「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」
この本を読む前に、テレビの連続ドラマと2時間ドラマを観ていたので大体のあらすじはわかっていた。そのせいか、どうなっていくんだろうというわくわく感はなく、ドラマとの違いを探すような読み方をしてしまったので感情移入が出来なかった気がする。感情移入できなかった理由がもうひとつある。それは私の父が私が16歳の時に他界しているからだと思う。父はある日突然予告もなく仕事先で倒れた。脳溢血だった。出血した場所は手術するには難しい場所で意識不明のままな何ヶ月か過ぎた後、亡くなった。その間、私は交代で父の看護をした。もちろん喉を切開した部分の痰の処置から身体を拭いたり、床ずれしないように身体の向き変えたりなどなど。高校を度々休んでラブホテルで仮眠までして一生懸命父が目を開けるようにと祈りながら看病した。そんな甲斐もなく、父は一言の言葉も残さず逝ってしまった。私はどちらかといえば、お母さん子ではなく、お父さん子だった。でもそんな父の死に涙は出なかった。出しちゃいけないと思った。泣くとまわりの人たちが心配するから。それになにより、悲しいのは突然死んでしまった父本人だと思ったから。そんな経験もあって、この本を読んでも涙がでなかったのかもしれない。むしろ、リリーさんを羨ましく思った。大人になるまで生きてくれたオカン。オカンとの東京での生活、オカンが残したリリーさん宛の手紙。全てが愛情に包まれたものだと思った。オカンは確かに前向きで明るくてパワフルですごい人だと思う。「食べる」ということを大事にしているところも好き。この本はつい私情が入って感情的になり、素直な感想が書けない。そして生意気だけどリリーさんに対抗意識を持ってしまう。みんないろんな経験をして今がある。私もその一人。私小説を書こうと思えば書けるかも知れない。リリーさんはどんな気持ちでこの本を書こうと思ったのだろう。リリーさんにあって、私にないもの。それは人をひきつけるほどの文章力と感受性だと思う。これほどのベストセラーになった本にはそれなりの理由があると思う。それはリリーさんのオカンへの想いが本の中で実に丁寧に実に見事に表現できているからだと思う。そしてオカンの魅力がそれに一役かっているのだと思う。とっても私情が入った感想になってしまいました。半分以上、自分のことを書いてしまったのであんまり参考にはしないでくださいm(__)m。