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カテゴリ:新聞・雑誌
'08/4/9 中国新聞 天風禄より
「誰もがみんな知っている」月光仮面が登場したのはちょうど五十年前。亡くなった川内康範さんが生みの親だった。敗戦から立ち直りかけていたころ。東京タワーや一万円札、インスタントラーメンも同じ年にお目見えした ▲白い覆面にマントをはおりバイクで現れる正義の味方。放映日には銭湯から子どもの姿が消えるほどだったという。武器は持っているが、身を守るために使うぐらい。悪と戦うが、傷つけすぎることはない。今見ると、まどろっこしく感じる ▲「憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう」がモチーフだったらしい。回想録「生涯助ッ人」(集英社)を読んで、ようやく納得できた。寺に生まれ育った川内さんが身に付けた仏様の教えが基になっているのだろう。月光菩薩(ぼさつ)にちなんだ名前からもうかがえる ▲人気絶頂だったが、自ら放映中止を宣言した。まねをした子どもが高いところから飛び降りて、けがをする事故が相次いだからだった。とにかく人を傷つけることを嫌っていた ▲戦時中、東京で空襲の中を逃げまどった。そんな経験から、人の命を奪う戦争は、どんなことがあっても避けるべきだと思っていたのだろう。それが月光仮面を通して、「どこの誰かは知らない」戦後社会を支えた人々の心にも響いたのではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.04.15 20:06:11
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