婦人妊娠病脈証併治第二十 1
婦人妊娠病脈証併治第二十 1 婦人の妊娠中に起きる病の脈と証と治療法 妊娠一ヶ月は足の厥陰肝経が、二ヶ月は足の少陽胆経、三ヶ月は手の厥陰心包経、四ヶ月はての少陽三焦経、五ヶ月は足の太陰脾経、六ヶ月は足の陽明胃経、七ヶ月は手の太陰肺経、八ヶ月は手の陽明大腸経、九ヶ月は足の少陰腎経、十ヶ月目は足太陽膀胱経がそれぞれ胎を養います。 子宮の経絡は腎経につながっています。腎経が弱い方は子宮も弱いということになります。六ヶ月や七ヶ月は子宮が充実している時期です。急におなかが出てくる時期でもあります。下腹に寒気が冷えているように感じるものは、子宮口に冷えが及んでいます。その場合は附子湯が良いのです。桂枝湯•(1) 師曰:婦人得平脈,陰脈小弱,其人渇,不能食,無寒熱,名妊娠,桂枝湯主之。(方見下利中。)於法六十日当有此証,設有医治逆者,却一月加吐下者,則絶之。読み・師日く婦人平脈を得、陰脈小弱其人渇して食す能わず寒熱無きは妊娠と名づく、桂枝湯之を主る。法に於いて60日当に此の証有るべし。若し医治に逆するもの有れば却ってひとつき吐下を加うるものは則ち之を絶す。解釈・師が日われるには、婦人の脈状が普段とかわりなく、唯尺中の脈が少し弱く、喉が渇いて食べる事が出来ず別に悪寒も発熱もないものを妊娠と名づけるのである。妊娠をすると表虚になり易いので、桂枝湯を主治するのである。妊娠した場合には、原則として60日たつとこの証が現われるはずである。もし妊娠をして30日以内に治療に誤りがあって、吐下を加えたものは、60日たっても妊娠の証は現さないのである。今までの血液の流れが胎児によって変わります、子宮に集まって皮膚のほうに少なくなって桂枝湯を使うということです。最終的に血液の力を与えることがどんなことより大切なことです。妊婦の風邪には桂枝湯です。初期の軽いつわりにも効果があります。表を補うと肝機能も良くなります。この時期に下したりさせると流産の心配もあるので注意します。桂枝茯苓丸 桂枝茯苓丸方: 桂枝 茯苓 牡丹(去心) 芍薬 桃仁(去皮尖,熬)各等分 解釈・婦人が普段から腹の中のしこりがあって、月経が止まって3ヵ月たたないうちに、おりものとか出血があって止まらず、胎動が臍の上にあるものは、古いしこりがあって妊娠を害している証拠である。妊娠して6ヶ月目に胎動するのは、月経が順調であった時の胎である。下血するものは、後の3ヵ月の滞ったお血であって妊娠ではない。下血の止まらないのはお血のかたまりが去らないからである。当然お血の塊を下してやれば良いのである。桂枝茯苓丸が主治する。 軽い子宮筋腫にも応用します。3ヵ月ごとに出血する人は試す必要があります。下半身が冷え、のぼせが有る人に。月経不全、月経の前後にトラブルが起き易いタイプにも使います。のぼせに効果がなくなった時は、葛根湯で太陽によった熱を取って再び投与すると効くようになります。附子湯•(2) 婦人懐娠六七月,脈弦発熱,其胎愈脹,腹痛悪寒者,少腹如扇,所以然者,子蔵開故也,当以附子湯温其蔵。(方未見。) 読み・妊娠懐妊六七月脈弦発熱、其の胎イヨイヨ張り腹痛悪寒する者は少腹扇がるが如し、然る所以の者は子臓開くが故也、当に附子湯を以て其の臓を温むべし。解釈・婦人が妊娠をして六、七月たって脈が弓のつるのようにピーンとはって発熱し、その腹はいよいよ大きくなって、腹痛、悪寒のある者は下腹が扇であおがれるように冷える、それは子宮が冷えて開いているからである。当然附子湯で子宮を温めてやるのがよい。附子湯がなければ真武湯でもよい (少陰病薬を考慮して下さい) 風引いたら麻黄細辛附子湯をお考えください。 キュウ歸膠艾湯(4)師曰:婦人有漏下者,有半産後因続下血都不絶者,有妊娠下血者,仮令妊娠腹中痛,為胞阻,膠艾湯主之。 キュウ歸膠艾湯方:(一方加乾姜一両。胡氏治婦人胞動,無乾姜。) キュウキ 阿膠 甘草各二両 艾葉 當歸各三両 芍薬四両 乾地黄 上七味,以水五升,清酒三升,合煮取三升,去滓,内膠,令消尽,温服一升,日三服。不差,更作。 読み・師曰く婦人漏下する者有り、半産の後因て続いて下血すべて耐えざる者有り、妊娠下血する者有り、もし令妊娠腹中痛むは胞阻と為す、膠艾湯之を主る。解釈・師が日われるのには、婦人がおりものがあるものがあり、五、六ヶ月で流産をし、その後引き続いて下血が止まらない者がある。もし妊娠して、下血して腹の中が痛むものは、胞阻である、胞とは子宮をさすのではないであろうか、阻は妨げるの意あり、胞中の氣が和せず働きが鈍っているのではないか、それには膠艾湯が主治する。阿膠は筋だとか骨に含まれているものです。わたしは血液の病気には阿膠・地黄と靈黄參を絶対に使います。地黄が入っている処方は胃中虚礼の方は、必ず温劑を併用しなければなりません。痔・鼻血・流産の出血・月経が止まらない方に応用できます。 當歸芍薬散(5)婦人懐妊腹中キュウ痛當歸芍薬散主之。 當歸芍薬散方 当帰三両 芍薬一斤 伏苓半斤(一作三両。) 茯苓四両 白朮四両 沢瀉半斤 上六味,杵為散,取方寸匕,酒和,日三服。読み・婦人懐娠腹中キユウ痛するは当帰芍薬散之を主る。解釈・婦人が妊娠をして、腹の中が引きつれるように痛む、キユウ痛は古釘が刺されるほどの痛み具合と言われている。當歸芍薬散が主治する。本方のポイントは腹痛にあり、猛烈に痛む者あり、割合に軽き者あり、本方証の病人は顔色悪い者多し、冷え性多し、便通は大抵普通か、又は下痢し易い者多。腹痛では柴胡桂枝湯は熱が原因、芍薬は水が原因の人に用いる。また陰気を補い血の滞りを治します。ただ血を治す事はできないのです。また月経痛、腎臓病にも水が原因であれば用いる。冷えの時は小青竜湯を用いる(外寒内水タイプ)血流障害で痛みがある。水の原因でひえがあるタイプです。出す陽気が少ない人です。利水剤と体の中と体表を温めて、血流障害を直します。体は水っぽいタイプです、月経痛や腎臓病にも使えますね。冷え胃に入ったら小青龍湯が使えるということになります。胃の弱い人は減じて服用させなければいけません。