フジコヘミングを聴きに母と。
もっと際物かと思っていたのに淡く柔らかい。
少女のよう。
自意識と音色とに境目の無いふっくらとした。
センチメンタルというかロマンチック。
やわらかい。
霧雨煙る生温かな灰色の朝に
瞬きにつれまつげに雫がしたたる。
青生がやわい。
その雫越しに、もう見えない人を見送っている。
そんな「別れの曲」。
別れと、走馬灯と、客観的視点との三部構成。
丸一曲で別れを乗り越えられ消化できるような。
まるで数学的でない、
人為的にオルゴールをまわしているような
ペダルの多い、最もスラーなバッハ。
なぜか涙が出る。
しっかり埋めてくれそうなショパンの葬送行進曲。
どっしりとしたfirmな歩みで墓場に向かう。
生きて活動するタームの役目を終えた身体を
いかめしく厳かでありつつも尊敬と愛情とを込めた
節くれ立った手で、温かく湿った土深くに横たえ固定してくれるよう。
途中に差し挟まれるほどけるようなメジャー調で、
ああ、良い墓地を選んでくれたのだなと
見えぬ地上の日当りの良さやのどかな心地が感じられる。
きわめてすばらしい、この世の音楽。
地に足が着いているからこそのロマンチック。
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Last updated
2010/05/23 01:30:19 AM
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