初対面でこんなに胸が うずくなんて
週に3回、注射をしにくる鎌田さん。
明らかに、その筋のお方。
運転手や、部下みたいなのを5人は連れてくるんです。
鎌田さん、すごい彫り物がはいってるわけ。
手首まではいってるわけ。
最初に、部下があたしに聞くわけ。
「社長、来てます」
どこの社長やねんっ。
ジャパネットのタカタ社長かいっ。
部下 「社長、ご存知のように、イラちですから、
よろしくね、看護婦さん」
看護婦やないけど、看護師なんやけど。
5分後、鎌田さん入場。
携帯しながらの入場。
鎌田さん 「どっへっへへへ。そうでっかぁ、
せやけど、あのブツはイマイチでんなぁ」
あのブツ・・・・。
拳銃密輸?
あやしい薬?
そんな詳細不明の鎌田さんが、ハマってること。
出会い系サイト
鎌田さん 「あのな、この子、まだ18才なんやで」
携帯に保存されてる写真。
あきらかに、あっきらかに、
アラフォー
いや、
アラ50
あたし 「鎌田さん、言うちゃなんやけど、
この子、いや、人、
おばちゃんですやん」
鎌田さん 「そうけ? 18ちゃうけ?」
はい。
18才の子供がいてるんちゃいますか?
鎌田さん 「ま、ええねん。
めっちゃ、優しいねんで、この子」
せやから、子 やなくて、人、
あえて言えば、おばちゃん。
鎌田さん 「わしらなぁ、この仕事やってるとな、
人から優しくしてもらう、
ないわ、皆無やわ」
せやから、この子、いや おばちゃんに惹かれたのね。
鎌田さん 「ほな、注射してや」
あのね、鎌田さん、
その刺青で血管わからんねん。
腕の真ん中の正中静脈には、
竜の牙が邪魔してるし、
手首の血管にも、
竜の吐いた炎が邪魔してるし。
鎌田さん 「どや?いけるか?」
いきますよ、いかなきゃ、
セメント詰めにされて大阪港に沈められそうやもん。
前に、他の看護師が注射に失敗して、
鎌田さんの部下に、外に連れ出されたん、
しっかりと見てますから。
この脳裏にやきついてますから。
鎌田さんが来る日は いつも あたしが夜勤の日・・・・。
いまだ、ミスなし。
もし、あたしが忽然と消えたら、
大阪港を探してね。