CH186 女性を狙うのはやめなさい
2005年9月号日経レストラン”非常識”より 「先生、専門学校で講師してましたよね・・」訪問指導をしていれ、とあるオーナーが言った。なぜかと理由を問うと、「女性の視点で商品やメニューを考えたい」というのだ。 確かに、女性の社会進出で女性の視点が重要だと言われるようになった。でもその飲食店が本当に女性の採用で変わるのか? 会社に社風というものがある。社風とは長年培ってきた会社の文化だ。今のあなたの店が、今の状態であるのは、社長以下幹部社員から滲み出ている文化自体が原因である。女性社員がひとり入ったとしても文化は変わらない。女性向きの店は女性向きの店を作ることが得意な社風の会社や店にしかできない。 もの作りの市場拡大期は男性主導の時代だった。男性はスペックを重視する。だからQSCのようにスペックが見えやすいものが闊歩した。 しかし、飲食の市場も普及の時代は終了し、ストーリー性のある店でのそこしかない体験が求められるようになった。体験やシーンを売るにはトータルコーディネートが必要だ。トータルコーディネートはファッションのようなものだ。シャツやジャケットパンツ、これらのテイスト、色彩などが微妙にうまくかみ合って成立する。 トータルコーディネートは全体のバランスで成り立つ。すべてのパーツをうまく組み合わせることが欠かせない。パーツひとつ欠けてもトータルコーディネートは成立しない。ところがだ、市場性長期に男性の視点で作られた店はちょっとくらい女性がメニューを考えたからと言って、店のコーディネートは変わらない。いや、かえって、女性の考えた場違いのメニューがバランスを崩し、既存客すら店から遠ざかっていくだろう。 では、どうすべきなのか。それが、今回の教えだ。「おやじはおやじを相手にしなさい!」 はっきり言おう!おやじ社風の会社はきっぱり女性を捨てたほうが身のためだ。“おやじ文化”は、一朝一夕では変えられない。もし、それでも女性を狙うなら次のふたつしかない。ひとつは、おやじ全員の首を切って、全権を女性に委譲するくらいの覚悟をもつこと。まず、女性だけで壮絶な戦いを挑んでもらいいままで培った“おやじ文化”を変えればなんとかなるかもしれない。かなりの犠牲を覚悟しないといけない。もうひとつが“もて男”を雇うことだ。女性を喜ばせるのは、女性ではない。“もて男”こそがあなたの今の条件をアレンジし、女性の喜ぶツボを刺激するだろう。 女性の心を虜にするのは、ルビコンを渡って、ローマを変えたシーザーのような男しかいない。シーザーは、将軍として名高いが、ローマ中の女性を虜にしたことでも名高い。“もて男”こそ、あなたの店を救う。“女たらし“あなたの会社や店の歴史から消し去った男いないだろうか?あなたの会社の女性社員をたぶらかし、迷惑をかけた男が。あいつなら知っている女を喜ばせるすべを!でも、あなたの自身“もて男”でなく、あなたの会社に“もて男”がいないとしたら・・・まず、言えること、それは“もてないオーナー”は女性を相手にしないことだ。 おやじの良く知っているもの。それは、おやじ自身だ。背伸びする必要はない。あなたの一番知っているおやじの欲するものを思い出し、おやじの救世主になるんだ! おやじの願望はなんだろう!四十を過ぎた、しがないおやじ・・例えば、女性に相手にされる。例えば、威厳を取り戻せる。例えば、語り合える。例えば、料理に目覚める。 おやじを元気にすればいんだ。おやじは元気になりたいんだ。 東京都港区新橋界隈に、「豚娘(とんこ)」と言う店がある。立ち飲みの焼きトン屋であるこの店は、おやじのために作られた店だ。ふつう、焼鳥屋などのこの手の店はおやじが焼くものだ。しかし、この店には男性従業員はいない。焼き台の前からサービス、すべてが女性で運営させている。なぜか、おやじを楽しませるからだ。カウンター越しに、フレンドリーで庶民的な女性店員とさりげなくコミニケーションできる。今日も、元気を求めておやじで店はいっぱいだ。 今、増えている「山ちゃん」。この店もおやじにうってつけの店だ。決してセンスのいい店ではない。しかし、おやじが安心して飲める店なんだ。 今から数年前、新規客である女性を取り込むことが飲食ビジネスの成長につながったからだ。だから、女性が好む店を作った。市場普及の時代、おやじはありがたくないお客となった。おやじはおしゃれな店の天敵だったのだ。おやじがいると雰囲気が壊れる。綺麗な内装と調和しない。おしゃれな雰囲気に合わない。おやじは、外食へ取り込まれる女性客のためにありがたくない存在においやられた。女性が喜ぶ見た目のきれいなメニュー、きれいな内装で、いい雰囲気・・でもそれがおやじの社風にとっては大きな間違いだった。どんどんおやじの行きづらい店にしてしまったんだ。 でも、おやじが言っている。「これからまたおやじの自由と威厳を取り戻す時だ」と。おやじに目を向けなかった市場成長期、でも、今こそ、外食を愛してやまないおやじの店を、おやじであるあなたが作るんだ。おやじは待っている!おやじは死んでいない!おやじならできる。なぜなら、おやじが一番知っているから!大久保一彦のコラムは【送料無料】成功する小さな飲食店の始め方【送料無料】小さな飲食店が成功するための30の教え