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悠久の唄 ~うたの聴けるブログ~

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2005年11月15日
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   50. 東京観光専門学校合コン


 恵比寿で地下鉄日比谷線に乗り換え、六本木で降りた。
「アマンド」の前へ行くと、4人の男が煙草を吹かしながら立っていた。
「遅いぞ! 
幹事!」
「何やってんだよ!」
「失敬、失敬。
一寸ニューヨークの友人から急用の国際電話が入って、其の直ぐ後で、今度は証券会社から…。」
「馬鹿云ってんじゃねぇよ! 
…ところで、彼女達は何処に居るんだ? 
其れらしき姿が全然見当たらないが…。」
「ああ、待ち合わせはロア・ビルの前なんだ。」
「何だよ。じゃあ最初から、そっちって云えよ。
男4人で退屈させやがって…。」
「失敬、失敬。
一寸ニューヨークの…、痛ぇな…。」

 我々は狭い舗道を歩き始めた。
「お前、部屋に3人もの美女を囲ってるって、前々からの噂だが、美味しい物は、みんなで戴くべきだぜ。」
私と肩を並べて歩きながら、西沢は云った。
「遠慮無く、戴いて呉れ。」
「ああ、勿論そうする。
今夜の合コンを、よくぞ決心して呉れた…。」
夜を迎えた許の六本木の街は、未だ完全に眼を醒ましてはいなかったが、舗道は若い連中で混雑していた。

 世樹子は私の姿を眼にすると、集団から離れて此方へ近寄って来た。
「鉄兵君…。」
「よっ、待った?」
「いいえ。」
世樹子は笑顔を零した。
「とっても楽しみ…。」
「何が…?」
「何って、合コンよ。
今夜の。」
「ああ、そうだな…。
紹介しよう。
こいつ等が…。」
私は後ろを振り返ったが、其処にクラスの連中の姿は無かった。
私は仕方無く、前を指差して云った。
「あの、とんでも無く手の早い連中が、残念な事に俺のクラスの仲間だ…。」
「そう…。
視るからに、元気満々って感じの人達ね…。」
西沢と何か喋っていたヒロ子が、此方へ笑い掛けながら手を振った。

 幹事はローテーションで皆が務める事になっていたが、大体に於いて幹事の者は、其の合コンを心から楽しめない事が多かった。
其の夜の東京観光専門学校との合コンに於いても、幹事である私が、貧乏クジを引かされる事は仕方無いのであったが、其れ以前に、私はもう合コンに興味を失くしていた。
「鉄兵君と世樹子は隣に坐っちゃ駄目よ。
今夜は全員で楽しむんだから…。」
店に入るなり、ヒロ子は云った。
此の連中に限って、そんな心配は要らないがと思いながら、私は黙っていた。
私と世樹子は対角線上に坐り、私の右隣りには理恵が、左にはヒロ子が坐った。
ヒロ子の向う隣りには野口が居て、其の向うに又一人女が居た。
理恵の前には西沢が居て、女を一人挟んで、ヒロ子の前に柴山が坐っていた。
世樹子の隣の一番端には、森田と云う男が坐っていた。
此の森田と云う男は、合コン愛好会のメンバーでは無かったが、欠席した淳一の代わりに其の夜初めて、我々の合コンに参加したのだった。
語学の講義はクラス別に行われたが、教室の最前列辺りには、法曹界を目指す連中が坐っていた。
我々は当然いつも一番後ろの席に坐ったが、我々から一番遠い席に居る、司法試験は無理としても、上級公務員試験や国税専門官の試験等には本気で取り組むと思われる、其の集団の中の森田は一人であった。
我々が夥しい数の合コンをやっていると言う噂は、クラス中に広まっていたが、森田はいつも頻りに我々に話掛けて来た。
私と淳一と西沢の3人は全く無視していたが、野口と柴山は適当に相手をして遣っている様子だった。
「理恵ちゃんは、サーファーだったのかい?」
私は訊いた。
理恵は「オフ・ショア」のトレーナーを着ていた。
「別にそうじゃないけど、サーフィンは好きよ…。」
私は以前ディスコで世樹子やヒロ子と出逢った時から、彼女とも既に面識が有った。
「今夜は淳一が来れなくて、残念だったね。」
「淳一って…?」
「あれ? 
忘れちゃった? 
ほら、『マジック』で君がチークを踊った男さ。」
「ああ、あの人ね…。
よく覚えてるわよ…。」
彼女の表情から、私は素早く或る事を読み取った。
(淳一の野郎…、昨日俺にあんな事云いながら、自分も隠し事をしてやがったな…。)
私は、淳一は其の夜の合コンに来れなかったのでは無く、行きたくなかったのだと言う事を知った。
又、私は本当に忘れていたのであったが、彼は態と翌日の東観との合コンの話に触れなかったのだと言う事も理解した。
(あの野郎…。)
淳一と理恵の間に起こった詳しい出来事について、推し量るのは困難であったが、何れにしても、彼が彼女とスマートに終われなかったのは、確実であった。
私は淳一の名を口にしたのを、彼女に悪意と受け取られたに違いない事を、少し残念に思った。

 「ところで…、」
西沢が云った。
「どの娘が香織ちゃんで、どの娘が世樹子ちゃんとフー子ちゃんなんだい?」
私は銜え掛けた煙草を落とした。
ヒロ子が笑った。
「香織ちゃんとフー子ちゃんは、此の中に居ないのよ。」
世樹子が云った。
「でも、世樹子ちゃんは、此の娘よ。」
ヒロ子は斜め前の世樹子を指した。
「…?」
西沢は自分が拙い発言をしてしまったらしい事に気付き、控え目に訊いた。
「じゃあ…、中野ファミリーって言うのは…?」
「今夜の女の子達は、中野ファミリーとは関係無いんだよ。」
私は云った。
「え…、でも、世樹子ちゃんは中野ファミリーの人なんだろ…?」
柴山が云った。
「あら、私も中野ファミリーに入ってるわよ。」
ヒロ子が云った。
「香織ちゃんもフー子ちゃんも、よく知ってるわ。」
「…?」

 「香織ちゃんて言う人、私も顔だけ知ってるわよ…。」
理恵が意味有り気な微笑みを浮かべて、私に云った。
「ちゃんと伝えて置かなければ、不様を演じてしまうかも知れないって事だな。」
西沢が云った。
「私達は一応、あなた達の難しい関係について、うっすらと聴いて知ってるわよ。」
理恵が云った。
「否…、自分が不様を演じるのは別に構わないんだが、知らないで、相手を傷付けてしまう事が有るんだよ。」
私は云った。
理恵は真面目な顔になった。
「…そう。知らなかったの…。」
彼女は眼線を下げて云った。
私は彼女に何と云って遣れば良いか、思案に困った。
そして、こう云った。
「彼奴は良い奴なんだが、悪い奴だ…。」

 淳一が、理恵と世樹子が友人である為、私に気を使っている事は眼に視えていた。
そして西沢達は其の夜、私の為にハードな言動を控え、健全な合コンを形作って呉れた。
トイレで西沢と一緒になった時、私は彼に云った。
「俺の内輪が居るからって、遠慮する事無いぜ。」
「何云ってやがる。
どう視ても、あの中で世樹子ちゃんが一番可愛いじゃねぇか。
次に綺麗なのが、あのヒロ子って娘と来てる。」
「ヒロ子と俺は全然関係無いぜ。
世樹子でもヒロ子でも、構う事無いから口説いて呉れ。」
「ああ、構っちゃあ無いが、口説かれて呉れないのさ。
其れにしても森田の奴、頭来るよな。」
「奴は前から気に入らねぇよ。」
「そうだけど、今夜は特にな…。」
森田は世樹子の事が大変気に入ったらしく、何やかやと盛んに彼女に話掛けている様だった。
唯、世樹子は柴山と会話が弾んでいた。
柴山と話している最中に横から森田に喋り掛けられ、少し困った様子を見せながらも、世樹子は笑顔で森田に応対していた。

 「え? 
あ…、御免なさい…。
何だったかしら…?」
世樹子は済まなそうに森田に訊いた。
「何だよ、又聴いてなかったの? 
そんな先生の方ばっか向いてないで、もっとこっちへ寄って呉れよ。」
「ええ…。
でも私って太いから、窮屈な思いをさせては悪いわ。」
「此処は端っこなんだから、窮屈でなんかあるもんか。
其れに全体に横に広がれば、みんなが楽に出来る。」
「そうね…。
じゃあ、寄らせて貰うわね…。」
世樹子は心持ち身体を横へずらせた。
「全然変わってないじゃない。
もっと確り、こっちへ…。」
「森田…。」
西沢が云った。
「見苦しい真似は止めろ。
彼女が厭がってる事は歴然としてる。」
「いえ、私は別に…。」
世樹子は困った表情を浮かべた。
「俺達は合コンに於いて、紳士的態度をモットーとしてるんだ。」
西沢は云った。
私は「そうだったかな?」と思ったが、黙っていた。
「お前も俺達のコンパに参加した以上、其れに従って貰わなくちゃ困る。」
「彼女は別に厭がってなんか無いって、云ってるぜ。」
「お前、其れ本気で云ってるのか? 
頼むから、もっとスマートに行って呉れ。」
「スマートに行くってのは、どうやるんだ…?」
「何だ、知らないのか…? 
よし、俺が教えて遣ろう。」
西沢は自分のグラスを持って立ち上がると、森田の後ろへ歩いて行った。
「いいか、お前は今、先生と彼女を争ってる理由だが、1度に2人から口説かれたんでは、彼女だって困ってしまう。
先ず、主導権を持つ方を決める事だ。
決め方は、昔から『一気』と決まってるんだ。
お前と先生で『一気』をして、勝った方が主導権を握る。
いいか、彼女を此れ以上困らせてはいけない。
そして俺も付き合う…。」
西沢は自分のグラスにウィスキーを足して一杯にし、森田と柴山のグラスには新しく濃い水割が作られた。
「お前、コンパが始まってから全然呑んでない様子だが、まさか酒も呑めないのに、女を口説こうってんじゃないだろうな…。」
手拍子の中、3人はグラスの酒を喉の奥へ流し込み始めた。


                        〈五〇、東京観光専門学校合コン〉


【付録】東京観光専門学校合コン席順図

┌──┐┌──┐┌──┐┌──┐┌──┐
│森田││世樹子│柴山││女  ││西沢│
└──┘└──┘└──┘└──┘└──┘
┌────────────────┐
│                       │
│         TABLE         │
│                       │
└────────────────┘
┌──┐┌──┐┌──┐┌──┐┌──┐
│女  ││野口││ヒロ子 │鉄兵││理恵│
└──┘└──┘└──┘└──┘└──┘





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Last updated  2007年11月09日 10時41分00秒
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