大幅にアップしたことをきっかけに、子育て環境として何を大事にするかを問うものと言えるかもしれません。 長文になってしまってごめんなさい。 〔研究会レポート〕 去る5月18日、東京・高田馬場の日本児童教育専門学校で、4つ葉プロジェクト+の第4回子育て政策研究会を開きました。テーマは、「子ども手当てと子どもの貧困――子ども手当からベーシックインカムを考える――」。子どもの貧困問題がクローズアップされる中、子ども手当は貧困解消につながると期待されています。その一方で、貧困対策であれば、所得制限を設けるべきではないかとの意見もあります。どう考えればよいのでしょうか。「所得に関係なく給付する」ということであれば、最近、「ベーシックインカム」という考えが話題になっています。ベーシックインカムとはすべての市民に生活保障として一定額の現金を給付するというもの。耳新しい政策ですが、「所得に関係なく支給する」ベーシックインカムについて学ぶことは、現在の社会保障制度の問題点を考えることにもつながりそうです。また、子ども手当や子どもの貧困にもかかわってくるのではないかと、今回の研究会が企画されました。 講師は、ベーシックインカム研究者である埼玉県立大学助教、堅田香緒里さん、市民の立場からはNPO法人ハンズオン!埼玉・常務理事の西川正さんです。当初、民主党の政策担当者を招いて子ども手当のそもそもから学ぼうと企画していたのですが、国会会期中ということもあり、出席はかないませんでした。 《堅田さんの話》 堅田さんによると、ベーシックインカムとは「すべての個人に、その基本的必要を満たすに足る所得を、無条件で保障する政策構想」とのこと。無条件に一定額が給付されると言う点で、単純であり、効率的であり、スティグマを解消するなど、今の社会保障制度よりメリットがあります。というもの、現在の社会保障制度は、「働いて稼ぐ」ことを基本にし、それが困難な場合に社会保険や公的扶助等で対応するという仕組みですが、社会保険(年金や失業保険など)は、保険料を納めた人だけが給付を受けられ、公的扶助(生活保護)は実際に受給資格のある2割程度しか支払われていないという門の狭さで、社会保障制度からこぼれおちる人たちがたくさん出てきているのです。非正規労働や正社員でも賃金が低いなど、働いていても貧しい層が出現しています。また、母子世帯の7割が年収200万円以下で、子どもを持つ一人親世帯の場合、政府による介入が行われた後で貧困率が高まるという問題もあります。その背景にあるのは、男女の賃金格差や家事労働分担の不平等などです。こうした点の解消と言う点で、ベーシックインカムが新しい政策として注目されているということです。 ただ、ベーシックインカムは、お金の給付の仕方だけの問題なので、ワークシェアリングや育児休暇の充実、質が高く手ごろなケアサービス(保育など)なども必要とのこと。子どものベーシックインカムについては、大人よりその額を減額するという意見もあれば、保育のコストも含めるべきとの意見も出されているようで、子どもに与えられたベーシックインカムで養育者(母親等)に費用を支払うという構造ができると家族関係がもっと開かれたものになる可能性があることも指摘されました。 《西川さんの話》 NPO法人で働いている西川さんは、「『働かないと人として認められない』と言う社会の常識から生まれてくる障がい者などへのスティグマ(恥辱感)を乗り越える可能性がある点で、ベーシックインカムには強く惹かれる」とのこと。「『誰が食わせてやっていると思っているんだ』と暴力を振るうDV亭主 に逆らうこともできない状況に置かれた妻にとっては、基本的な所得が保障されたら逃げやすくなるのではないか」と、分かりやすい例を挙げてくれました。 子どもに引き寄せて考えると、子ども手当という現金給付と現物給付をどう考えるかという論議になりそうです。西川さんは、「あえて優先順位を考えるとすれば、子ども手当ではなく現物給付ではないか」と断言。その理由として、今の子育ての現状を挙げ、経済的に豊かであっても貧しくても、孤立した子育てになっていることの問題点を指摘しました。「その孤立を防ぐために『場』を用意する必要があります。その場は、子どもが家族以外のいろんな大人にかかわることになります。子育ては本来、いろんな大人の手が必要。いまはそれができにくい。例えば、保育所を増やし、保育士の処遇をよくして余裕を持たせ、保育士がじっくりと親の声を聞けるような環境にする。子育て広場も増やす。そうすれば親同士の助け合いも出てくるし、子育ての喜びも感じられるようになります。現金か現物かどちらかを先にやるとすれば、子育て支援者に投資する方が『子育てしてよかった』と思える親は増えるのではないか」と主張されました。 《フロアからの意見》 フロアから、様々な意見が出されました。要約すると以下の通り。 ○子どもに対しては現金給付より、母親の育児不安を解消させるようなサービスこそ必要。 ○母親がなんとか頑張ろうとする双子では虐待の恐れがあるが、3つ子になると周囲のバックアップ体制が整って虐待はなくなると言われており、子どもは1人でも周囲のバックアップが大事。 ○子ども手当はばらまきではなく、社会保障の考え方を変えようと問いかけているのではないか。デンマークでは、大学生に7~10万円程度の生活費を支給するというベーシックインカムに似た仕組みが導入されている。それは将来の納税者を育てるという意識。子ども手当は、母親の子育てという労働に対する給付という考え方でもよいのではないか。 ○現物給付も現金給付も大事。社会保障だけなぜ財源を気にするのか。所得税の累進度をあげることによって財源を確保することもできるのではないか。 ○ベーシックインカムの導入は難しそうだが、給付付き税額控除は実現できるのではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 2, 2010 06:00:00 PM
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