五行と食養のおはなし 藤本肇先生
これからの百年の漢方道を伝えてくれる人の為に藤本久子奥様か復刻されました本より抜粋させていただきました。私(阪本)自身、藤本肇先生に出会い大きく人生が変わったと感じています。漢方的に見た人体構造上焦・中焦・下焦現代生理学の考え方と漢方的な考え方とは大きな違いがあります。漢方では人間の体を、上焦、中焦、下焦と三部分に分けて考えます。その働きは、上焦......入れて出さず 中焦......治める 三焦(水穀の道路)下焦......出して入れずすなわち現代の消化器のことを指し、同時に臓腑の部位も合せて考えているのです。 上焦口から胃の噴門(入口)までをいい、胸部の肺、心が臓として属しています。肺は心臓を覆い、常に肺呼吸によって外界での、いろいろの変化を間接的に心に伝え、又、肺の所属機関である皮膚も呼吸することによって毛細血管に伝えて、内外から血液の循環の変化を体内に伝え、外界に即応出来る様になっています。肺と心の共同作業各個別にいえば、心は臓であり、その腑は小腸です。肺は天の気を呼吸によって体内にとり込み、皮膚は太陽の熱エネルギーを吸収し肺の働きを助けます。肺は臓であり、大腸はその肺です。肺と皮膚で吸収した天の氣は大地に育った穀物を氣と合して生命活動を営んで行くのである。大腸はその滓を大便として排泄します。上焦は天の氣を、中焦は脾、胃、肝、胆らがあって、胃は飲食物を摂取して消化が行われます。これが合わさり生命活動のエネルギーの源として血に入り、全身を循環して臓腑に栄養を補給します。活動力を与え、余分なエネルギーは汗となり滓は大小便となって排泄されます。汗は心の液であり、梯(はなみず)は肺の液です。人間は母なる大地からこの世に生を受けた時、初めて呼吸をしますが、これを"後天の氣"と呼んでいます。それに対して"先天の氣"とは、精子と卵子が結合し、母体からヘソの緒を通じて栄養を受けて成長していく。この親から受けついだ氣を"先天の氣"と言います。そしてヘソのところには心の腑である小腸が存在します。もし上焦の働きに異常が生ずると、氣、血の運行に障害を起こします。これは心、肺の出張部位である血脈と皮毛とがその働きを弱め、汗腺に異常を生じ悪寒とか発熱などの症状を起こすのであり、風邪などは主に上焦の機能の低下によって起きるとされています。顔に肺の働きの現われるところは鼻です。心は舌です。肺にかるい異常が起きると、鼻水を出し、クシャミをするようになります。鼻づまりも起きます。 中焦上焦の働きを正常にするのが中焦です。その範囲は主に胃を中心とした部位。胃の噴門から出口である幽門までを指しています。脾臓と胃、肝臓と胆嚢は中焦に属する臓腑。飲食物は胃で消化され、脾はその精気を受け肺脈に注ぎます。又、心の腑である小腸においても精気は吸収され脾に送られます。漢方で胃家ということは広義に解釈すると消化器全体を指すとも言われています。肝は血液を貯蔵するところであり、人体の血液量を調整する働きをします。その腑は胆のうであり、六腑の胃、小腸は飲食物を消化吸収し、大腸はそのカスである大便を、膀胱は小便を排泄します。三焦は消化吸収、排泄の作用が順調に行われるようにバランスを調えている。胆のうは濁りのない液、すなわち胆汁を貯蔵しているので、◇中焦は地の気を浄化して精気を受ける根本です。又、肝臓は筋肉と関係が深く、筋肉は血の養いを受けているといわれている。筋肉が異常に堅くなるのは血液がそこに充血して起るのです。肝臓は筋肉と関係が深く、筋肉は血の養いを受けています。筋肉が異常に堅くなるのは血液がそこに充血して起るのであって、肝臓の強弱でその変化が現われて来きます。さらに爪は筋肉の余りといわれ、筋肉の変化が爪に現われてくると考えられています。顔では肝の働きが現われるところは目です。色を分別するエネルギーを必要とするのであるから、肝が病むとその変化が目に現われることがあります。脾、胃は口唇にその働きが現われます。だいたい唇の厚い人は食欲が旺盛です。脾、胃、肝、胆が属す中焦の働きが衰えると、消化機能と血液循環(三つのポンプの中の一つが筋肉運動による)により氣、血の生成が低下します。 下焦胃の幽門から肛門尿道までを言います。下腹部、腎、小腸、大腸、膀胱などを含みます。腎は水をつかさどります。水とは人間の体液のことで、体重の60%。大人と子供とでは水分の量とその体内における分布には差があります。又、精を貯蔵するところであり、人間の生命活動と生殖活動に関係があります。"『素問』"に女子は7才で腎気の働きが活発となり、歯も生えかわり髪も長くなり、14才で腎気充実して月経が始まる。21才で体は女性として内外共に充実し、28才にして筋骨はひきしまり、毛髪が豊かになる。35才になると機能がそろそろ衰え始め、白髪があらわれ、49才にして月経が閉止するとあります。男子では8才で腎気充実して来て、16才で精子が充満して子を造る能力が出てくる。24才にして筋骨は強壮となり、体格が頂点に達し、32才で筋骨は最も盛んとなり体格も最盛期となる。40才にして腎気が衰え始めて脱毛が始まり、48才にして顔につやがなく活力が衰え、56才で筋肉が衰え精気欠乏して腎気が退化するとあります。腎臓の強弱によって体力の変化が体の客所に現われます。腎は骨と髄の成長発育と密接な関係にあり、精は髄を生じ髄は骨を養っています。頭部においては耳に通じ、腎に異常が起れば、耳鳴、難聴となることもあります。老人の難聴は腎の衰えです。膀胱は腎の腑であり、飲食物から生成された津液は心の腑です。小腸において血液に吸収され、余分な津液は腎から膀胱に送られて尿として排泄され、血液を通じて汗として体外に排出し、体内の水分を調節しています。肺の腑の大腸は、小腸で精が分別された残を体外に排泄する腑であり、肛門までを含んでいます。したがって下焦は、体内の栄養を吸収した残を量に応じて排泄。その結果健康を保っているのです。これらの考え方は、個別的にはむしろ西洋医学の方が比較にならないほど進歩していますが、絶対的な考え方として、その欠点を補う学問であるといえましょう。身体を使い過ぎると、脾、胃の働きが弱くなり疲労を感ずるようになります。遠足とか運動をし過ぎた時に、よく甘い物を食べると疲れが早く治ると言います。これは甘いものが脾、胃の働きを強め、気血のめぐりをよくするから。手足は脾、胃の支配下にあります。したがって疲れが早くなおるのです。