若返り法
若返り法『いつまでも若々しく生きる』 いつまでも若々しく生きる心身統一の根本原則とは「心身の統一」こそが健康を保ち若返りの基本となる、と天風は説く。 〈心身統一の根本原則〉1 生命の生存を確保すること2 生命の生活を考えること 「1生命の生存を確保すること」というのは、心と体の両方を自然法則に背かせないということだ。では、心と体の自然法則とは何か。天風は、心の自然法則は「いかなる時でも、人生と生命に対して、絶対に積極的であること」という持論を述べ、一方の体の自然法則については、次の六つの条件をあげている。1.食べ物2.飲み物3.タバコと飲酒 4.運動と睡眠5.深呼吸6.皮膚の調整それぞれを簡単に見てみよう。1食べ物人間の体に必要な弱アルカリ性を保つためには、植物性の食べ物である野菜や果物を多く食べなければならない。動物性の食べ物では、血液が酸性化して、血管の硬化が早まったり、血圧が高くなったり、老化が促進したりするからだ。ただし、弱アルカリ性の食べ物を多くとったとしても、心の持ち方が消極的だと、血液が酸性化してしまう恐れがあるから注意が必要だ。2飲み物平常の飲み物にはお茶と水を天風は勧めているが、とくに緑茶はアルカリ分が豊富なためいくら飲んでも飲みすぎることはない、としている。また、寒いときには冷たいものを、暑いときには熱いものを飲むとよい、とも言っている。3タバコと飲酒どちらかといえば、タバコは吸わないほうがよく、アルコール類は飲みすぎないことだ。天風は、タバコもお酒も、あえて反対はしないが勧めることもしない、という立場をとっている。ただ、これも過度の摂取には反対している。4睡眠と運動睡眠も運動も、自然法則に従って、過不足のないようにすることである。睡眠は、人の活力の消耗度に応じてとるべきで、各人各様のもので一定すべきものではない。眠くなれば眠る。無理に眠ろうとするような不自然なことはしない。運動もしたいときにすべきもので、気分や体調が優れないときまで機械的に行うことは、自然の法則に反するとしている。5深呼吸新陳代謝の促進をはかるために、ときどき深呼吸することはいいことだ。その際、出す息を充分に出しておいてから、深く息を吸い込むことである。これが天風式クンバハ法の基本である。6皮膚の調整皮膚の病的な刺激に抵抗力をつけるために、冷水摩擦、冷水浴、冷風呂を実行し、皮膚の抵抗力を強くしたほうがいい。これは常に訓練するよう積極的に心がけることである。生命の生活を考えるとは?一方、もう一つの「2生命の生活を考えること」の条件として、天風は「心も肉体も、その可能率を促進することである」と説く。これはどういうことか。「心の可能率を促進する」というのは、心を使うときには必ず精神を統一することによって、心の積極的な働きを強くする、ということである。また、「肉体の可能率を促進する」とは、体の抵抗力や耐久力を高めるために訓練を積極化する、ということだ。訓練を積極化するというのは、「習うより、慣れよ」と言われるように人間の生命にある自然性を応用したもので、その習慣性を応用して強い肉体をつくることである。以上の「心身統一法」の根本条件を実行すると、心と体が結合統一される。その結果、次の六つの生命力が増大する、と天風は言っている。1.体力 2.胆力 3.判断力 4.決断力 5.精力 6.能力 ここで注目したいのは、天風は第一に「体力」をあげていることだ。体力があってこそ、思考力などの能力が発揮される--そんな思想が示されていて、いかにも天風らしい主張だといえる。心身を統一すると、この六つの力が増大してくる。そればかりか健康の運命も良好に向上してくる。その結果、「病」「煩悶」「貧乏」という古今東西で人生の三大不幸とされることから自然に縁が切れ、生きがいに満ちた幸福な人生が感じられてくる、と天風は説く。では、なぜそうなるのかというと、心身の統合統一によって「神経系統の生活機能」が完全になるからだ。私たちの肉体は次の三つの条件で、生命の火を燃やしている。1呼吸をすること 2栄養を吸収すること 3老廃物を排泄することこれらは、五臓六腑の働きだと思われているが、実はすべて神経系統によって動いている。ちなみに天風は、神経系統を次のように分類している。・動物性神経-中枢神経。この神経を支配しているのが脳髄で、この中で大脳と小脳の一部が動物性神経を操っている・植物性神経-小脳の一部と延髄が植物性神経を操っているこの二つの神経を完全に機能させることができれば、健康を維持し快適な人生を歩む原動力となるのである。心の持ち方次第で健康が維持できる心の持ち方次第で、健康や生活が変わってくることは、あらためて一言うまでもない。しかし、この重要性を熟知している天風は、繰り返しその大切さを説いている。「心の持ち方を積極的にすること」それが天風の持論であり哲学である。たとえば病気にかかったとき、心を後ろ向きにしてしまうと、病気に負けてしまうことになる。いつも心を強く持ち、決して弱々しい気持ちにならない--それが病気や悪い運命に遭遇したときでも、それをはね返す力になる。天風は、心の持ち方の具体例として、次のようなものを示している。1みだりに怒らない 2恐れない 3悲しまない 4悩まない 5わずらわないどんな難問や逆境にぶつかっても、それを莞(かん)爾(じ)として受け止め、心を前向きに転じれば、消極的な感情が起こるのを防ぐことができる。そればかりか、「難問や逆境を克服してみせるぞ」という精気さえ満ちてくるはずだ。天風は、明るく、生き生きとした心を持て、と繰り返し説いているが、その心の状態については、次の四つを失わないようにすることだとしている。1心の尊さ 2心の強さ 3心の正しさ 4心の清らかさこれらを失うと、神経系統の生活機能が不調になり、心身の歯車が狂ってしまう。神経系統は、生命の原動力だ。心の持ち方と密接な関係を持っているばかりか、生命の確保には最大の要件となるものである。こうした心身の仕組みを知らないために、私たちは心や体も自己統制できないものだと思っている。しかし、心も体も同時に統制できる。それを知ることで、健康はもとより、健康体での長生きを手に入れることができるのだ。このことは、とりもなおさず、明るく幸せな人生を堪能しながら生きるということにもつながってくる、と天風は断言する。天風は知識としての「心身統一」ではなく、それを「実践」してはじめて意味のあるものとなると言っている。 中村天風先生より