雪月花

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• 恋人

  彼氏、という言葉がどうしても使えなくて、恋人、と呼んでしまうんです。そう言ったら知人は、いいじゃない、と笑った。私はその人を、素敵だと思っているから嬉しかったんだった。でも、恋人っていったいなんなんだろう。私は、ひとりと、ひとりじゃないのの違いが、よく分からなくなってしまった。その違いを今度こそ、はっきりさせたかったのに。

  2006/08/29

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• 絵の具を洗った筆洗いの最後の水の色＝新宿の夜の空の色

  力の強い男のひとが好きだ、とは最近思うようになったこと。分かり易く抗えないものがないと、あたしは結構かんたんに、ぐにゃらぐにゃらとなってしまう。怖くても痛くても、自分の力では確実に払いのけられないものに押さえ付けられている、その瞬間にしか、安全さに微笑めなくなったのは、いったい、いつからだろう。私はたぶん、愛とは少し離れたところで、脳の痺れるのをにたにたと悦んでいるんだろう。私が守ってほしいのは、必ずしも檻の外の敵からでは無いから、少なくとも、そして最も重要なのは、その男の作る檻が、私には壊せないだけの強度を持っていることだ。あなたが私の男ならば、あなたは私を充分に不自由にさせなければならない。叫べる子どもだったならば、きっと愛に自由を求めることが出来たんだろう。声をあげることに馴染めないから、声をあげさせてくれるものを求め、駆け回ることを覚えなかったから、押さえ込まれる快楽を知った。特に病んでいるわけではない。ただ少し、私は私を嫌いになりやすいだけだ。私はきっと愛しているのだ。何を？私を。どれくらい？物凄く。夢を見たいわけではない。目覚めたくないだけだ。破綻快楽に素直で危険に敏感。それ以外にいったい、何が必要なのだろう。だから私はいつまで経っても、たった一切れのケーキについてさえ語ることができないのだ。でも本当は。でも本当に大切だったのは。どこまで寝返りを打っても背中を包みに来てくれるしなやかな腕と、私の名前を繰り返すあまやかな寝言だった。絶対、生きていてね。もう会うことも、一緒に眠ることもないかもしれない。けれど、絶対、生きていてね。私にはもうあなたの命しか、頼れるものがないの。

  2006/08/28

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• とりあえず、しゃぼん玉の話

  ・しゃぼん玉の日・しゃぼん玉を吹く日・しゃぼん玉を見る日・しゃぼん玉の飛ぶ日タイトルは、まだ要らない。いろいろと頭を柔らかくしてくれる友人といて、マッコリのあとの冷たいコーヒーで思い付いた話。夜眠る前に、ベランダからしゃぼん玉を吹くことを日課にしている男がいる。表札よりも部屋の番号が存在の印になるような、初老、いや、中年の男性だ。しがないアパートの２階に住んでいる。吹く彼と、それを見かけるＡにとって、しゃぼん玉の理由／想う事は違う。空気に満ちる他人の悲しみ（微量）が、夜を柔らかく、Ａを優しくする。（もちろんこのことをＡは知らない）Ａはただ、今夜も飛んでいる、と思う。「彼」はいつも、ピンクのプラスチックの瓶を買う。でもそれにいつもついてくる、緑のストローは使わない。燃えないごみの日にＡは緑のものを見る。ピンクの空き瓶も見る。でも、「彼」が古い１本を使い続けている事をＡは知らない。確かに奇妙だ、変わっている、とＡは思う。でも、この世の中にひとりくらい、しゃぼん玉を日課にしている人間がいたっていいじゃないか。むしろ、まんざら悪くないことだ、とＡは思う。「しゃぼん玉きれいですね」と、Ａは挨拶の時に言い出せない。ある夜、Ａは夢の中でしゃぼん玉を吹く。いつもよりたくさんの泡が、空に浮いている。「彼」は狂っているかもしれない。Ａは思う。でも。「彼」が狂っているとしたら、この世界はもっと間違っている。狂っている。ぼくはいつか、あのしゃぼん玉を食べたい。という話。

  2006/08/27

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• かわいいひと。

  私は今まで何人かと恋人になって、で、今ごろになっていろいろ思い出す。優しかった人はさらに優しく、可愛かった人はさらに可愛く、思い出してしまうから不思議だ。ちょっと弱っているから、気をひきしめないと。そう思っているうちに、またいろいろなことをひきおこしてしまう。私は、弱っているほうが人気らしいけど、弱っているのは自分できらいだ。でも、どうやったら弱ったモードから抜け出せるか。それがちょっとわからないから、またふらふらしてしまいそうだ。また、なんにもきめられないまんま。

  2006/08/26

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• ことば

  言葉は私のものだった。明日を守るためでもなく、昨日を確かめるためでもなく。利己的な玩具、背徳の玩具。知らぬ間に手を離れた言葉に追われ日々をやりすごし、澱にまみれ言葉自身も不自由な思いだと知りつつも、確かな心強さは何処へ？私はもう、私を守りたい。言葉に追われない日々を。私の言葉を取り戻す日々を。溢れる言葉を必死にくみ出す時はまるで幾千年前。乾いた地に器を突き立て欠けてはまた嘆息。素直になりたいだけなの。そう、言葉を産み、放し、そしてまた産む。口にする水と汗や尿のような関係に、私の心と私の言葉が再び戻ればいいのに。私は何を奪われたのだろう。私は何に慣れたのだろう。私は何を知ったのだろう。私は何を忘れたのだろう。私が何を思い出せば、言葉はまた湧いてくるのだろう。眠りの最中にも私の目を覚まし、掻立て、いたたまれないほどの焦燥感でペンを握らせた私の中の何か。私は私を愛している。私は私しか愛せない。私の言葉は私のもの。最高に崇高で狂おしいほど生臭い真実。

  2006/08/25

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• 吐きそう

  吐きそうなくらい泣きそうなのに、涙がぜんぜんでてこないから苦しい。涙がぜんぜんでてこないから恐ろしくなった。私はいったい体の中の、どこで泣いているんだろう。そんな時に電話する人は、ひとりしかいない。そう、そう、元気なのね？うん、まあね、忙しいけどなんとかやってる。嫌になっちゃうけど、一年くらいはね。そんな風になんでもなく電話しながら、にこにこ泣いている。そんな風に泣かせてくれる人と、離れてしまったのはあたし。

  2006/08/24

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• ウィルキンソンのあばらぼね

  私が、シュウェップスのトニックウォーターと等しく愛するもの。それが、ウィルキンソンのジンジャーエール。久しぶりに瓶から飲んだら、置いた指が瓶の凹凸にぴったりとはまって、誰かの裸のあばらぼねを触っているみたいだった。ウィルキンソンのあばらぼね。ぞっとするくらい指に馴染む。どう懐かしいのかは知らない。

  2006/08/23

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• 母のすすめる映画

  実家に帰って、たくさんビデオで映画をみた。母がすすめてくれたものもみた。それは、『真夜中のカウボーイ』なんだけど。思い返せば彼女がすすめてくれる映画は、ストーリーの詳細を忘れる事はあっても、その感触を忘れる事がないものばかり。で、えてして暗い。「あたし、ネクラなのかしらね。ははは」そういって笑う母は、抱き締めたいくらいあたしの母らしく、それでいてあたしより数十倍できた女性だと思う。メモ。母がすすめてくれてあたしがひとりで見た映画。・真夜中のカウボーイ・道・エレファント・マン・カッコーの巣の上で他にもいくつかすすめられたけど、すすめられたまんま、まだ見てないものは書かない。というか、見さえすれば忘れないけれど、見ていないものは忘れてしまう。うん。「見るといいかも」、そのすすめ方も好き。お礼と言うのは憚られるけど、『スリング・ブレイド』をすすめて帰って来た。次に会ったときには、『蜘蛛女のキス』をすすめようと思っている。

  2006/08/22

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• ケーキに似て。

  欲しいなら　許されなくても　迷わない人生のいろいろなことをケーキに例えて考えるのは、子どもじみている、と思う。でも、今のところこれがいちばん分かりやすいから仕方ない。私の目の前にはふたつのケーキをのせた、お盆が差し出されている。そのお盆から選ばずとも、奥にまた違う２種類があることを知っている。また、さらにもう２種類も、作ってと頼めばきっとすぐ作ってもらえる。私は、どれを選んでもいい。物凄く迷う。だって、どれも選ばない、という選択肢もあるから。物凄く迷う。それは、どれも大して欲しくないからかもしれない。ただ口寂しくて、ショートケーキの苺と、モンブランのタルトのところと、チーズケーキのブルーべリーソースと、ショコラの三角形の鋭角だけ１センチ。そんな風に、ひとくちずつしか欲しくない。あればあったで好いけれど、無ければ無いで忘れていられる。あったからといって笑うとは限らないけれど、無いからといって泣きはしない。そんな程度のものたちに、なんで私は一生けんめいな振りをしているんだろう。何のための、嘘なんだろう。（嘘には、必ず目的が必要だ）私は、何を。私は、どこへ。

  2006/08/21

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• 「べき」

  打ちのめされるべきときに打ちのめされて、浮かれるべきときに浮かれていないと、この世の中に感じられるものはなくなってしまうよ。そして、「べき」から自由になってこそ。頑張りと結果は必ずしも同義ではなくて、他人に映るのは事実しかないんだ残念だけれど。心をざわざわさせて、肌も粟立たせるもの。口で叫んでいるだけでは、個性なんて生まれないものね。足りなかった、と思うのはきっと正しくない。違った、と考えた方が近道になるかもしれない。音は耳に聴こえるけれど、耳で覚えていられるものでは無いから。

  2006/08/20

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• メモ

  よく困ったけど、疑ってはいなかった。よく迷ったけれど、心細くはなかった。一見頼れそうな嘘つきも、一見味方みたいな変なのも、いない所にはいなかった。コウモリとカメレオンは、テレビか動物園で見ればいい。貴方はチョークを食べ過ぎたから、針を飲んだ方がいい。食べたいものが無いのなら、そのビュッフェは選択について語る資格が無い。どんどん大人になるけど、信じられる人は特に増えない。重きを置くものが、ずれているなら去るのも手。ちょっとくたびれた。最近あまり耳が聞こえない。濁った白眼は嫌いだし、双六ゲームも嫌いだ。夢物語のとばっちりも。わたしはいつも、恋人に突然別れをきりだす。ああ、これは喩え話。ひとりで決めてしまう。しなしなの馬鹿になる前に、大切なのは自分だ、ともう一度。肯定できる自分が、過去にしかいないなんてこと、死んだって御免だ。夏休みは実家に荷物を置いて、どこかでひとりになろう。滝の傍にも行こう。愛する人たちにずらりと会おう。何かを確認したり、決めてしまったりできればいいと思っている。誰と居るか、どこに居るか、どんな気を吸って居るか。それは「何をするか」以前に大切だと思っている。体にも寿命があるけど、きっと心だって同じだ。

  2006/08/10

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• ずる

  ずるをして。過ぎた日の日記を埋めているけれど、ほわほわと満足が匂いたつような優しい日記が、かけていないな、と思ってちょっと悲しくなる。余裕とか、強さとか、そういうんじゃ全くなくて、ただあたしには、何か見落としているものがあるんだろう。自分には合わない速さで、生きているのかもしれない。誰某に気を使って書くようになってしまった再び。いっそのことみんなが同じくらい傷付けば好いのに。ほら、またこうしてろくでもないくだを巻く。いい子、と言われて育ったから、いい子、でいなければいけないと思ってしまうし、いい子、でない自分は良くないと思ってしまう。やさしい日記を書いていたあの頃に。そうやって毎日を過ごして行けた秘訣を教わりにいきたい。切に。

  2006/08/07

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• 週末の習慣

  金曜か土曜の夜から次の日の朝までを、私はこのところ同じひととよく過ごしている。大学時代の知人が、再会を機に友人となり、そして夜中から朝ぼらけまでを過ごすようになった。いっしょに酔っぱらって、笑って、なんだか懐かしいくらいの馬鹿さ加減で過ごしている。私では無い誰かを強く思っている男友達と、遊び呆けるのはとても気楽で良い、と思う。けっこう、感謝していたりする。そして、ちょっと偏ったやり方なのかもしれないけれど、彼みたいに誰かを強く思うのは良いことだ、と思う。正直、うらやましくもある。地味だけれど、私はその時間をとても楽しんでいる。このごろは、そんな感じだ。睡魔と戦いながらもうっかり落ちてしまうあの感じや、朝の湿ったさわやかさの中で自転車をこぐこと、そして、部屋に帰り付いてベッドに倒れ込み、休日はまだ残っている、と安心して目を閉じることも。

  2006/08/05

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• シンナーとタール

  何年も暮らしている部屋だけれど、ふとした瞬間に、あ、と匂いに気を取られる。暮らしはじめたときの匂いだ、と思ったり。匂いの元は分からないけれど懐かしくもなる。マニキュアを塗ったり剥がしたりしながら、煙草を吸ってぼんやりとしている。冷蔵庫から何かを取って来て部屋に戻って、扉を開けた瞬間に、あたしはよくやられる。シンナーとタールの醸し出す匂いが、物凄く落ち着くから、やれやれ、と笑う。ひとりでも。

  2006/08/04

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• ヘルパー

  あたしを助けられないなら心配してるなんて言わないでいいよあたしの気を紛らせられるなら精巧な嘘つきになって出直して頂戴貴方の苦笑いもあたしを叱る振りもそれは結局サディストの自己満足なんでしょう昔話の姫の難題は、本当はちっとも難しくなんかないって言葉をわざと額面どおりに受け取って奮闘してみせて困った。だなんて莫迦言わないできっと彼女達は賢いから、本当に読めないような言葉の裏なんか用意してないそれが優しさ、ハンデ、憐愍、思いやり、そして最後の叫びだって知らなかった筈は無いのに欲しい顔をして寄って来ておきながら何をびくついてるわけ、面倒なのはどっちなの言葉で教えられるようなものごとも言葉で表せるような危急さも残っていないしもう用はないし、ほんとうは始めから用なんて無いわかってても一寸だけ暇つぶしに期待してた自分は認めるけどなんでまだ其処に居るの？そんな風に話し掛けるエネルギーさえ勿体ない貴方の事は知らないけどもう厭きたの

  2006/08/03

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• NIRVANA (tributed)

  目を閉じて　見えなくなった振りをする暗闇で　知覚は世界に等しい不健全な量の愛情は私達を途方に暮れさせた嘘の中で生きるなら　人形の家は真でなければならなかったのだ言葉を探す間に経った時間は長過ぎた星達は道を失いしかし堕ちる事は許されない気化させて欲しい何の痕跡も遺さず苦しみが飛び去り日の光に溶けるように降伏の時だ涙を流して跪き変わらぬものなど何も無いと声に出し　繰り返す

  2006/08/02

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• 騙されやすさ

  私は、浮かれにくい人間だけれど、驚くほど騙されやすい。私は、愛情深さに自信はあるけれど、非常に人を傷つけやすい。

  2006/08/01

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• 法事と金目と猫の舌

  法事です。いつも通り臭いお香を手のひらになすり付け、でもかっこいいお坊さんだししょうがないと思ったら、なんと今回初めての若いお坊さん！ショック。で、無事に終わり、お墓へ参り、知ったお店でご飯をみんなで食べる。まさに、一族、という感じ。見たことない大きさの金目鯛の煮付けが最高。やっぱり海の街っていいなあとしみじみ箸を運ぶ。昨日、ようやく両親の前でスモーク解禁の運びとなったので、ゆうゆうとふかす。さすがにピースはちょっとと思って、父の中南海のもらいたばこだったけどね。で、猫の舌というお菓子を買って帰る。そんな風にして週末が終わる、と思いきや、私には明日の朝までに仕上げなければならない仕事が待っている。やばい。非常にやばい。何がやばいって、法事の打ち上げで飲み過ぎたwでもちゃんと4時に終わらせたのよ、さすがね、あたし。猫の舌が、あたしの舌の上で溶けます。

  2006/07/23

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• ワイルドベリーとチョコミント

  おばあちゃんの町、というか母の実家のある町へ。明日は法事なので、今日は歯医者さん。あたしが実家を後にしてから残された家族は、どうやらちょこちょこ旅行なぞを嗜んでいるらしい。楽しそうな写真をマメに送ってくれるので、あたしもいい加減うらやましさの袋の緒が切れた。「ホテル！」で、ねだったらホテルへ1泊を奮発してくれた。ありがとう、父母。歯医者さんで、親知らずを抜こうねという話をされ、フッ素加工したてのピカピカの歯でどろどろのラーメンを食べ、（フッ素にはワイルドベリーとチョコミントの２つの味があった。あたしは後者）そして美しい場所を楽しみ、ホテル！！広いよー広いよー。久しぶり。温泉も旅行も。家族に会うのも。のぼせるまで欲張って露天風呂を行き来して、ふかふかの布団にくるまるなり岩のように眠ったらしく、朝起きたら親に笑われてしまいました。最上階のバーからみた海岸に、誰かが打ち上げているささやかな花火が光る。幸せ、と思った瞬間に、母が「幸せ」と呟いた。

  2006/07/22

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• ダーツで筋肉痛

  ダーツを久しぶりにやったら、数字どころか的を狙うのが精一杯になっていて、あろうことか筋肉痛になってしまった。なんだ、なんだ、この退化。酔っぱらっていたのを差し引いてもひどすぎる。ビリヤードの腕も落ちているに違いない。うっすら教わった麻雀も忘れたに違いない。おお。4時まで遊んでうちに帰って、2時間したら目を覚まして、電車に乗ってお出かけなのよ。

  2006/07/21

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• 始まらなかったもの

  始まらなかったものは終わりようがないから、あたしの中でずっと、じくじくするんだ。始めておけばよかったと思うことも有れば、いや、始めなかったのは正解だろうと思うことも。それはあたしのコンディション次第なのね。今は、始めなかったのは正解だと思ってる。終わらないままのおかしな関係のひとつやふたつ、あったっていいじゃない？

  2006/07/20

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• 枯れた場合

  湧くものをせっせとくみ出してぶちまけるだけで、それなりの強烈さを保てていた（気がしていた）のはもう、少し昔で。枯れんじゃないか枯れんじゃないかっておびえながら、様子を伺いつつ拭ってはべたべたとなすりつけていたのも、少し昔で。掘ったら出るかな掘ったら出るかな、なんて望みを抱いたり、ココホレワンワン的な犬を待ちつつ充電してみたり、もした。今は、待ってる。まだじたばたしながらだけど、待ってる。滲んでくる、きっと。湧いてくる、再び。そうして流れる水の勢いが、あたしの背中を押してくれる日を待っている。自分の言葉に出会いたいな、もういちど。あの頃は何が有って何がなくて、この頃は何が有って何がないんだ？頭を熱くすれば良いのか冷やせば良いのか、教えてよ先生。

  2006/07/19

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• 負けるが勝ち

  負けるが勝ちってのが、よくよく考えると嫌いなのね。勝ちは勝ち、負けは負け、その途中で某かの目的のために一旦妥協するなりひざまずくなら、それは負けじゃないし、それを負けって呼ぶのはなんだかずる賢いようでやだ。手を汚してない、汚いことを知らない顔をしている大人のだれそれみたいでとっても嫌だ。勝ちは勝ち、負けは負け。客観的な勝ちも欲しいなって思うの、最近。欲張りになるのって、悪いことじゃないよね。不安が増すから、自意識も活発にうごめきだすの。見ないで、見て、見ないで、見て、気づいて、気づいて、そして温かく迎え入れて、って風に。

  2006/07/18

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• 湿った舌

  梅雨の末期症状の豪雨。それをもたらす気圧の形の名前は、湿舌。私は猫の舌が嫌いだし、(でも熱海の洋菓子やさんの猫の舌は大好物）分厚い舌で口の中がいっぱいになるのも嫌だけれど、タブレットの形をしたガムは、いくつもいくつも口に入れて、めいっぱい噛むのが好きだ。そして、湿舌というネーミングは、ちょっとだけ印象に残る。wet tongue舌というのは指以上に、人間の体の中で独立した生き物みたいだ。湿舌。梅雨は嫌いだけれど、雨は好きだな。梅雨が明けると夏になってしまう。すこし気が重い。

  2006/07/17

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• 別れを惜しむぐらいなら

  この連休は、ひとりで過ごそうと決めていた。充電充電というけれど、私にとっての充電は、どれだけのたっぷりとした時間を、存分にひとりで過ごせるか、にかかっている。本を、読みまくっている。目を覚まし、洗濯機を動かし、本を読み、少し眠り、洗濯物を干し、本を読み、眠り、目覚め、また本を読む。星新一氏のエッセイから、ひとつの文をメモ。　　　別れを惜しむぐらいなら、　　　いっしょにいる時に、もっと大切にしてやればいいのに。だって。これは夏の暑さをテーマにした、「九月」という文章で、「気まぐれ暦」に収録されている。誤解だとわかっていながら好き勝手に思いを馳せる。こんな時間は久しぶりだから、私は久しぶりに日記を書いてみているんだ。

  2006/07/16

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• 爪がもげる

  右足の親指の爪の上半分が、もげていた。あんまり痛くないのが不思議だけど、みっともなくもげたそのぎりぎりのところが気になって、いじっているとちょっと痛くなってきた。よせばいいのに。そして昨日、今年初めて蚊に刺された。もげた爪と、蚊に刺されのふくらみ。失われたものと、新たに現れたもの。どっちが多いだろう。

  2006/07/15

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• 口の中のワイン

  最近きづいた自分の癖なんだけど、私は、飲み物を飲みこむ前に、少しの間、口の中に含んだままにしておくことがある。じゅうぶんに口じゅうにゆき渡らせて、ぞんぶんに舌をしめしてから、おもむろに喉をとおす。そうやって含まれた飲み物は、生ぬるい。もうひとつ、最近きづいた自分のこと。私は、物事をひとつずつきちんと終わらせることが不得手。どうも、けじめのつけ加減が手ぬるいようだ。しかもその手ぬるさは、しばらくたたないとわからないから厄介。たとえば口にワインを含んだままにしていたとき、たとえば夜道をとぼとぼと部屋へ向かっているとき、たとえば寝返りをうった拍子に少し目が覚めてしまったとき。ちょうど、濡れた洋服があたたまって、むわっと湿気が匂いたつように。ああ、あなたの息の根も止められていなかったのねと、優しいまなざしで語りかけるのは危険としっているけれど。終わったからなのか、終わらせられていないからか。分からないまま私はまた、その中途半端な温度を愛しそうになる。口の中のワインはぬるくて、まるい。

  2006/07/14

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• 「夢の町」３

  車の免許を持っていないにもかかわらず、ドライブをしている。軽く追突してしまった前の黄色い車のおばさんが、ひどく醜い顔をして私をにらんでくるから知らん顔を決めた。山の上は晴れている。大きなレストランに着いたのはいいけれど満席で、私と母はうんざりしてしまう。ホテルのラウンジのような待合所で私は、この町に来て初めて本を手にとって開く。詩のような細切れの文章が載っている立派な装丁の分厚い本で、中の文章はかたまりごとに、それぞれ文字の大きさも、縦並びか横並びかも自由だ。母が見当たらない。席はまだ空かない。空はよく晴れている。年に一度の行事がある。名前は確か、らやんむん、という。山の一角を１日がかりで、男衆が総出で掘るのだ。その間、女子供と老人は、土を運ぶ手伝いや食事の準備をする。することのない者は男たちが山を掘る傍らで、竹や木の枝を手に取っては錐のようなものでほじくり、筒にしている。男たちが、山にトンネルを開通させればらやんむんは終わる。向こうを見通せたらそのまま、黙って元の通りに埋めて行く。筒にされた棒たちは、ぽいと捨てられる。誰も踊らない。音楽もない。大人たちに笑いは無い。まるで義務のようなこの行事の意味を、今誰かが知っているのかさえ、分からない。それが、らやんむんだ。目が覚めるとやはり空は曇っていて、空けたままの窓から入る風が心地よく湿っている。隣には男が眠っている。私はとても彼を愛おしいと感じている。彼は画家を目指している、いや、太陽を描くことを目指している。いつか、満足の行く太陽を描けたら、それを洋服に描いて私に捧げてくれるという。それが何よりのお守りになることを、それが全ての災いを私から遠ざけることを、私は知っているし、そこに描かれるべき太陽の絵も思い描くことができる。私は嬉しさと幸せのあまり、泣きはじめる。絵を描いているときの彼は絵の世界のもので、筆を休めたときの彼しか私のほうを向かない。それも仕方が無いと思っている。彼にとっての絵と、彼にとっての私が繋がることが私の夢なのだ。私に捧げる絵、私に絵を捧げる、そのことを話している彼の目には、いま何が映っているのだろう。そしてそれを羽織れば私はきっとここを出て行かれるが、彼を置いて行くことになるだろう。満足の行く絵を書き上げた彼はやはり別人になるのだろうか。約束はかなわないかもしれないが、約束を貰えることが嬉しい。そんな風に思うようになった私に、まだいき場所はあるのだろうか。誰かのいるところで一人になりたいと、山にある小さなカフェに入ると昔の知り合いがいて、私は気分が悪くなったのでコーヒーを残して表へ出た。店の裏手は瑞々しい林で、その手前に砂利敷きの狭い駐車場がある。そこに一頭の牛が繋がれている。とても賢い濡れた丸い眼球を持っている。私は彼と話すうちに、いやされ、そして好きになって行く。何度も何度も会いにくるからといって去ろうとする私に、彼は自分が肉牛であること、だからいつかは居なくなることを告げる。じゃあ、私と一緒に暮らそう、と私は言う。私の狭い部屋を思い浮かべるけれど、無理では無いと考え直す。でもまだ駄目なんだと彼は言う。彼の両の鼻の穴には、ホースに見える太さの、黒くてつやつやした蛇が通されている。この蛇が鼻の穴を通りきらないと、僕は自由にはなれない。そういうから私は蛇を引っ張って、鼻の穴を通しきろうとするけれど、蛇は長過ぎて私は本当に彼が好きなのかどうか分からなくなる。いつだか逃げ出そうとして、山に登り、反対側に下るというロープウェーに駆け込む。人が多すぎてロープウェーは壊れ、暴走し、痛い衝撃と共に到着したと思ったら、背広の人が私を待っていた。穏やかにもとの場所まで送られた。

  2006/07/13

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• 「夢の町」２

  この町には裸馬が多い。人に使われているものも、そうでないものもいる。いろいろなところにいる。ある日家に戻ると、裸馬が走り込んできた。間近で見る大きさと鼻息の荒さに気圧されて私は家の奥へ奥へと逃げる。木の引き戸がついた納戸に隠れるが馬はその戸を蹴ってくる。こわい。鼻息があつい。心臓の鼓動が痛い。地震の前か後か知らないが、私は違う職を探していた。海の傍にある公的な立派な建物の中の一室が、住民に職をあてがってくれる。並んだ末に私はひとつの職を差し出される。就いている限り安泰で、時が経つにつれ収入もあがるが、途中でやめることは難しく、そして私のやりたいことでもない。役人のような男は言う。あなたが断っても、これをやりたい人はいくらでもいるんだ。3時間か30分か考えさせてほしいと私は告げて、その建物の中にあるトンネルのような滑り台を使って、誰にも気付かれずに海辺の砂浜に出る。ぼうっと海を見ながら考える。考えているようで居て私は特に何も考えていない。ただ夕暮れの迫る背後の道を、人が行きすがっていくのを感じている。やりたいことがあるなら職など貰いに行かなければいいのにと、自分がうすく嫌になっている。うんざりしたまま私はその建物には戻らず、告げた時間が過ぎるままにしていた。放っておいたからもちろん、時間はいつのまにか過ぎ、きっと仕事は別の誰かにあてがわれているのだろう。私は腰をあげることもしない。その誰かが喜んでいるかどうかは私の知るところでは無い。何人かでたぶん、この町に遊びにきたことがあったように思う。私が実際にここに越してくる前、ここのことを知るよりも前に。旅行の終わりに私たちは小さなグループに分かれて、思い思いの時間を過ごすことにした。私と私の友人のような人は、最後の集合場所に向けて山から海へ走る電車に乗っていた。海が、気まぐれを起こした。みるみるまにトンネルの中が海で満たされて、窓の外が海になった。見上げると車両の天井も大きな海になった。その間、電車はしばらくとまっていて、誰も騒がなかった。誰も騒がなかったのは、誰もいなかったからかもしれない。海がひくと、窓に海藻がびたりと貼り付いていた。一気に海臭くなった。そのまま駅につき、海沿いを歩いていると、小さな出店に連れの男性がひとりか二人、座ってのんびりと呑んでいた。急がないと、という私に彼は笑って言う。いいよ、俺はここに残るから。その意味を深く考える余裕も無く、そう、と言って、私たちは急ぐ。その店を海から離れるようにして左に折れると、古い駅舎か倉庫のような、赤茶けて白けたレンガ積みの壁に囲まれた場所がある。そこを通れば集合場所なのだが、太った男に阻まれてなかなか進めなかった。その男の薄笑いが気持ち悪くて恐ろしかった。ぶよぶよとした狂気と悪意があった。あの男はきっと、ずっとあの場所に居て通る人をおどかしているのだろう。この町の歴史を見たことがある。突然町中の人々に、広場へ集まるようにという連絡がはいった。穏やかな町の人々は、何だろうと思いながらも集まって行った。ひとり残らず。ひとり残らず。平らだった広場には土手のような形に土がぐるりと盛られている。その斜面にぎっちりと私たちは並べられた。土手の外側にはバラ線のようなもので囲いがしてある。そこへ、同じ言葉を喋る見知らぬ男たちが数人、走り込んできた。そして、土手の下の方に火がつけられた。焼かれる町の人々の悲鳴は、地響きのようだった。熱気と煙りが立ち上り、私の恐怖をかき立てる。隣に居たおばさんが、あんたは逃げなさいと言ってくれる。そうやって逃がしたのだろうか、人の垣根の狭い隙間から、かけて行く子どもの後ろ姿が２、３見えた。その悲劇から数十年が経ったのが今である。あのおばさんはどう考えても、海辺の出店を切り盛りしているおばあさんに似ている。だけれどその話を切り出す前に、彼女はぬらりと話をはぐらかしてしまうので、私は今のところ何も、確かめることができない。この町に関して私が知っていることは、なかなか増えないままだ。ここがどこで、何という町で、私はなぜここに来て、そしてあの悲劇の理由も、それからどうやって人が増えたのかも、この町が外の町と繋がっていないというそのわけも

  2006/07/12

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• 「夢の町」１

  「夢の町」私はそこに独りで住んでいる。ある日、私は少ない荷物とともにその町に越してきた。町の人だか、もとの場所の人だか分からないが、何人かに手伝ってもらった。中には実の友人も居たように思う。海から遠すぎない古い日本家屋で、古いのだが三階建てだった。風呂場は三階に有る。長方形の湯舟がぴったりと面した壁は雨戸のようになっていて、その雨戸を開くと湯舟はもう半分あることがわかった。つまりは正方形なのである。なによりも私が喜んだのはその雨戸を開くと、まるで絵のように眼前に富士山がそびえることであった。やはり肌寒く曇っていた。それがはじまりの１日だった。この町では曇りの日が多い。私は五つか六つの頃に、ひとつ夢を見て、それを今でもかすかに覚えている。多分両親につれられて、大きな池のほとりにある建物の、五階だか六階だかにある和室で食事をしていた。旅館かもしれないがわびしげな和室でちゃぶ台を囲み、ちょうど私の位置からは窓の開いているのが見え、向こうに池と、その向こうに建つ高い塔のようなものが見える。その塔のてっぺんには赤いネオンサインがついていて、おぼろげにも思い出せずほとんど感触の記憶と言っていいほどだが、極めて単純な割に、記憶にこびりつく模様が赤く、朱色に光っていた。どちらかと言えば丸型に近いその模様はどことなくタブーの匂いがした。空は曇っていて、池は緑。私の越してきた町はここではないかと思っている。手のひらの力を抜いて指先を内側に軽く丸めると、その空間に妙な感触が生まれる。力を込めてはならないやわいものを包んでいる感じだ。私はそれを、何か昔に触ったものの記憶だと考えていて、思い出したように手の形を作っては、それが何かを突き止めようとするのだが、いつもうまくゆかない。歯痒さだけが残る。このネオンの形と場所に関する記憶も、これとよく似ている。私はそれまで、法人を相手にした調査会社に居た。ある件について、いま考えれば私は無茶をしすぎたように思う。怪しげなもうけ方をしている会社に近付くために、そこの資料を取り寄せようとした。さすがに自分の会社名義ではまずいので私の個人の名前で。ある晴れた休日の昼下がり、電話が鳴った。この電話には出ない方がいいと考え、留守番電話に切り替わるのを待った。息をひそめて。男の声が聞こえた。いるのは分かっているんですよ。電話が切れて間もないうちに、戸口に足音がした。ハイヒールだと分かった。この話の続きはまだおそろしいので書く気がしない。けれど私はこの件絡みで、今の町へ移ることになったのだと信じている。自分のことであるにもかかわらず、確信の持てないことが多くて恨めしい。それからしばらくは、精神病院に居た。病人用の衣服を着せられ、晴れた日には表へ連れていかれた。暗いトンネルの中で整然と並ばせられる。先頭には看護婦長、最後尾には監督の男性がひとりと看護婦が数人。看護婦長は私たち収容者の方を向いて厳しい声で指示をする。スケッチブックとクレヨンを配られて、丘へ移動する。緑の丘はひろびろとしていて、空は晴れて青い。私は仕方が無いので景色を書きはじめる。隣にいた男性の絵を覗き込むと、そこには見えもしない人間がびっしりと書き込まれている。びっしりと書き込まれた人間たちが苦しんでいるのがわかる。私は病院よりも彼が、そしていまだに知れない私自身の収容理由がおそろしい。たぶんその病院を何らかの形で出たのだろう。そうして私は今の町に辿り着いた。この町で私は仕事を持っている。少し西に進んでから北にのぼると砂丘があって、そこには政府高官たちを迎える御用邸のような洋館がある。そこで料理の配膳などをするのが私の仕事だ。たまに母もいる。ある日、砂丘に居たときに突然大きな地震が起こった。ここの海はたまに気まぐれを起こすのだが、それと関係あるかは知れない。ただ、ここの海がやたらに元気のいいことは確かだ。地震のあち、十数センチの厚さの波が砂丘を嘗めるように迫りあがってくる。その目を疑うような速さと衰えない勢いに押され、逃げるのもままならない。砂は人の脚をとる。気が付いたら病院に居た。腕の骨を折ったらしいけれど手当てはもう済んでいた。人に呼ばれて重傷者の病室に行くと、昔の恋人がいる。脚を片方膝から下と、片手を失い、残った手の指ももう使い物にならない。ごめんね、ごめんね、と繰り返しながら私は泣く。

  2006/07/11

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• 夢の整理（夢の町について）

  ひところ眠るたびに行っていた同じ町と思しき場所に、私はこのごろまた行くようになってしまった。そこではとてもおかしなことが起こり続けている。淡々と、でも気の狂うような時間が流れている。暗黙の了解とか、秘密が多くて、しかも尋ねないのも礼儀らしいから、新参者の私さえ、何も知らないのに知っている顔をして、毎日を素知らぬ顔で過ごさなければならない。ひどく繊細なバランスの上に成り立っている日々だ。そしてその脆い日常を守るために、町の人々は優しく、冷たいのかもしれない。何も語られないまま継承されていく常識。説明を求めず、見えたものを飲み込むこと。続けて、受け継いで行くこと。いつか誰かが沈黙を破るのではないかという期待と恐怖。みんな何かを知っている。みんな何かを待っている。みんな何かに怯えている。そんな町だ。曇りの日が多い。長くなるけれどここから、今までのことをかいつまんで記そうと思う。

  2006/07/10

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• 初恋エスカルゴ

  初恋、という映画を見に連れてってもらう。余裕をかまして映画館の正面でゆっくりお茶を飲んでいたら、満席でもう入れないと言われてしまった。めげずに吉祥寺から渋谷へ向かう。吉祥寺の雑貨屋さんにあったお風呂用のグッズと、私の爪と、ハンカチと、友人の携帯とが同じ色で笑う。今日こそは歩かないと高をくくっていたため、ふたりともサンダルだったのをちょっと後悔する。映画は硬派で面白かった。あの時代を生きてみたかった。自分が思ったほど世の中向きではないと気付いて、ちょっと戸惑っている今だったから余計にそう思ったのかもしれない。もういちど吉祥寺へ話を戻すけれど件の雑貨屋さんに、ディスプレイだろうエスカルゴの殻が置いてあった。エスカルゴ、かたつむりに似ているとは思っていたけれど、本当にかたつむりなのかな、という疑問に答えは出なかった。今もまだ調べては居ない。焼いて食べるときに確か、あの触角はなかったと思うんだけど。焼けて縮んだかちぎれたかしたんだろうか。かたつむりが焼けて行くオーブンの中の様子を思い浮かべたら、しばらく食べたくなくなった。私はフランス料理、特に好きじゃ無い。食べなれない食材は、なぜか日頃の食事を棚において、やたら残酷な気がしてしまうし。映画、ありがとうね。

  2006/07/09

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• 蛾に阻まれた帰宅

  昨日の夜の話。一週間分くたくたになって足取りも重く、ようやく部屋に辿り着いたと思ったら、部屋の扉に分厚くてでっかい蛾が止まっていて入れない。入れない、というよりも近付けない。びとっと貼り付いていて動く気配もない。じわっと脂汗がにじんでもう無理。そういえば去年は巨大なカマキリで、おととしは巨大なカブト虫だった。年に一度オオモノが出るのは、決まりなのだろうか。3人の男友達に電話をし、助けを求めるけれど、ひとりは会社でしかも遠すぎるし、もうひとりも会社だし、もうひとりはまだ繋がらない場所にいるしで、私は泣きそうになった。逡巡している間に夜はぐんぐん更けて行く。あたたかい夕飯も冷たいビールも、この変な暑苦しい空気の温度に向かって、ぐんぐんその差を縮めて行く。もういや。私は意を決して、失礼きわまりない策を実行することにした。半年前に引っ越してきた階下の男の子。そのとき挨拶に来てくれたときの印象がとてもよく、彼ならきっと手伝ってくれるだろうと。しかも、窓に電気がついているのをチェック済み。でもなあ、でもなあ、あのとき以来話したことも無いし、顔もよく覚えてないし、もう夜の10時半だし、ああ、ああ、でも、入れない、と行ったり来たり。運良くか運悪くか誰も通りかからなかったけれど、傍から見たらあたしは相当怪しかったと思う。意を決して彼のチャイムをピンポン。なんて切り出そうかすごくすごく考えて、何度も何度も頭の中でリハーサルをしたけれど、こんなお願い、他に言い様も無い。奇跡的に彼は玄関先まで出てきてくれて、私は望んでいたことな筈なのに引っ込みが着かなくなって、自己紹介を半年ぶりにしてから、素直にお願いをした。「あの、夜分遅く突然本当に申し訳ないんですが、　どうしても助けて頂きたいことがあって。　うちの部屋のドアに蛾が止まっていて、それが大きくて、動かないし、　うちに入れないんです。追っ払うの手伝っていただけませんか？」一息で言ったら拍子抜けする位こころよく、しかも笑いながら、「ああ、いいですよw」彼もびびる程の大きさだったため、これもまたチェック済みだった彼の部屋の外にある傘を使うことを提案。ゴルフみたいな感じで追っ払ってくれました。「どうもありがとうございました。　おかげさまで週末をはじめられます。」「いえいえ。また何かあったらいつでも言って下さい」なんていい人！

  2006/07/08

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• 去年の今日の話

  イギリスのテロから１年、というニュースをみて思い出した。私は去年の今日、このニュースを、アメリカで知ったのだった。私は去年の今頃、10年ぶりの長い夏休みをとって、アメリカで１か月過ごしていたのだった。そのときの私は家族を思ってホームシックになるほど、向こうで幸せに過ごしていたんだった。来年の今日のことなんて考えもしなかった。七夕、という行事よりもリアルに、私はテロのニュースで去年の今日を思い出す。とても暑くて、レモネードを飲んでいて、底に砂糖がざらざらと沈んでいて、でも大学のその場所はおそろしいほど冷房が効いていた。満ち足りた時間だったと思う。戻りたい時間だ。今が、今でさえあればよかった。約束も、名前も、いらないと思えた。旅はちょうどなかばに差し掛かったあたりで、まだ時間はあると思っていた。携帯を持っていなくても安心だった。幸せと言うよりもあの時間は、嬉しさで輝いていた。そのうちくる未来は、この日々に似たかたちをしているだろうと、信じて疑わなかった。未来の日々のリハーサルだと思っていた。肌をじかに焼く強い陽射しと、からりとした空気と、９時になってもまだ明るい日の長さが、時間からリアリティを奪っていた。でも、夢は終わってしまって、私は今年の今日、ひとりでテレビのニュースを見ている。

  2006/07/07

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• ねえ一体

  何から専念すればいいのかな、そう思ったとたん混乱してしまった。きちんと決まった額のお金を稼ぐ仕事。ぽろぽろと飛び込んでくる割りのいい仕事。在籍リミットは先だけれど限りの有る学業。いつかは、いつかは、と思っている夢。終わったんだかなんなのか白黒つかない恋愛。体力増強のためのジム。ほこりをかぶっているサックス。お皿が重なったままのキッチン。ねえ、何からすればいいんだろう。眠るために目覚め、目覚めるために眠る。よく考えないように忙しくしていたけれど、そのうち考えたくても考えられないくらい、毎日に人間らしさを吸い取られて行ってる。今日が去年のいまごろの、夢のような夏休みの始まりの日だったらいいのに。

  2006/06/19

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• ひとりピザ

  やってみたかったことを、一応やってみよう、と決断するときが有る。そのうちのひとつ、ひとりデリバリーピザ。Sをふたつと、ラザニア。ぜったいに食べきれない。おまけにおまけのフライがついてきた。つまんなかった。ぜんっぜん。ピザは、思ったよりも食べられないものなんだね。これでわかった。もうやんないでしょう。やったこと、のリストが長くなったと同時に、もうしない、のリストも長くなった。こんな風にあたしは、どんなにばかげていると思っていても、やってからじゃないと実感をもてないことが多いんだよ。だから言わないで。「そのくらい、考えればわかることでしょう」「どうなるかなんて、わかってたはずでしょう」「もう大人なんだから」あたしは考えても分からないし、先のことなんて分からないし、それに、腐っても大人なんかじゃない。もっと、世の中向きの人間だと思っていた。世界中のほぼ全ての人が葛藤し、苦悩し、なやみもだえ狂いそうな思いを押し殺して毎日と折り合いをつけ、それを繰り返すことを想像し、そして生き続ける意力が萎えるほど疲れているなら、なぜこの世の中はこんな形で今日も、明日も成り立っていられるんだろう。どうしてひとりでピザなんか頼んじゃったんだろう。

  2006/06/18

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• 部屋を探し、歌う。

  次にすむ場所を何となく探す。広いところも有った。駅に近いところも有った。だけれどなんとなく気が進まない。駅からは遠いしそこまで広くないし、だんだん古くなってきたしご近所さんはにぎやかだけど、なんだか好きなんだよな、いまの場所。部屋そのものへの愛着、と言うとピンとこないけど、この部屋にまつわる思い出は明らかに大きすぎる。思い出ごと引っ越せるなら躊躇はないけれど、そうもきっといかないんだろうから、ふんぎりがつかないんだよね。本棚置き場になっている大きな出窓も、裏に広がる東京なのに嘘みたいな畑も、ベランダなんて呼べない窓の外も、ここで泣いたり笑ったり幸せだったり苦しんだり、熱を出したり酔っぱらったり抱きついたり、そんなすべてと同じくらいにかけがえのないこと。部屋をいくつか見せてもらった後、実際にひとりで散歩がてら歩いてみることにした。そして迷った。住宅街って怖い。やっとのことで（２時間後）駅に辿り着き、さあ帰ろうかというところで週末の呼び出し。２人で飲んで、２人で４時間歌って、おうちにお邪魔して、DVDを見るつもりが寝てた。朝の空気の中、てくてく自分の部屋に帰る。それで思う。やっぱいいな、ここ、って。

  2006/06/17

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• 指に毛

  指に毛が生えた夢を見る。指の腹に、歯ブラシを刈ったように短い毛が、さわさわと立ってびっしり生えていて、何を触っても毛が触れるので気持ち悪かった。直接、指の肌で触れることができなくて、もどかしいやら気色が悪いやらで狂いそうだった。しかも、なんだか恥ずかしかった。

  2006/06/16

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• 日本が広く

  日本がまた、ちょびっと広くなった。何も決めないから、よけいに縛られてしまう。じゃあね、と留守番を頼まれたようで、あたしは変な責任感さえ感じてしまう。ついに始まらなかった関係と、どうなれば終わりと呼べるのかが分からない関係。始まらないものと終わらないものの間は、その「のりしろ」のような場所は、自由の面をつけたまま、あたしの喉を両手で絞めて行く。

  2006/06/15

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• 目玉で見る

  わたしは、目玉で見て、外耳で聞いて、唇と舌で話して、舌で味わって、肌で感じて、鼻の内側で嗅いでいる、と信じている。ほんとうは全部、頭の中の脳みそによって情報にされているなんて信じたくない。ついでに恥を忍んで白状すると、いまでも心は胸の中にあると思っている。心臓がハート形をしていても驚かないし、音を顕微鏡で見たら音符の形をしていても、私はちっとも驚かないと思う。とりあえず、心とかいうのも脳みそだよ、なんてこと、ぜったいあたしに言っちゃ駄目です。

  2006/06/14

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• 女の意地

  一晩の徹夜で、この肌荒れが劇的に悪化するわけもないから、なんとなく「女の意地」路線に行ってしまうことにした。ここまでくると、なんだか、学生時代のきつさと秤にかけるのもおかしいくらい。あの頃のようにきついことなんて、もしかしたらもう、ないのかもしれない。背負いきれないことを背負うというか、他人のミスを自分で背負うことは無い。他人のミスは他人のミス。分かってくれる人は見つけてあるから、おこられようとも内心は平然だ。いい感じに、仕事は「できるやつ」で通っている。これが吉と出るか凶と出るか。分からないなりに試行錯誤のキャラ作りだから、まだまだ何とも言えないけれど。すっとした風情で、無理難題をこなしつつ、確実にバリアは常に張っている。そんなのが理想なんだけど。どうなるかな。明後日帰ってくるあの人に、あたしはどう映るんだろう。大好きなのかもしれないな。今はまだ、きっと。

  2006/05/23

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• 叫びたく

  叫びたくなることもある。だって、つまんないんだもん。無神経なんだもん。勝手なんだもん。わけ分かんないんだもん。笑えないんだもん。そんな風に。興味をそそる男の人が、奇跡的に複数存在する。そんなオフィスが今のところの慰めであり、そして同時にストレスのみなもと。自分自身の絶対的なキャラは構築に向けてなお試行錯誤の発展途上ではあるけれど、他の女の子とは違うことははっきりできたと思う。はっきりしちゃってちょっと悲しいのも現状。海系のピアノをかきなぐっていたあのひととも、尋常じゃなくハイレベルな４ビートドラマーとも、静かに止められない一直線なお姉さんとも、みんな違う。違って当然万々歳だけど、違い過ぎるよ、とも思うのね。

  2006/05/22

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• アイドル再来

  10年の隠れファン期間を経て、なんとなんと仕事でシアターブルックデビュー！燃えたね。観覧か取材か選べたんだけど、写真欲しいばっかりに、「取材」に丸を付けて提出。冥利ってやつ？たまには許されてよくない？

  2006/05/20

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• 好きなひと

  どんなひとが好き？と訊かれて最近は、ひとつのイメージが頭に浮かぶようになってきました。思うにあたしは、一緒にごはんを食べるときを想像します。もちろん一緒に噛むのだから、同時に口を閉じてしまえば言葉はありません。耳や目が働く時間になります。それでもそんな時間が、まるで苦痛では無いひとがいい。そして、ふとした言葉にお行儀のよさがあると、あたしはもうかなわないと思います。「おはし」「おみず」「ごはん」そんなふうに言葉を使うひとが好きです。もちろん、男同士のときや「外」であれば、別に「はし」「みず」「めし」でもいいのです。ただ、あたしにくれる時間の中では、恥ずかしがらずにまるで自然に、お行儀の良さをかいま見せてくれればな、と思うのです。ほぼ初めての妄想日記です。最近あたしは乱暴になってきてしまい、疲れややりきれなさ、苛立ちを言葉にぶつけるようになってきました。書く言葉ががさつだったり、いやらしさや単語の強さ任せな部分があったりして、全くいやになるなあと書いたそばからびくびくするのです。こんなにお行儀が悪いもの、母さんが見たらどんな顔をするだろう。そういうあたしの良識の箍みたいなもの、これもまた、厄介で照れくさいけれど有って助かっているもののひとつです。ワインをラッパ飲みしながらも、言葉への丁寧さは失ってはならないなと思います。だれか男の子に、とても電話がしたい気分です。

  2006/05/15

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• 優しく

  優しい人になれたらいいのになあ、と思う。そう思うこともある。あたしは結局自分本位で、そのくせあっちこっちを気にしてばかりで、行動はまるで優しかったり奔放だったりするけれど、内側はいつもいつもうじうじして、晴れ晴れしない。好きなように生きている、とか、結局いいひとなんだから、とか。そういうの、いいかげんうんざりだけれど、人の気とかなんとかを一切合切気にせずに、本当にるるるるるると生きられれば楽な気もするけれど。そしてそういう人は少なからずいるように見えるけれど。そうじゃなくて良かったなあと、めんどくさい自分を持て余しながらもどこかで、確実に安心しているのだ。数年前に確かに意気投合して、何かしら特別なつながりを感じて親密になった人が、時間を経て会うごとにどこかちがっていく。何かがこのひとを変えたのだろうか。それとも私が変わったのだろうか。あるいはお互いがか。変わらないというのもまた一つの変化なのか。この人に、今初めてあったとしたら、私は親しくなりたいと思うだろうか。近付きたい、知りたいと思うだろうか。そういう疑問をあたしに呼び起こす人がちらほらと現れ初めていま、「しばらくぶり」に「親しかった」人に会うのが怖くなっている。すこしくらい物足りなくても、毎日会う人に会い続ける方が精神的に事件はないと、そんなふうに割り切りたくもなってくる。公園で昼間から男友達とビールを飲む。結局もやもやのせいで買い物をしてしまい、反省するみたいに家で掃除や選択に励む。去年も母の日に、さざえさんを見たように思う。締めくくりは、正しい週末のいちにち。だから今日の日記には誰も、返事を書かないで下さい。何も付け加えないで下さい。付け加えられたらたぶん、もう我慢できなくなります。明日からまた、どうかよろしくお願いします。

  2006/05/14

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• 短い日

  短いいちにちでした。午前中に目が覚めて、もうひとねむり、と目を閉じたら、目を開けても目を閉じているくらい暗くて。さっき起きたのは夢だったのだろうか？そう思ったけれど確実に土曜の夜で。何時間もを、ぐっすりと眠っていました。またたきひとつぶん、と感じるほどの熟睡は何か月ぶりかで、夜眠れなくなるだろうことをうすく呪いながらも、仕方ないなあとまんざら悪い気もしないのでした。

  2006/05/13

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• back to myself

  What Ron had told me was real,and what I've been had inside was also true,the movie taught me, yes.The sound is what could be touched, felt, then seen.There's a new idea.Living is landing.Since released somewhere up in the air,we keep falling, maybe slowly, or maybe fast.and the thing so-called 'death' is another name of landing.Landing is a state of peace, and a kind of ending.There would be no more, no falling, no thrill, no wind.Yet the landing is what we cannot refuse.Live toward the land.How high was it at the moment of birth?No way of knowing it.Only God knows.If He is, this life is a gifted travel to the earth.Mother ground will surely be waiting for us with warmth.It's like gravity.Time, thoughts, words, music, and love.I got words tonight.I got my words toghit.I can even feel words emerging inside my body.How wonderful it is..I got myself back to me.I'm home.Welcome home.Yes, I am a home of myself.Absolutely.

  2006/05/12

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• things called love

  私は気持ちわるいくらい、いろんなことを諦めている。だから、もう誰も責めないし、もう誰も嘲らない。ただ、時に悲しくなる、そうして毎日を繰り返している。半分も使わずに、心を、野放しにしている。そんな私だけれど、ごくまれに、狂うほど知り尽くしたい人に出会えることがある。知り尽くすことなどできないと、はなから諦めてはいる。それでも諦めきることはできずに、いっそ狂えたらと思うほど強く誰かを思うことがある。

  2006/05/11

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• 地下05に捧ぐ

  だんだんと、書くことができなくなってきたのは、というよりも思うままに書こうとしても指が迷い、無理強いをして軋みながら嘘を絞り出すようになってしまったのは、やっぱり普段の生活に原因があるように思う。大学生の頃、あんなに言葉が湧いて湧いてとまらなかったのは、あたしの周りに居た人たちの中に、比較的多く、言葉を持った人が居たおかげに他ならないと今日気が付いた。特に、バンドの同期は揃いも揃って「個性的」だが、それぞれ独自の言語文化を切り開いていて、しかもさすがに独自の文化だけあって各々の体に馴染んだ言葉ばかりで、あたしはいつも、叶わないなあと惚れ惚れしていたのだった。身の丈に合った言葉や、自分の呼吸に基づいた言葉や、きちんと自分で探してつなげた言葉が、どれほど贅沢で美味だったことか。判で押したような。という表現を軽く越えて、貧しく乏しい言葉の中に埋もれる日々は、確実にあたしの中からいろんなものを吸い取っている。だから、焦ってたくさんの本を読む。焦って映画を見、知らない音を聴き、強烈だといわれる人に会いにも行き、満たそう、肥やそうとするけれどあたしの心と体は、それらを素直に栄養とは見なせず、違う違うと首を横に振るばかり。だってつまんないんだもん。話すことも書くことも全部、つまんないんだもん。型にはまっているか背伸びをしているか、単なる乏しさからくる不自由さか常識の無さか、それぞれの原因はあたしには分からない。だけれど何で、満足な文章を書ける人が、自然な言葉を話せる人がこんなにも少ないの？話をしていて気持ち良くなれないの！あたしが欲しい生きた言葉は、それを以て活用して生きている大切な人々の中にしかない。どれだけすばらしい、めぐまれた言語環境に置かれていたか。表現のための表現などというひとりよがりではなくて、なんなんだろうあれは、凄いよ地下の05、と思うんだ。とにかく、人は良くても言葉がつまらない最近。ああ、飢える。思い当たる原因を見つけて、ちょっと気が済みつつも、ちょっと事の重大さが目に痛い。それにしてもみんなが改めて懐かしく、改めて誇らしい。音にばかり目が行きがちなあの頃だったけれど、落ち着いて振り返ると、凝りずに入り浸った理由がわかる。がんばるよ；）

  2006/05/10

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• 機械と男たち

  事務所に新しい機械が一式届いて、音響がめっちゃすごくなったとかで、セッティングや説明書の内容に、はしゃぎまくる男のひとたち。おお、大の大人が子どものようである。なんでそんなに目が輝くんだ。本など手に取らないひとが、説明書を食い入るように読んでいたり、普段なにげに席を立たない人が、軽いフットワークでいじりにいったり。やっぱり謎である。どうしてそんなに機械が楽しいんだ！楽しそうな顔はみていておもしろいけれど、賑やかすぎて仕事ができませんでしたwそしてひそかなマイルールを決めました。一定の時間までに仕事が終わらなかったら、次の日の早朝にやることにしよう。今までは、終わるまで残っていたけれど、経過時間に反比例してやっぱり効率は落ちるよ。それに、誰もいない方がものを書くのに好い。言葉を１から組み立てて作品に仕上げるのは、だってあたしだけしかやってないじゃん、今。

  2006/05/09

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