炭酸のはじけるような淡い音が
10歩ほど先の窓の外から聞こえた気がした。
耳を澄ませようと足を止めると
音は確かになり、じわじわとボリュームを増していくようだった。
それが、耳を澄ませたせいなのか
雨足が勢いづいたせいなのか分からなかった。
かすかな雨の音量が安定するのをしばらく待って
今度はそれを確かめようと思った。
そうして窓に一歩近づくと、
ふいに雨の音は止んでしまった。
雨が止んだのか、
ただ音が止んだのかは分からない。
降っていたのは雨なのか
あるいは音だったのかも分からない。
閉じたカーテンの向こうの夜に
何が起きたか私は知らない。
残されたのは、
鼓膜の上のあいまいな記憶だけである。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/06/21 11:54:22 PM
コメント(0)
|
コメントを書く