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悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

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2005年10月16日
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   4.柴山泥酔事件〔其の1〕


 「とある山奥に、小さな池が有って…、若いカップルが其の池に近付くと、或る生き物が出て来るんだ。
何だと思う?」
「山が有って池が有るんでしょ…? 
其れは襲って来るの?」
「どうかな…? 
でも毒を持ってるかも知れない。」
私は紙とペンを借りて来て、絵を描きながら話をした。

「ワニ?」
「違う。」
「小さな池だったわね。
魚?」
「魚じゃ無い。」
「池に遣って来るのは、若いカップルじゃなきゃ駄目なの?」
「好い質問だ。
若く無くても、カップルで無くても良いんだが、二人で無いといけないんだ。
一人の時は、其れは居ないんだよ。」
「…?」
「誰も遣って来ない時も、其れは居ない。」
「…全然わかんない。」
「カップルが池の反対側から近付いても、其れは出て来ないんだ。」
「降参。
何が居るの?」
「へびさ。」
「蛇?」
「そう。
へび。」

 コンパが中盤を迎えた頃、私はトイレに立った。直ぐ後から、淳一と野口も入って来た。
用を足しながら協議した結果、私の受け持ちはヨーロピアンに決まった。
ニュートラ等に比べ、ヨーロピアンは最初から殆ど笑わず冷めた感じであったが、案外落とし易いと私は踏んでいた。
トイレから戻って、我々は受け持ちの隣に座れる様、席替えを行った。
私は初めからヨーロピアンの隣だったので、その儘だった。
各自は女に質問を始め、相手にも沢山話をさせる様心掛けた。
場は次第に、話題を決めた全体的な会話から、二人きりの対話へと移行した。

 「私って話してても、余り面白くないでしょ?」
ヨーロピアンが云った。
「そんな事ないよ。
どうしてさ?」
「人の話に巧く乗って行けないのよ。
冷めてるって、よく云われるわ。
可笑しいと思っても、直ぐに笑ったり出来ないの。
鈍いって言うか、表情を造るのが下手なのね。」
「でも其の事は、君を魅力的に見せてるよ。」
「有り難う。
そんなに気を使って呉れなくて好いのよ。」
「気なんか使わないさ。
少なくとも俺は君に悪い感じはしない。」
「本当にそうなら、嬉しいわ。」
「そうじゃ無かったら、席替えの時に他へ行ってるさ。」
「貴方がさっき色々話してた事、とても面白かったわよ。」
「笑って貰う為だけの意味の無い話さ。
でも君の反応が気になってたから、好かったな。」
「他の娘がぱっと先に笑い始めるでしょ、そうするともう駄目なのね。
自分だけ、変な笑い方しそうで…。」
「そう言えば、前に座ってる娘はよく笑ってたな。
此方が喋り終わらない中に、もう笑ってんだもの。
でもああ言うのは、馬鹿に見えるよ。」
「駄目よ。
聴こえるわ。」
「彼女、子供の頃に重い病気してるって事聞いてない? 
40度位、熱が出たとか…。」
「しっ…、聴こえるってば…。」
「あっ、何か私の悪口云ってるんでしょ?」
ニュートラが、此方へ身を乗り出しながら云った。
「違うよ。
病気の話さ。」
私は云った。
「何なのよ、其れ。
好い雰囲気に成ってると思ったら、もう二人だけの暗号造ってるのね。
いいわよ。
私、病気なんて持ってませんからね。」
ニュートラは口を尖らせた。
ヨーロピアンが、声を上げて笑い出した。

 コンパは終わりに近付き、二次会は皆でディスコへ繰り出す事が決まった直後に、事件は起きた。
西沢が「柴山が居なくなった。」と云うのである。
柴山は私から一番遠い席に居たのだが、彼方では「一気」の掛け声が盛んに挙がっていた。我々は事前のミーティングで、未だ酒を飲み慣れていない者もメンバーにいる為、今回は一気飲みで盛り上げる事はしない約束だった。
然し、どうも柴山の受け持ちの女が、物凄い酒豪であったらしい。
西沢の話に因ると、柴山は其の女とウィスキーのストレートをグラスに5杯、下手をすると其れ以上一気したと言う事だった。
女の方は、全く平気な様子であった。
「酔っ払って、外へ出ちまったのかな?」
「確かトイレに行くって云って、席を立ったきり帰って無いわよ。」
西沢の隣の女が云った。
「トイレへは行かずに、彼方の辺で一人でテレビゲームをしてたわ。」
酒豪の女が云った。
(そいつは、いけないな…。)と私は思った。
私と西沢はトイレへ行ってみた。
柴山の姿は無かった。
「此の中じゃねえか?」
西沢が一つだけ閉まっている扉を叩きながら云った。
「柴山!」
呼んでみたが返事は無かった。
扉は鍵が掛かっていて開かなかった。
唯、鍵が掛かっていると言う事は、中へ人が入って掛けた理由であり、店の中で姿が見えないのは柴山だけであった。
私は背が高いので、上へよじ登って中を見た。
柴山は便器の中に片足を突っ込んで寝ていた。
彼の服には、彼の胃の中に有った物がべっとりと付いていた。
「柴山! 起きろよ!」
彼は「うぅん…」と小さく唸っただけで、全く起き上がる気配を見せなかった。
取り合えず、私と西沢は彼を其処から引き摺り出した。
布巾を借りて来て、水に濡らし絞ってから、彼の口許や服を拭いてやった。
然し其の時、トイレの入口へ店に居る者全員が集まって、此方を見ていた。
酒豪の女は一言謝ったが気分を害した様子で、「もう帰る。」と云い出した。
他の女達も大体同じ意見で、我々は何とか引き止めようと骨を折ったが、彼女達の気分は戻らなかった。
誰かが「最低よ。」と云ったのを聴いて、我々は諦めた。
唯、ヨーロピアンの女は、残念そうな表情を見せて居たが、大勢には逆らえない様だった。

 女達が帰って行った後、我々はトイレを掃除し、柴山を抱えて店を出た。
店の外で柴山が目を覚すのを待ったが、彼は
「…俺…、…好いよ…、…寝るよ…、…此処…、」
と呟くだけで、動こうとしなかった。
我々は一人が全員の荷物を持ち、三人が柴山の頭と背中と脚を抱えて、駅へ向かった。

 新宿で降りて、歌舞伎町に有る「ニューヨーク・ニューヨーク」と言うディスコへ行った。
柴山は未だ殆ど意識が無かったが、私と淳一が常連だったので全員中へ入れて呉れた。
柴山を暗がりになった奥のボックスへ寝かせて置いて、我々はやけくそで踊った。
くたくたに踊り疲れて、フロアを出ようとした時、
「ヘェイ、何だよ! 
もう休むのかよ。
もっと踊ろうぜ!」
と、背後から威勢の好い声がした。
我々は振り返った。
何時の間にか、柴山が元気に踊って居た。

 中野ファミリーの最初の行事は、5月20日の三栄荘に於ける夕食会だった。
メニューはカレーであった。
作り始める前に、香織とフー子が「カレーライス」と「ライスカレー」で揉めていた。
香織がどちらも同じだと云うと、フー子は「カレーライス」は御飯とカレーが同じ皿の上に盛ってある物で「ライス・カレー」は御飯とカレーが別々に出て来る物だと云って、互いに譲らなかった。
「どっちでも好いじゃない。胃の中に入れば同じさ。其れより、御腹が空いたよ…。」
柳沢が云った。
世樹子が支度を始めたので、香織とフー子も決着の着かぬ儘、其れに取り掛かった。
「あれ? ルーが無いじゃない。」
彼女達が袋の中から材料を取り出すのを見ながら、私は云った。
「あなた若しかして、ルーが無きゃカレーは作れないと思ってるんでしょ?」
香織が云った。
彼女達は、カレー粉から作るのが本当のカレーだと云った。
「時間が随分掛るから、二人で何処かへ行って遊んで来れば…?」
香織は、私と柳沢に云った。
カレーを作ると聴いて、割りと直ぐ出来るだろうと考えていた私は、少し驚いた。
「じゃあ、風呂へ行って来よう。」
石鹸が小さくなっていたので、私は新しいのを出して来て、小さくなった石鹸をゴミ箱へ捨てた。
「ああ! 鉄兵君、勿体無い。」
世樹子が云った。
「どうして捨てちゃうの?」
「だって、小さくなると使い辛いもの。」
「あら、新しい石鹸の上に重ねて使えば好いのよ。
それに今捨てたの、そんなに薄くなって無かったじゃない。
勿体無いわ。」
私はゴミ箱の中から捨てた石鹸を拾い上げ、新しいのと一緒に石鹸箱に入れた。
然し容積が足りなくて、蓋が閉まらなくなった。
私はその儘洗面器の中に石鹸箱を置き、柳沢と二人で銭湯へ出掛けた。

 脱衣場で服を脱いだ後洗面器の中を見ると、矢張り二つの石鹸は、箱から別々に転がり出ていた。


                         〈四、柴山泥酔事件(其の一)〉





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Last updated  2007年02月06日 00時34分08秒
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