[博士の愛した数式」
私は待ち合わせ場所に一時間も早く着いてしまった。そして目の前に本屋があった。入ってみるとこの本があった。あまりにも偶然手にしてしまった本。偶然出会った博士と家政婦として雇われた私。私と博士の出会いは偶然ではなく不思議なつながりで出会っています。それは私の誕生日と博士の腕時計に刻まれた数字が友愛数だという事実や惹かれあう(?)二人の姿が証明してくれています。偶然とは時に必然だと思えることがあります。「博士の記憶は80分しかもたない。」この哀しい事実。思い出を作れないってほんとに哀しいことだと胸が痛くなりました。家政婦(私)=読者(私)になっていく場面がいくつもありました。そして家政婦の子供である√が加わった3人の世界。誰も邪魔することのできない世界。楽しく、時に切なくそんな時間を3人は共有していた。√が怪我をした時、3人で野球観戦に行く時、誕生日パーティをした時。どの時もみんな素敵な時間。数学の公式があちこちに出てきて悩ませてくれた本ですが、やはり小川さんの作品はおとぎ話の世界のようで素敵です。でも、そこには現実があります。厳しい現実です。それは「ミーナの行進」を読んだ時も感じました。小川さんはどうしてこんな発想ができるんだろう?どうしてこんなに美しい描写ができるんだろう?とその才能にはほんとに驚かされてしまいます。またその世界に吸い込まれるかのようにあっという間に読み終えました。「博士の愛した数式」(著:小川洋子)