「あなたのレーベルは、路面店を出すべき。
ショップの人に説くよりも、不特定多数の人に、
じかに聴いてもらうほうがよっぽど強いんだから。
一坪でも二坪でもいい。
引越して家賃が下がったなら、やればいいのに、店。
アーティストじゃなく、レーベルにファンが付くように」
「狭い店で、いいと思うものだけを置いて、
常連さんにはビールなんか出して?」
「そう。カウンターの下は冷蔵庫。
あとは、新譜のサンプル盤を作ってフライヤーと一緒に配る。
月刊誌みたいな感じで」
「いいね。
狭いながら、ライブなんかやっちゃう。
あとは、みんなで映画を見たりする」
「夜はバーになる」
「そして君がマスターをやる。
きっといいお客さんが付くよ。
昔からずっと、将来は自転車やさんがやりたいと思ってたんだ」
「じゃあ自転車も置く」
「現地で仕入れてきた、雑誌なんかも置く。
アウトドア用品もちょろっと置く。
もう何の店か分からない」
「それでも、聴いたことのないいい音楽が流れている」
「最高。そのためなら私はすぐに飛んでいく。
貧乏暮らしなんかも全然平気だから」
「場所は?」
「下北沢」
「勘弁。あんな街に埋もれたくない」
「じゃあ、中目黒?吉祥寺?
自由が丘は主婦っぽすぎるね」
「恵比寿とか」
「高そう」
「確かに。吉祥寺、いいかもね。
そういうところからシーンが生まれていく可能性もある。
もう俺、ずっと独身なのかな」
「もう独身でもいいじゃない。ちゃんと看取ったげるから」
「君の人生がむちゃくちゃだ」
「大丈夫。若き未亡人としていい男を探す」
…そんな話をした。いい電話だった。
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Last updated
2009/06/16 12:25:53 AM
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