640698 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

ゆうとの428

ゆうとの428

Recent Posts

Category

Favorite Blog

久しぶりに行きまし… New! ruccさん

D'Addarioダダリオの… hanewoさん

iTunes iPod 私的 iM… APPLEマニアさん
TOYO’S ART… DONYAさん
joker   (;… jokerさん
☆korekara☆ゆっくり… charizaさん
あみぷぅの日々是好… あみぷぅ♪さん
ママ優先の子育て日記 からりょんさん
あまなっぷるの長閑… あまなっぷるさん
公立、四年生まで塾… はりせんぼんaさん

Comments

分かります。@ Re:いつでもどきどきしてるんだ ~みんなのうた~(03/09) 私が中学生の頃だと思います。 途切れます…
すけきよ@ 懐かしい この曲って1978年放送の「長島監督ご…
トレロカモミロ@ Re:いつでもどきどきしてるんだ ~みんなのうた~(03/09) 知ってますよ。この歌もう一度聞きたくて…
みやっち@ Re:とうとう、高校3年生になりました。。(06/20) 初めて書き込みします。 最近こちらに出会…
書き散らして逃げですか?@ Re:中学受験終了!(02/01) 肝心の大学受験結果を報告してください。…
それで?@ Re:とうとう、高校3年生になりました。。(06/20) これだけ自信たっぷりに公衆にメッセージ…
ご報告を@ Re:中学受験終了!(02/01) その後附属からどちらの大学へ進学された…
責任を@ Re:あなたは・・、何て言ったの・・?(06/24) これだけのことを書いたのだから、息子さ…
実証?@ Re:子供を東大へ行かせる方法 11(12/14) 興味深く拝見しました。それでこのメソッ…
グッチ 折り財布@ ifxnugt@gmail.com 今日は~^^またブログ覗かせていただき…

Calendar

Archives

2024年10月
2024年09月
2024年08月
2024年07月
2024年06月
2024年05月
2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月

Keyword Search

▼キーワード検索

2005年11月06日
XML
   36. 共立女子大学合コン


 10月12日の夕闇迫る時刻、私はクラスの仲間と総武線に乗っていた。
「確か1人、可愛い娘が居たよな?」
淳一が云った。
「ああ、大柄で色白の娘だろ?」
「大柄…? 
割と小ちゃい娘だったよ。」
「そうだっけ…。
髪が長かったよな?」
「…? 
どの女の事を云ってるんだ…?」
「だからスラッと背が高くて、顔のポッチャリした…。」
「矢っぱお前とは、女の趣味が全く違うらしいな…。」
新宿で電車を降りた。北口の階段を上って行くと、案の定アルタの前は、人で溢れていた。
「居るか…?」
横断歩道の前で、西沢が云った。
「人が多過ぎて、よく判んねぇな…。」
信号が変わり、我々はアルタ・ビル前の人込みの中へ入って行った。

 共立女子大の5人は、右奥のエレベーターの前に居た。
「ハイ。」
「待った?」
「ううん、私達もさっき来た処。」
私は直ぐに、背が高く髪の長い「ゆかり」と言う名の女の側へ行って、話し掛けた。
其の頃我々の合コンでは、毎回待ち合わせ場所に於いて、気に入った女の獲得戦が展開された。
そして其の場で、其の夜のカップリングが為されるのが常だった。
「又逢う事が出来て嬉しいわ。
本当に来て呉れるのかなって、不安だったの…。」
「来るに決まってるじゃない。
約束したんだから…。」
「だって、あの時あの店で初めて逢って、其れに、御酒の席での口約束でしょ? 
惚けられても仕方無いと思ってたわ…。」
「俺達は初めて逢ったや酒の席に関係無く、女の子との約束は、例え親が危篤だろうと守るぜ。」
我々は三々五々、店へ向かって歩き始めた。
私は無事、ゆかりの奪取に成功を収めた。

 コンパの会場は、靖国通りに面したビルの7階の居酒屋だった。
「此の前も、御座敷でやってたわね。
好きなの…?」
ゆかりが訊いた。
「ああ。
足が楽だし、好いだろう?」
「そうね…。
でも、他にも理由が有るんでしょ…?」
ゆかりは、薄い笑みを顔に浮かべて云った。
「実は、私達視ちゃったの…。」
「何を…?」
「此の前帰る時に、貴方達がコンパをしてた御座敷の前を通り掛かって…。
御免なさい。
覗く積もりじゃなかったのよ…。」
「別に好いさ。
見えたものは仕方無い。」
「いつも、あんな事やってるの…?」
私は少し考えてから云った。
「毎回では無いけど、まあ大体あんな感じになる事が多いな。」
「ふうん…。」
「俺達はさ、御互いが許し合えるギリギリの処迄、目一杯楽しもうって言う主義なんだ。」
「今夜も、あんな風になるのかしら…?」
「さあ…? 
君等次第だろうな。」
「貴方達次第よ…。」
ゆかりはグラスを口に持って行くと、早くも1杯目の水割を呑み干した。
私は慌てて、自分のグラスを空にしてから云った。
「野口、こっちお代り2つ。」
2つのグラスがテーブルを滑って行った。
「ああ、少し待って呉れ。
氷とミネラルがもう無いんだ。
今夜は皆、えらくペースが速いな…。」

 トイレに入って行くと、淳一が居た。
「お、鉄兵。
聴いたか…?」
「何を?」
「彼女達、全員、寮なんだってさ。
で、門限が10時…。」
「帰るって云ってるのか…?」
「ああ。」
「おい、冗談じゃねぇぞ。」
「勿論だ。
潰しちまうか…?」
「否、先ずはスマートに口説く事だ。
其れで駄目なら、全員一丸となって潰しに係ろう…。」
席へ戻ると、私は云った。
「ゆかりちゃんてば、酷いな…。」
「どうしたの?」
「君等が何故、随分速いペースで酒を呑むのか、其の理由が解った…。」
「門限の事?」
「そうさ。
ずっと黙ってて、時間になったら帰っちゃう積もりなんて、酷過ぎる…。」
「そんな積もりじゃないわ。
門限なんて、忘れようとしてたのに…。」
「だからさ、ニューヨークなんて、もう古いよ。
此れからは矢っぱ、イタカジさ…。」

 彼女達の寮の門限は、一応10時であったが、11時迄は門の鍵が開いてると言う事だった。
然し、其れ以降はどうしても無理だと、彼女等は云った。
其の寮では余程の事情でも無い限り、外泊は全く許可されず、外泊した事が発覚すると、厳重な処分と親元への通達が為されると言う話だった。
「私達、夜は駄目なのよ…。」
ゆかりは云った。
「良かったら、今度昼間に、ゆっくり逢って欲しいわ…。」
「俺達には、今度なんて無いよ。
今が全てさ。」
「もう私と、わざわざ逢う事は、面倒…?」
「違う、そうじゃない…。
今夜、こうして君と逢ってる以上、俺は今夜に全てを賭けてるのさ。俺が今夜全力を出し尽くしても、君が帰ってしまうなら、俺と君とは結局、其れ迄の関係だったと言う事だ。
此の次に逢っても、急度同じ事さ。
若し今夜全力を出し切って、猶再び御互いが逢いたいと思うのなら、其れはとっても素敵な事だ。
出し惜しみをしながら、少しずつ知り合おうなんて、年寄りの考えさ。
逢う度毎に、全力を出さなきゃ…。
俺達は若いんだぜ。
そして若い時間は残り少ないんだ。
御互い、ゆっくり逢ってる暇なんて無いさ。
今夜の君は、今夜だけの君だし、今夜の俺は、今夜しか居ない…。」
私は其処迄一気に喋った。
ゆかりは黙ってグラスに口を付けたが、少なからず心は揺れている様に見えた。

 我々の懸命の口説きにも、彼女達は首を縦に振らなかった。
素直に諦めれば良かったものを、我々は何故か意地になっていた。
財布に入れて来たコンドームが、無駄に終わる事を許せなかった。
後は、彼女等を帰れない状態にさせるしか、道は無かった。
急遽コンパは、呑めや唄えの大騒動となった。
「ジャンケン一気」が何度と無く繰り返され、全員立ち上がって肩を組み大合唱をした。
そして再び坐ると、又各所で「一気」の掛け声が起こった。
其の頃になって漸く我々は、彼女達が恐ろしく酒に強い、と言う事に気が付いた。
(こいつは、いけないな…。)
私は回転の鈍くなった頭で考えた。
「こら! 鉄兵! 私だけに呑ませて置く気…?」
私は自分のグラスに手を伸ばした。
「大体、男の子が女の子と同じ量しか呑まないなんて、失礼よ…!」
ゆかりは確かに酔ってはいたが、背筋は確りと未だ伸びていた。
「そうよ。
せめて2倍は呑んで貰いたいわね。
此れからは、男子は全員『ダブル一気』よ。」
(冗談じゃない。
そんな事をしたら間違い無く、こっちが先に潰れてしまう…。)
私はそう思いながら、口では「好いぜ。」と云う他無かった。

 中でも柴山の隣の女は、物凄い酒豪であった。
全く底無しと言う感じだった。
彼等は氷も入れず、ストレートのウィスキーを呑んでいた。
我々の脳裏を、悪夢の様な大妻女短大との、あの第1回合コンの記憶がよぎった。
柴山は既にフラフラの様子に見えた。
「ねえ、貴方、水割なんて男が呑む物じゃないわ。」
底無し女が私に絡んで来た。
「私と『一気』をして下さらない? 
勿論、ストレートで…。」
「OK。」
私は店員が持って来て呉れていたナイロン袋を、こっそり喉の下のセーターとシャツの間に挟み入れた。
グラスになみなみとウィスキーが注がれた。
「それじゃ…、乾杯!」
底無し女はゴクゴクとストレートを呑み始めた。
私もグラスを口に持って行き、上っ面をほんの少し呑んだ後、左手で喉元を押さえる振りをしてセーターとナイロン袋に指を掛け、グラスのウィスキーをナイロン袋の中へ流し込んだ。
ナイロン袋の口を押さえて置く為、私は左手を喉の下に当てた儘、勢い好く空のグラスをテーブルの上に置いた。
「視たわよ…。」
ゆかりが私の耳元で囁いた。
「狡いわよ。
でも上手いのね…。」
「あんなザル女と、まともに勝負なんて出来るものか。」
私はウィスキーの入ったナイロン袋を慎重に処理しながら、小声で云った。
「でも君となら、肝臓がショートする迄呑んだって構わないぜ。」
そう云いながらハッと前を視ると、底無し女が私のグラスにドクドクとウィスキーを注いでいた。
茫然と其れを見守る私に、底無し女は云った。
「さっき、云ったでしょ? 
男は女の2倍呑むって。
だから貴方はもう1杯よ。」
ナイロン袋を手にする余裕は無く、其れに今度は底無し女も私に注目しているので、先の手は使える筈も無かった。
「おぅ! 
呑んで遣ろうじゃねぇか!」
私は自棄糞に云うと、グラスを取り、底無し女とゆかりの声援を浴びながら、ストレートを一気に呑み干した。
熱い物が胃の中へ落ちて行った。
「大丈夫…?」
呑み終えた後、少しムッと来た私の様子を視て、ゆかりは私の背中を擦りながら云った。
「悪いから、私も付き合うわね。」
ゆかりは自分のグラスにウィスキーを注いで貰い、1人でストレートを呑み始めた。
「いいよ。止めなよ…。」
私は彼女のグラスを押さえた。
(此処が勝負所だな…。)
と私は思い、アルコールに溶かされ掛けた全身に気合を入れた。
「貴方の為に、私もストレートを呑みたいのよ。」
「其れなら、俺も一緒に呑むさ。」
私はグラスにウィスキーを注いで呉れる様云った。
「貴方はさっき、もう呑んだじゃない。」
「女の子に一人で『一気』をさせる理由には、行かないんだよ。」
私は彼女とストレートで乾杯した。
二人でグラスを空けた後、私は自分のグラスに又ウィスキーを入れた。
「男はもう一杯だよね。」
「私の時はいいのよ…。
そんなに立て続けに呑んでは良く無いわ。」
「でも約束だから…。
君の為にもう1杯呑みたいんだ。」
「駄目よ、少し時間を開けなきゃ…。
胃がおかしくなるわ。」
「君と一緒なら、血を吐く迄だって呑めるさ。」
私はグラスを取った。
「待って。
止めて、御願い…。」
彼女は私の手を握った。
「否、止めないよ。
俺は今夜、此処へ君と酒を呑みに来たんだ。
君はバカバカしいと思うかも知れないが、俺は全力で君と酒が呑みたい。
命を賭けて、君と酒を呑むんだ…。」
私は自分でも何を云っているのか解らなかったが、そう云って彼女の手を下ろさせた。
「解ったわ…。
でも待って、私も一緒に呑ませて…。」
二人は再び乾杯した。


                          〈三六、共立女子大合コン〉





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007年03月03日 15時36分50秒
コメント(0) | コメントを書く
[小説「愛を抱いて」] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X