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夏は好きだ。泳ぎも苦手で生粋のインドア派だけど、それでもやっぱり夏はいい。フルーツも豊富だし夏野菜だっておいしいしハモの季節でもあるし……食いもんばかりになってしまったけど、寒いのが大の苦手なボクにとっての夏は、遠洋漁業のヒトが女の股ぐらに憧れるのに匹敵するほど待ち焦がれているのだ。
しかし、唯一ボクを悩ませるあいつが、また今年もやってくる。 「マスター、何か一杯作ってくれよ。」 「おまえに飲ませる酒なんか置いてるか! とっとと帰れ!」 あいつはボクがぶちまける水をさっと除けると、「ごあいさつだなあ。久しぶりなのに」そう言って脂ぎった日焼け顔にふっと嫌味な笑みを浮かべながら店を去った。 ボクは煙草を吹かし、顔を歪めた。 また今年も、あいつに悩まされるのか……。どうして夏になるとやってくるのだろう。真冬にあいつを見かけたという噂が耳に入ることも時にはある。しかし、それはあくまでも噂。実際にボク自身が見かけたわけではないのだ。いったいあいつは夏以外の季節をどこで過ごし何をして生きているんだろう。 素早い身のこなしが癇にさわるあいつ。住んでるところも歳も、家族構成だって、名前さえも知らないあいつ。それでももう、数十年の付き合いになるのだ。あいつの仲間にオナニーを見られたことだってある。うちのオカンの入浴を覗いたという前歴まであるのだ。 何度も殺意を抱いた。いや、実際に実行に移したこともある。しかし、あいつはスーパーマンのように絶対死なない。それとも、同じ姿をしたクローンが無数にいるというのか。 悔しいが、不死身という称号がぴったりなあいつ。 また今年もあいつがやってくる。 大好きな季節を迎えるボクを、唯一不機嫌にさせるあいつ。 人類よりもはるか昔から生存しているというあいつ。 早く絶滅しろ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/06/26 02:09:07 PM
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