今日の目覚め
ぼくのウコンはどこ行ったぁーっ!気がついたらそう叫んでいた。どうもぼくの最近の精神状態は非常にけったいである。一昨日は飲みすぎたので昨夜は絶対に酒を飲むまいと決めていた。店が驚くほどヒマだったのでちびりちびりとウーロン茶を飲んでいると、常連がひとり入ってきた。「いやあ、貸切っスねえ!」「ふん、うるせえよ」「マスターヤケ酒っスか?」「ヤケウーロンじゃ」なんだかやけに機嫌がよいそのハイテンション常連は、ぼくの目の前でバーボンのロックをぐびぐびと飲みはじめた。「なあ、そんなにうまそうに飲むなよな」「へっ?」「だからぁ、酒はそんなにうまそうに飲むもんじゃないっちゅうてるんじゃ。キミはもっと人の気持ちというものを考えにゃあならんぞい」「バーで酒飲んじゃいけないってことっスか?」あのな!とひと言、ぼくはカウンターを乗り越えて常連の横にドンと座った。そして、「だいたいキミね」とぶつぶつ言いはじめた。それをウーロン茶片手に言うもんだから、酒も飲まずに何言ってんのと相手も対抗してきた。「飲んでやろうじゃねえか!」またやってしまった。今日は飲むまいと決めていたはずなのに。「そろそろ帰ります。今日はマスターのおごりね」飲み逃げの常連の二重になった後ろ姿を眺めながら、ぼくはカウンターに突っ伏していった。ぼくのウコンはどこ行ったぁーっ!誰もいない店内の朝方、ぼくはそう叫んで目覚めた。どうも最近ぼくの生活動向は非常にけったいである。