ディズニーの企業理念から成功についての考察
1 顧客が比べる全ての企業が競争相手 顧客の満足度を上げている企業なら、全てが競争相手になります。貴方の会社より顧客を満足させている会社があれば、顧客は二つを比較して貴方の会社に不満を抱くようになるからです。例えば電話一つでも、同じ業種だけと顧客は比較するのではなく、経験した全ての企業と比較して不満であるか、満足であるかを感じるのです。2 細部にこだわる ここに来る目的は人によってそれぞれです。お目当てのアトラクションがある人もいれば、ここの雰囲気が好きだという人もいるでしょう。あるいは子供の頃にかえりたいと思って、やって来る人がいるかもしれません。ここに来る度に新しい発見があれば、また来ようと思います。同じ物を見ても見る度に新しい発見がある、それを楽しみに何度も足を運ぶ人達もいます。我々はその小さな発見が大事だと思っています。どんな細かい事もおろそかなしない理由はそこにあります。建物、絵全てにこだわっていたら、はたして経営的な問題があるのではないか。そう思われるでしょう、確かにどこの会社にも限られた資金という制限があります。しかし我々の違う所はゲストに喜んでもらう為に惜しみなく経営資源を投入する事なのです。次に細部にこだわると言っても、実際に数えあげたらキリがない。どこに的を絞りどうやって決めるのか。それはイマジニアリングと呼ばれるプロセスから始ります。まずあらゆる可能性を検討して、一番いいアイデアを選び設計図を書き、建設にとりかかるのです。3 全ての人が語りかけ、歩み寄る皆さん自身の会社について考えてみてください。顧客と接する機会があれば、それは全て価値を創造するチャンスなんです。そのチャンスを活かせば競争に勝つし、チャンスを棒に振れば負けるのです。実に単純な事です。我々は不思議な国に迷い込んだような経験を皆さんにして欲しいと思っています。目一杯楽しんで欲しい。その為には出来る事はなんでもすると思っています。しかし口で言うだけなら駄目です。行動に出ないといけない。お客さん側からすればキャストとふれあう全ての瞬間を魔法の瞬間にしないといけないのです。キャスト全員は魔法の瞬間を演出する機会を心待ちにしているのです。キャスト全員がフレンドリーに行動します。顧客担当者だけが苦情を処理するというのとは全く違います。全員が語りかけ、歩み寄ります。経理担当だろうが監督だろうが例外はありません。従業員をキャストと呼んでいます。経営陣までもです。普通は「勝手な事をやるな、言われた通りにやれ」と言うのが伝統なんだが、ここでは「皆の心はひとつ」と言うのが伝統になっています。4 全ての物が、語りかけ、歩み寄る ごみ箱一つにしても、設置場所の雰囲気にあわせて作っています。音楽も朝、園内に入った時耳にするのは、心が浮き立つような音楽です。キャストはあふれんばかりの笑顔で陽気にゲストを迎えます。しかし夕方になると、シットリとした音楽に変えています。キャストも静かに落ち着いて行動するようにしています。ゲストの幸福感を高め、満足感を深めるように、来てよかった是非また来たいと思ってもらえるように、音楽を選びます。しかし、音楽に氣がつくゲストは実際は殆どいないはずです。氣づいてもらえれば、それにこした事はありませんが、それより重要な事があります。ウキウキした気分で園にやって来たのに、物憂い顔をしたキャストに迎えられたらどうでしょうか。日が暮れかかって帰って行く時に、陽気ではしゃいでいるキャストを見たらどうでしょうか。ゲストの気持ちになって全てを考えていかなければならないのです。5 耳が多いほど、顧客の声はよく聞こえるゲストが受けた印象をすぐその場で、全ての記憶が新鮮なうちに記憶する係りがいます。1日中園内を歩き回って、ゲストが本当に楽しんでいるかどうか確かめるのです。一週間に7百から千4百人のゲストの調査をします。調査結果は毎週集計され、ただちにキャストに伝えられます。ゲストを100%満足させる目標に少しでも近づける為に。ただ調査もまた、語り掛け、歩み寄って来るようにしなければなりません。楽しい気分に水をささないように、まるでゲストがスターでインタビューをうけているような錯覚に陥るような雰囲気を作れれば、真剣に質問に答えてくれるのです。さらに全てのキャストがゲスト満足の為に、心掛けていればそれは凄い力になるのです。 情報のアンテナには幾つか種類があります。1 ひとつはその日その場の行動に直結する情報の収集です。今日が誕生日だと知ったらケーキを用意したり、新婚旅行と知ったら花束を贈ったり。何かを聞いたら直に行動に移します。問題が発生したり、ゲストの期待に十分応えられない場合は、原因を突き止め二度と同じ問題が起こらないようにします。2 もうひとつは、ゲストの満足度を調べる為の情報収集です。情報源はひとつだと偏ったものになります。手紙・電話・直接の対話等様々な角度から検討する必要があります。6 報い、認める キャストも人から認められたいという、人間の根本的な願望を持っています。社員の功績をきちんと認めるシステムが必要です。 サービスの基準として五つのものがあります。 1 常に相手の目を見て、笑顔を忘れない 2 ゲストの期待を上回る仕事をし、ゲストとの触れ合いを求める 3 常に最善のサービスを提供する 4 全てのゲストを心から歓迎する 5 最善を尽くし、妥協をしない チームワークには四つの基準があります。 1 与えられた仕事以上の事をする 2 協調精神を忘れない 3 ゲストや同僚と積極的にコミュケーションをはかる 4 ゲストに魔法をかけ続ける ここでのポイントはミスを指摘ばかりしていては、キャストの士気はあがらないという事です。叱る回数が褒める回数の三倍もあれば士気は絶対上がらないのです。たいした事をやっていなくても、人から感謝されたり褒められたりすれば、誰だってうれしい。けなされたり怒鳴られたりすれば、誰だって良い気持ちはしない。それは皆わかっている。ところが良い事をしても何の反応もなかった時どんな気持ちがするか、殆どの人は良くわかっていないのです。ここも重要なポイントです。何をやっても無視されれば何もやる氣がなくなっていきます。評価なしの恐ろしさを肝に命じていて下さい。人の功績はきちんと認めて下さい。自分の身内だけではなく、他の部署、取引先もそうです。問題はその人との関係ではありません。その人の功績、貢献を認めるという事が大切なのです。そうする事で士気が上がるだけではなく。顧客の満足度も上がるのです。ここは盲点です。人間というものは、自分が扱われているように他人を扱うのです。従業員の満足感と顧客の満足感は切っても切れない関係にあります。給料は水みたいなもので、それがなかったら生活できません。でも給料だけで褒められる事がなかったら元気がでません。身体は動いても心が萎えてしまいます。上手くここのポイントを取り入れる必要があるのです。7 誰もがキーパーソン自分1人位何もしないで良いとは思わない事。かかわる全ての人材が重要な戦力であるという事を認識し、認識してもらう事が大切でなのです。忘れてはならない事が三つあります。一つは全く失敗しない会社は、何も新しい事をやろうとしていない会社です。第二に様々な条件分析をやる事。第三に成功の副産物の・自信過剰と自己満足に囚われないという事です。勿論完璧な人間なんていません。誰だって過ちを犯すのです。ですが失敗を避けようとしていたら長期的な成功はありえません。犯した過ちをどれだけ早くただせるか、それが問題なのです。 園内で一寸面白い事がありました。アイスクリームを手にしたまま、おしゃべりに熱中している女性がいました。カモメが急降下して来てアイスを地面に落としてしまったのです。そのアイスにたくさんの鳥が群がってしまいました。それを見ていたキャストは、アイス売り場に出来ている列の一番前に案内し、新しいアイスを手に渡したのです。この件はキャストがミスを犯したのではないのですが、あっという間に見事に問題を解決したのです。このプロセスをサービスの復旧と呼びます。予想以外の事が起こった場合に、問題を処理する為にキャストはどんな事でもします。ゲストが不愉快な思いをしたまま、その場を立ち去らないように出来る限りその場で埋め合わせをして不快感を消し去るよう努力します。これはファンを維持する為に極めて重要な事です。キャストの意気込みを高める事にもなります。他の全ての事と同じように信頼の回復に大変な時間とエネルギーを使います。それはそうするだけの価値があるからなのです。 まとめ ゲストが何もかも忘れて楽しみ、片時も魔法からさめないように、知恵を絞り工夫をこらし、情熱をかたむける。本当はどんなビジネスであってもそうでなくてはいけません。私達の全てが、人々の夢をかなえる仕事をしなくちゃあいけないのです。 何年か前にある担当させていただいている薬局さんが、ディズニーにキャストの態度から学ぶものがあるので行って来ますと言われた事を思い出します。確実に患者さんの心をつかまれている先生方の共通した信念が、この中に含まれているような気がしました。