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テーマ:レンタル映画(818)
カテゴリ:映画
キャンディマン 監督/バーナード・ローズ 原作/クライヴ・バーカー 主演/ヴァージニア・マドセン、トニー・トッド
アラスジ:口承伝説を研究する大学院生ヘレンは“キャンディマン”の伝説を耳にし、興味を惹かれる。それは鏡の前でその名を5回唱えると、背後からキャンディマンが現れ惨殺されてしまうと言うものだった。非現実的都市伝説と否定しつつも、好奇心につられて唱えてしまうヘレン。その場ではキャンディマンは現れなかったが、その魔の手は…。 先日行った美容院で、初めてのスタイリストさんにカットして貰った時のこと。 なんとなくぎこちなく会話を続けていたが、趣味についての話題から、映画の話になった。 当り障りの無い映画の話が、ひょんな事からホラーに。 そのスタイリスト氏、ホラーオタクだったようでして。 当方、ホラー映画は全く見ないものの、若かりし頃、クライヴ・バーカーの『血の本』シリーズに嵌っていた時期があった。 その話をしたら、まぁ、食いつく食いつく。 今まで、この手の話を振って反応する客は、殆どいなかったらしい。 そりゃそうだ。美容院で血の美学なんて話をする客と店員、フツーはいないもんな。 私が、まずそう言う話題に反応しそうも無いもっさい外見のオバチャンなので、余計に驚いたみたい。 で、思わずレンタルしてきたのがこの「CANDY MAN キャンディマン」 本当は、クライヴ・バーカーの原作を読みたかったのだが、少し前に売っ払って仕舞ってたんだよね。 血の本のシリーズ、殆ど揃えてたのに。慙愧の念に苛まれる。 辛うじて2冊ほど残っていたが、このキャンディマンの原作である「禁じられた場所」は収録されていないし。 まだ売れ残っているようだったら買い戻そうかなぁ、とアホな事を考えてしまっているw と、前振りがまた長くなってしまったが、閑話休題して本題へ。 バーガーの作品の中でも印象と完成度が高いこのキャンディマン、ホラー映画と食わず嫌いをする人間にこそ是非見て頂きたい作である。 そもそも、原作が凄い。 クライブ・バーカーが出て来た時は、そのホラーを越えた異形の美の世界に、多くの人々が衝撃を受けたものである。 この「キャンディマン」以上に有名な「ピン・ヘッド」もそうだが、おぞましくも理解不能な異界の存在を語っている筈なのに、彼の筆致は何と魅惑的な事か。 その血は、腐敗寸前の果物のように甘く馨る。 内臓と脂と血で彩られた吐き気を催す光景なのに、どこか聖なるものすら感じさせるのだ。 また、斬新なアイディアにも度肝を抜かれた。 頭部全体に針を突き刺したピン・ヘッドや、惨殺死体を車内にぶら下げて夜の闇を走るミッドナイト・ミートトレイン。 こんな設定の話は、当時は無かったと思う。“先ず、クライヴ在りき”だった訳だ。 この映画のキャンディマンも、およそホラーのダークヒーローの雛型からはかけ離れた姿かもしれない。 ジェイソンやフレディのような、いかにも悪を為すのに相応しい醜悪な怪人ではない。 蜜のように甘い声の魅力的な黒人の姿で、その鉤のついた手を血に染める。 何故ならば、彼にとって、殺人とは単なる悪事ではない。 彼キャンディマン、つまりバーカーにとって、死は全てを否定する事と同時に、全てを受け入れる事なのである。 形ある肉体を切り裂くのは、更なる上の世界=人々の悪夢の記憶の中に転生させる為の行為なのだから。 そして、激しく苦痛を伴う破壊こそが、より強固な存在=伝説に到らしめる為には必要不可欠なのだ。 それを為すものを、果たして単なる“悪”と片付けて良いのだろうか。 そこには、キャンディマンの“愛”も確かに存在しているのだから。 だから、キャンディマンは誘う。 甘い声で。 彼は、もう1つの世界への誘惑者なのだ。 “悪夢”と言う、彼の愛の世界への。 原作を読んだのが激しく大昔の上、手元に無いので明言は出来ないが、概ね原作に忠実に作られていると思う。(ただ、ラストが一寸違ったような気が) 原作の悪臭と甘い匂いが渾然とした感じまでは再現出来てはいないが、安っぽいホラーに走っていない演出にも好感が持てる。 哀愁を感じさせる音楽が、単なる惨殺ホラーではないこの映画を、より盛り上げてくれている。 誘惑され揺れ惑うヘレンも美しく、物哀しい。 キャンディマンが出現した経緯と、ヘレンに固執する訳が判ると、彼女の慄きの甘美さがより深く共感出来よう。 因みに、アヴォリアッツ映画祭で、主演女優賞・音楽賞・観客賞を受賞している。 さて、件のスタイリストくん、異様な盛り上がり方をしつつも、大変良い感じにカットを仕上げてくれた。 そして、帰り際に「次回には、もっとネタを仕込んでおきますよ」とニッコリ。 それは、まぁ、うん。良いんだけどね。 我々を遠巻きにしていた他の店員さんの目が。 この次は、彼を指名すべきか迷っているw そう言えば、美容院には鏡が付きもの。 もし、その前で5回名前を唱えたら。 「キャンディマン、キャンディマン、キャンディマン、キャンディマン」 さあ、もう1回… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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