「どうしました…私の腕を折る事は出来ませんか?」「…」自分より、体重が30Kgは軽いと思う男の腕が…鋼鉄の様に硬い!「それでは…こんなのはどうでしょう?」師範はそう言うと、今度は両手を頭上高く上げた。「私を好きに投げて下さい」「…(何ッ)」クソッ!馬鹿にするのもいぃ加減にしろッ。空手の技とは関係ないが、俺は師範の後ろに回り、胴の部分を後ろから手を回し、前でガッチリロックした!ジャーマンスープレックス…プロレスの芸術品と言われる技だ!俺はこの技で、思いっ切りこの男を、板の間に後頭部からぶつけてやる。この技が決まれば、かなりのダメージを受けるはず!いや…打ち所が悪ければ、死に至る危険な技だ!しかし…この時の俺は冷静さに欠き、技を決めた後の事など、考える余裕などなかった!息を吸い…渾身の力を込めた。「うぉりゃあぁぁぁ…ッ」ありったけの力を出した…つもりだった。全身に汗をかき、俺は激しく呼吸が乱れ…何故だ?何故ビクともしないんだ?まるで師範の足に、根でも生えているかの様に、微動だにしない…。俺は70Kg程度の男を、投げらずにいる自分に…猛烈に腹が立った!