星野哲郎さん
'10/11/16 付 中国新聞 天風録より 「演歌は出だしの2行が勝負」。作詞家の星野哲郎さんが残した言葉だ。その先が聞きたくなる絶妙な2行に全精力を費やした。♪波の谷間に命の花が ふたつ並んで咲いている―で始まる「兄弟船」。しけの海に乗り出す男たちの心意気まで鮮やかに浮かぶ。 ▲「歌はアイデアと体力です」とも語っていた。都会の雑踏でヒントを拾ってメモし、歌詞に書き留めた。妻に清書してもらうと欠点が見えてくる。納得できるまで手を入れた。♪京都にいるときゃ 忍と呼ばれたの―の「昔の名前で出ています」は8、9回も書き直した。 ▲生みだした4千曲余り。海の香りが漂う星野演歌は時に「塩歌」と呼ばれた。くじけそうな気持ちを包み込み、励ましてくれる優しさがいつも底にあった。代表曲の一つ「三百六十五歩のマーチ」は人生を応援する「援歌」である。 ▲大病を患い、あこがれの船乗りをあきらめた若き日。癒やしてくれたのが古里、山口県周防大島町の海と人情だったという。3年前、自分の名前を冠した記念館が町内にできた。「歌を生む感性を与えてくれた」。古里への感謝の言葉に万感がこもっていた。 ▲「移ろいやすい世の中だけど、義理人情は変わらない」。そんな信念をのせた演歌。作詞家は逝っても、そこに人生がある限り流れ続ける。 http://idagawa.seesaa.net/?1236085826