16/12/15付け中国新聞 天風禄より
今年の世相を象徴する漢字は「災」になった。新潟県中越地震や観測史上最多の台風上陸、猛暑など記録的な天災のニュースが浮かぶ。好ましい字ではないが、妥当なのだろう▲ベスト10をみても「震」「風」「嵐」「揺」が入った。いつ起こるか分からない天災への不安。天災に対して人間がいかに無力であるかを痛感させられた。天災だけではない。泥沼化の様相を呈してきたイラク戦争や残虐な人質殺害、国内では幼児虐待や子ども被害の殺人事件など目を覆う人災も多発した▲だからこそ、職場の同僚からは「壊」という漢字が挙がった。家屋などを破壊し尽くす自然の猛威と街をがれきと化す戦争など。そして安全や政治のシステムが壊れつつあるとの意味を込める。しかし、「壊」はベスト20の中には入っていなかった。あまりにも強いイメージがありすぎるのかもしれない▲「天から災いが降ってきた」。きのう初公判があった元官房長官村岡兼造被告(73)がわが身を嘆いていたのを思い出す。自民党旧橋本派の不可解な「一億円献金隠し事件」で、政治資金規正法違反(不記載)の罪に問われ無罪を主張しているが、政治不信という人災を招いたのは間違いない▲自然災害の一因とされる異常気象も、地球の温暖化が影響している。これも人間の身勝手さが招いた「災」だろう▲「災」には「災い転じて」の願いがこもる。来年こそは穏やかな日々でありたい。