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悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

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2005年11月14日
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   49. 心の儘に


 「昨日、遊園地へ行ったんですって?」
「ええ、とっても良かったわよ。」
「酷いわ。
全然教えても呉れず、黙ってみんなで行っちゃうなんて…。」
「朝になってから、急に行く事になったのよ。」
「香織も怒ってたわよ。」
「知ってるわ。
ゆうべ帰って話をしたら、『私も行きたかったのに…。』って、ずっと云ってたもの。」
「私も行きたかったなぁ…。」
「今度、又行けば好いじゃない。
みんなで…。」
「当然よ。
…鉄兵、今夜はやけに音無しいのね?」
「俺はいつだって、黙して語らず、だろ?」
「あら、渋めに変えたの?」
「否、唯…、君達二人は、とても仲が好かったんだなぁと思って…。」
「其れ、どう言う事? 
仲好いに決まってるじゃない…。」
「勿論、其れは解ってたけど…、思ったより、ずっと仲が好いって事さ。」
「解った。
私に妬いてるのね?」
「君等が一夜を共にした事は、聴いてる。
そして今夜二人の様子を視ていて、其の関係がよく解った。
然し、俺は君達の趣味について、とやかく云う積もりは無い。
唯、出来れば、俺も仲間に入れて呉れて…、いっそ3人で…。」
「駄目…。
私達、男の人は受入れられないの。」
彼女等は、確りと身を寄せ合った。

 私は3本目の煙草に火を点けると、灰皿を持って窓際へ行き、窓を半分開いた。
雨は未だ激しく降っていた。
「よく降るな…。」
少し風も出て来た様だった。
「台風が来てるんじゃない…?」
世樹子が云った。
「ええ? 
テレビは何も云ってなかったわよ。」
「そうだったわね…。
唯の通り雨ね…。」
「否、嵐が来るのさ…。」
私は窓を締め、カーテンを閉じると立ち上がった。
「帰るの? 
未だ雨降ってるのに…。」
「酒を買って来る。」
彼女達は顔を見合わせて笑った。
「私、樹氷が好いわ。
其れとスプライトお願いね。」
「でも、もう酒屋さん閉まってるんじゃなくて?」
世樹子は自分の財布から紙幣を取り出すと、小さく畳んで私のポケットへ入れた。
「大丈夫。」
そう云うと、私はドアを開けて部屋を出た。
そして風と雨の中へ駆け出した。

 ナイロン袋を下げてフー子の部屋へ戻って来ると、少しさっぱりした顔の世樹子が1人でテレビを視ていた。
「フー子はシャワー?」
バス・ルームの方をチラッと視ながら、私は云った。
「ええ…。」
焼酎の瓶をテーブルの上に置いて、私は一旦腰を下したが、
「身体が冷えたんで、トイレに行きたくなった…。」
と云って、又立ち上がろうとした。
然し、私は膝を突いただけで、膝から下を立てる事は出来なかった。
世樹子は黙ってテレビを見詰めた儘、片手で私のセーターの肘を確り掴んでいた。
「否、未だ我慢出来そうだな…。」
そう呟きながら私は坐り直し、煙草を1本銜えた。

 バス・タオルを巻き付けた姿で、フー子はバス・ルームから出て来た。
「こんな恰好で御免なさい。」
そう私に云いながら、彼女は鏡台の前に坐った。
「鉄兵君、トイレに行きたかったんじゃないの?」
世樹子はテレビから視線を離さずに云った。
「ああ…、そうだった…。
フー子、トイレ貸して…。」
「どうぞ。
でも未だ湯気が籠もってるわよ。」
「そう…。
じゃ、止めた…。」
行き掛けて又テーブルに戻る途中、私は素早く鏡の中を覗き視た。
「何だ…。」
私は呟いた。
「何が…?」
フー子は鏡台から離れながら訊いた。
「否…、タオルの下に、ちゃんとショーツだけは…。」
突然、背中に激しい衝撃と痛みを感じた。
世樹子の手であった。
フー子はベッドの布団の中に潜り込むと、トレーナーとジャージを身に着けて出て来た。
「鉄兵もシャワー使って。」
「俺は、いいよ。」
私は背中を摩りながら答えた。
「でも明日、合コンでしょ? 
銭湯に行けないんじゃないの?」
「合コン? 
何で…?」
「何でって、そうなんでしょう?」
「あら、若しかして、鉄兵君忘れてるの? 
酷いわ…。」
「え…?」
「世樹子のクラスの娘達と、鉄兵達で合コンするの、明日でしょう?」
「ああ…。
そう、明日だっけ…?」
「本当に忘れてたの?」
「否…、御免…。」
「ヒロ子達、ずっと楽しみにしてたのよ。
大丈夫なんでしょうね? 
明日…。」
「ああ、勿論さ。
淳一は来れないって、云ってたけど…。」
「あら、淳一君、来ないの?」
「うん、外せない用事が有るらしい…。」
「じゃあ、そちらは4人?」
「否、ちゃんと1人補充して有るから、心配は要らない。」
「そう…。
もう忘れないで頂戴ね。
明日なんだから…。」
「好いわねぇ、合コンなんて…。」
「でも鉄兵君は乗り気じゃないのよ。
私が居るから…。」
「そんな事無いさ…。」
「鉄兵、世樹子の前で浮気しちゃ、駄目よ。」
「私に遠慮しなくて好いのよ。
鉄兵君。
とっても可愛い娘達許だから…。」
「駄目よ。
他の娘達は仲間の人に任せて、鉄兵は世樹子を退屈させない事だけを考えてれば好いの。」
「其れじゃあ、余り鉄兵君に悪過ぎるわ。
元々鉄兵君は、ファミリーの私達とは合コンをやらないって主義だったんですもの。
でも、ヒロ子達の達てのお願いを聴いて呉れたのよ。」
「そうなの? 
じゃあ、私達美容学校の女はとても相手にして貰えないかしら…?」
「そんな事無いんじゃない? 
さっき、フー子ちゃんのタオル姿を見せて貰ってるから、絶対厭とは云えないわよ。」
「そうね…。
私、恥かしいのを一生懸命我慢して、サービスしたんだものね…。」
私は既に聴く耳を捨て、「樹氷」の水割を呑みながら、テレビに視入っていた。

 ユニット・バスを出て、フー子のヘア・ブラシを借りた後、私は再びグラスを手にした。
「でも、あなた達も、よくやるわね…。」
フー子は「樹氷」のスプライト割を、美味しそうに呑みながら云った。
「あなた達じゃなくて、俺に云ってんだろう?」
「私がいけないのよ、みんな…。」
世樹子は焼酎に炭酸と氷を混ぜ、レモンを浮かべて呑んでいた。
「ファミリーのみんなには、いつ迄隠して置く積もり?」
「今迄の事は、永久に黙ってるさ。」
「そうね。」
「近々、香織と手を切るから、そしたら…。」
「鉄兵を視てると本当、心の儘に、って感じがするわ…。」
「俺って、本能のみで生きてるから。
でも、そう云う君だって、いざとなったら何も顧みなくなるさ。」
「そんな風に出来たら、とっても素敵だと思うけど、私には急度其処迄は、無理だわ。」
「そんな筈は無い。
君は態と自分の心に、足枷を履かせてるんだ。
大体君は、こんなに人間の多い街で暮してるってのに、浮いた話が無さ過ぎる。
君程の女が…。
多分俺の知らない処で、結構甘い蜜を吸ってるんだろうが…。」
「厭だ…、私、何処でも吸ってないわよ。」
「…若し、其れが本当なら、其れは罪だぜ。
東京に生活する、若い全部の男に対する罪さ。
君には、男に関心を示す義務が有るんだ。
綺麗な女はみんな、其の義務を認識して貰わなくては困る。」
「…有り難う。」
フー子はグラスを頬に当てながら、微笑んだ。
「否、唯さ…、俺には前から…、君は誰よりも自由な心を持っている、そんな気がしてるんだ。
本当だぜ。」
「そう…? 
私、自分ではとても、あなたの様に振舞う自信は無いわ。」
「今はそうでも、急度いつか…、そう遠くない内に…。
だって、君は気付かない振りをするけど、君の心は翔びたがってるんだ。
何処迄も、自由に…。」
「無理よ。
私には…。
とても、そうは思えないわ…。」
「云っとくが、俺の眼は確かだぜ。
特に女を視る眼は…。
君が誰よりも淋しがり屋なのは、今にも翔んで行きそうな君の心を怖がってるからなのさ。
だから誰か側に居て呉れないと、不安なんだ…。」
其の夜、私と世樹子は其の儘フー子の部屋に泊まった。
彼女達はベッドで、私は下に布団を敷いて貰い、眠った。

 「こら! 
大学生! 
いつ迄寝てるんだ!」
フー子の声で眼が醒めた。
「…あ、…御免。
もう…、出掛けるの…?」
私は反応の鈍い身体を、慌てて起こそうとした。
「未だ、いいわよ。
もう暫く…。
コーヒー飲むでしょ? 
缶コーヒーだけど…。」
「あ…、わざわざ買って来て呉れたの…? 
悪いね…。
有り難う。」
既に世樹子の姿は無かった。
「世樹子は帰ったのか…。」
「ええ。
呉々も2度とド忘れしない様、言付かったわよ。」
フー子はメイクを済ませ、服も着替えていた。
「寝過ごしたな…。」
「鉄兵は土曜、授業無いの?」
「まあね。
専門を1つ入れてるけど、土曜は誰も学校には行かないよ。」
「流石ねぇ、大学生は…。
食欲有るかしら? 
パンが焼いてあるんだけど…。」
フー子は立ち上がって、台所の方へ行った。
「え…? 
勿論有るけど…、俺が食べ始めちゃって、フー子、時間はいいのかい?」
「いいのよ。
気にしないで。」
私は自分の寝ていた布団を畳んで、押し入れに入れようとした。
「あ、2つに折って、其の辺に寄せといて呉れればいいわ。
埃が立っちゃうから…。」
朝食の乗ったトレイを持って、彼女は云った。
私は布団から手を放して、テーブルをテレビの前へ持って来た。
「何か悪いな…。
泊まった上に、朝食迄…。」
「あら、前期の頃は、よく柳沢君と遣って来て、夜食を食べて行ったじゃない。
此の頃は洗濯にも来ないけど、どうしてるの? 
洗濯物。」
「何分、生活が不規則で、来れないんだ…。
溜まって、仕方無いから、下着は使い捨て…。」
「まあ、勿体無い…! 
洗いなさいよ。
一体何処へ捨ててるの?」
「銭湯へ…、捨てて来るんだ…。…!」
「ゆっくり食べて。
時間は大丈夫だから…。
其れから、洗濯機を使いに来てね。
幾ら夜遅くても、私は構わないから…。」

 「鉄兵は私の事、疑ってるみたいだけど、私は香織にも他の誰にも、黙って置く積もりよ。
信用して欲しいな…。」
「ああ、解ってるよ。
信用してる。」
「女同士の関係って、難しい処が有るのよ。
世樹子と私はね、クラスが一緒になったのは高校3年の時だけど、1年の頃から、一寸した事で知り合って、口を訊く仲だったの。
彼女、前は私の事、『フー子』って呼び捨てで呼んでたのよ。
でも、香織をどうしても呼び捨てに出来ないからって、3人でよく逢う様になってから、私は『フー子ちゃん』に格上げになったの。
こんな事、男のあなたには、よく解らないでしょうね…。」
「うん、よく解らないけど、二人が昔から仲良かった事は解る。
柳沢が、いけないんだ。
俺が君の存在を初めて知った時、柳沢は君の事を『香織の友達』って云ったんだ…。」
「あら、其れは嘘じゃないわよ…。」
フー子は手を振ると、中野通りの方へ歩いて行った。


                            〈四九、心の儘に〉





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Last updated  2007年11月09日 10時56分17秒
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