以下、辞書から引用
~来歴・人物~
1983年、ナショナル・リーグの審判員となる。
1999年、メジャーリーグ審判の労使紛争でリーグ側に強硬な態度をとったためにメジャーリーグを解雇されたが、2005年に復帰した。2006年に開催された第1回WBCの2次リーグで、 アメリカ - 日本戦の球審、メキシコ - アメリカ戦の一塁塁審を務め、いずれの試合でもアメリカ側に有利となる疑わしき判定を行ったことから話題となった。WBC開催時にはメジャーリーグのアンパイアリングスタッフからは外れていたという。
千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督(元レンジャース及びメッツ監督)によると、「彼にはボーク・ボブ・デービッドソンというニックネームがあるぐらい、自分を目立たせるためにボークをよくとる審判だ」ということである。デービッドソンは通算61個のボークをコールしている。ロイヤルズのトレイ・ヒルマン監督(元北海道日本ハムファイターズ監督)もまた、マイナー時代に判定を巡って対立していた。
もともと誤審または微妙な判定を下すという評判があるが、2006年からメジャーリーグ復帰が決定しているため、WBCの審判員を務めていると言われている。また、それゆえにアメリカ側に有利な判定をしているのではないかという疑いも持たれている。その一方で、WBCでの再三にわたる誤審は視力の低下が原因ではないかという説もある。
アメリカ代表の主将としてグラウンド上にいたデレク・ジーターは後にデービッドソンの誤審問題について尋ねられた際、「そのことは、覚えてないぞ」と苦笑いしていた。
なお、以下本稿での試合日時等はすべて現地時間で表記する。
~過去のドラブル~
1992年10月20日、ワールドシリーズ第3戦、トロント・ブルージェイズ - アトランタ・ブレーブス戦で、ワールドシリーズ2例目となるはずだった三重殺を誤審により未遂に終らせている。無死一・二塁(一塁走者テリー・ペンドルトン、二塁走者ディオン・サンダース)で、打者デイヴィッド・ジャスティスの大飛球をセンターのデヴォン・ホワイトがフェンスにぶつかりながら後ろ向きで捕球。一塁手のジョン・オルルドへ返球した。(しかし大きく飛び出していた一塁走者ペンドルトンは二塁走者サンダースを追い越しており、既にアウトになっていた)。一塁手オルルドはすぐさま三塁のケリー・グルーバーへ送球。グルーバーが二・三塁間で立ち止まっていたサンダースを追いかけて踵付近に触球、三重殺を完成させたかに見えた。しかし、塁審を務めていたデービッドソンがサンダースへの触球を見落とし、セーフと判定。なお、試合後にリプレイを確認し、このジャッジが誤りであったことを認めた。
1998年9月20日、マーク・マグワイアの66号ホームランと思われた打球をデービッドソンは二塁打と判定し、“史上最低の誤審”又は“世紀の大誤審”とバッシングを受けた。これは、観客がフェンス手前に乗り出して打球に触れた妨害行為があったためとされ、この観客は退場処分を受け、罰金を払わされた。しかし、妨害者とされた観客は無実を主張し、法廷に訴えた[2]。当時、マーク・マグワイアとサミー・ソーサは、激しいホームラン争いをしていた。最終的な本塁打数はマグワイア70本、ソーサ66本。
2008年5月18日のヤンキース対メッツ戦で、メッツのカルロス・デルガドの左翼ポールに直撃した打球を、三塁塁審が一度は本塁打と判定したが、ヤンキースの抗議を受けて主審のデービッドソンはファウルに変更した。
~2006WBCの判定問題~
2次リーグ アメリカ - 日本戦
2006年3月12日、WBC2次リーグAブロックのアメリカ - 日本戦の同点で迎えた8回表一死満塁で、岩村明憲(当時東京ヤクルト)が打ち上げたレフトフライを受けて西岡剛(千葉ロッテ)が三塁からのタッグアップを行った。西岡は送球が捕手に渡るよりも早く悠々と本塁に到達した。
しかしアメリカチームは「西岡の離塁が早すぎたのではないか」とアピールした。4人審判制で一死満塁の場合、レフト方向への飛球は三塁塁審が追うため、三塁のカバーは二塁塁審が行うことになっている。今回も三塁塁審は三塁を離れて左翼手ランディ・ウィンの捕球を確認、アメリカチームの三塁手のアピールに対して離塁と捕球を両方見ていたブライアン・ナイト二塁塁審はセーフ(正規のタッグアップを行った)と判定した。しかし、アメリカのマルティネス監督の抗議を受けた球審のデービッドソンは「この場合の判定権限は球審である自分の領域だ」とし、自らの判断で判定を訂正、三塁走者の西岡をアウト(離塁が早い)とした。
公認野球規則では、どのような場合であれ、1度審判員が下した判定は最終のものであるから、裁定を下した審判員から相談を受けた場合を除いて、他の審判員が判定に批評を加えたり、訂正を求めたりしてはならないとしている。日本は、主催者側に判定の訂正に対する質問書と、第2回大会は全参加国から審判を出すようにするようにという要望書を提出。主催者側は審判員の判定は正当であるとした。主催者側の回答に納得できなかった日本は再度質問書を提出した。
2次リーグ メキシコ - アメリカ戦
2006年3月16日、2次リーグAブロックのメキシコ - アメリカ戦で2回表、アメリカの攻撃で無死一塁(走者アレックス・ロドリゲス)でバーノン・ウェルズが左翼に飛球を打ち上げた。左翼手が走り込みながらウォーニングトラック前で捕球し、中継の遊撃手へ、遊撃手から一塁手へ送球された。ロドリゲスは左翼手捕球時、二塁付近におり、そこから一塁にスライディングしながら帰塁した。遊撃手はアウトを確信しガッツポーズをしていたが、一塁塁審のデービッドソンはこれをセーフと判定した。このプレイについては、「リプレイのビデオによるとロドリゲスの帰塁よりも一塁手の触球が早かったように見える。判定はアウトではないのか」という意見もある。
さらに3回裏、メキシコの先頭打者マリオ・バレンズエラがロジャー・クレメンス(アストロズ)から放った打球はライトポール際に飛び、直接ポールの中ほどに当たって大きくフェアグラウンドに戻ってきた。打球が直接ポールに当たったのであれば本塁打であるが、一塁塁審のデービッドソンは「ホームラン」の宣告をせず、これをインプレイとした(当然ながら、フェンスを高々と越えている時点でインプレイという判断はありえない)。メキシコは激しく抗議したが、マウンド付近に審判団が集まって協議した結果、責任審判であるデービッドソンは二塁打を宣告した。メキシコはさらに、ボールに付着していたポールの黄色い塗料を審判団のみならずTVカメラにも向けるなど強くアピールしたが、結局判定は覆らず、無死二塁から再開された。
このプレイはスタジアム内のスクリーンに何度もリプレイされ、その判定が「誤審」としか見られない状況が映し出されたことで場内は騒然となった。また、アメリカのメディアでも疑惑の判定(「カリフォルニアの陰謀」)と批判的な報道がなされた。また、「今大会のMVPはボブ・デービッドソンだ」、「この大会はワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic)ではなく、ワールド・ボブ・クラシック(World Bob Classic)だ」と揶揄する声もある。
前日にディズニーワールドで遊んでいたメキシコチームだったが、この判定に大奮起。ホルヘ・カントゥがタイムリーヒットを打ち先制点を奪う。5回裏にも追加点を奪ったメキシコは、バレンズエラ、ビニー・カスティーヤ(ナショナルズ)等の好守と緻密な8人の継投で2-1でアメリカに勝利。この結果、1勝2敗で日本、アメリカ、メキシコが並ぶことになったが、失点率の1番低かった日本が準決勝に進み、アメリカは2次リーグ敗退という皮肉な結果となった。試合後、メキシコのフランシスコ・エストラダ監督は「球場全体が本塁打だと思ったはずだが、審判だけがそう思っていなかった」と皮肉を交えてコメントした。HRを放ったバレンズエラも試合後、「あの細長い物がフェンスに見えたんだろう」と皮肉を交えたコメントをした。前述の日本戦の判定に続いて、野球発祥国であり大会主催国でもあるアメリカを意図的に勝たせようとした判定とも取れる誤審が続いたためか、同じくメキシコ代表選手のゴンザレス(エイドリアン・ゴンザレスか投手のゴンザレスのどちらなのかは不明)は試合後「我々が次のステージへ進むことは適わなかった、しかし残されていた最後のもう1つの椅子に座るのにアメリカはふさわしくないチームだった。我々が日本をその席につける力になれたのなら幸せだ。」というコメントも残している。また先述のMVP云々の話も、このメキシコチームの大奮起を促しアメリカチームを敗退させたことへの皮肉でもある。
以上